この記事をまとめると
■エンジンを搭載していないEVにもボンネットを有するクルマが多い
新車が消えゆくのは仕方ないが……すでに所有している「ガソリン車」にすら乗れなくなる可能性!
■ボンネットを設けることで居住空間や荷室空間を確保しやすい
■クルマの形状はクルマとしての機能だけでなく事故被害低減などとも深く関係している
パッケージング流用で開発費を抑える狙いもある
電気自動車(EV)にはエンジンが搭載されないので、その造形は必ずしもこれまでのエンジン車の姿である必要はない。しかし、いまのところ市販されるEVの多くはボンネットフードが客室の前に残り、見慣れたクルマの姿を残している。
EVのボンネットフードを開けると、そこに見えるのは制御装置だ。前輪駆動(FWD)では、その下に駆動用モーターが配置されている。エンジンはないものの、従来からあるボンネットフード下にモーターや制御装置を配置すれば、客室や荷室の空間は従来通り確保されることになる。
エンジン車で培ってきた設計手法でEV化をはかれば、車両全体のパッケージングをゼロからはじめるより、EVを開発しやすいという今の事情があるだろう。それでも、EV専用車として開発された米国のテスラなどは、ボンネットフード下にも荷室を設け、余計な部品を置かないことで、ボンネットフードの低い独特な外観を生み出している。
また、バッテリー冷却は必要だが、エンジンほどの高熱を冷やすわけではないので、現行のテスラ各車は一見フロントグリルに見える部分にいわゆるラジエターグリルはなく、造形の陰影で独特の顔つきを生み出している。
技術の進化次第ではクルマの基本形が大きく変わる可能性もある
英国のジャガーi-PACEは、一見したところ従来と変わらぬ姿に思えるが、じつはエンジンがないのでボンネットフードはエンジン車に比べ短く、真横からの姿はEVならではだ。
近年では衝突安全確保の項目として、歩行者とクルマの衝突で人的被害を抑えるため、ボンネットフード下にある金属のエンジンで歩行者が被害を受けにくいようにしている。それによってグリルに厚みが増え、ボンネットフード位置が高くなる傾向だが、テスラはEVであるがゆえに、エンジン車と違った低いボンネットフードを実現している。
エンジン車でもボンネットフードが低い格好よさを求めるなら、歩行者と接触した際にボンネットフードが跳ね上がり、なかのエンジンとの間に余分の隙間を設ける対応策も以前からある。ただし、その装置のために原価が上がるので、装備されるのは上級車種が主体だ。ほかに、衝突時にはボンネットフード上にエアバッグを展開し、歩行者の頭部がフードはもとよりピラーなど硬い車体部分にぶつからないようにしたりするなどの対策も行われている。
単にクルマとしての機能や部品配置だけでなく、衝突安全や自分のクルマ以外の歩行者や二輪車などとの事故の被害低減も、クルマの造形と深く関係している。
そのうえで、東京オリンピック/パラリンピックで選手村での移動に使われたトヨタのe-Paletのように、これまでのクルマの概念を超えた造形は、自動運転の普及などと合わせてこの先創造されていくようになるのではないだろうか。EVであれば、円筒形のモーターは高さの制約が少なく、制御装置や充電装置などは、駆動用バッテリーと同様にあいた空間に配置しても、走行上の支障は起こりにくい。
EVが普及し、それに伴い自動運転技術が進歩して、ぶつからないクルマが作れるようになると、クルマの外観も従来からの基本形を脱して変わっていく可能性があるのではないか。これからが、デザイナーや車両企画者の腕の見せどころになる。
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みんなのコメント
フロントエンジンでなくても似たような形状をしているのだから、別にEV特有の話でもなかろう。
そもそもエンジン車でも商用などではボンネットのないキャブオーバーが当たり前にあることからして、ボンネットの存在は、電動かどうかとは直接関係ない話だ。
フロントノーズにあるのはエンジンだけですか?
タイヤとかサスペンションは何処にあるんですか?