ゼファーとは異なるスペシャルな存在感
映画を観ることの楽しみのひとつに、作中登場するクルマを見ることを挙げられる方は少なくないだろう。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアン、『マッドマックス』のインターセプターのような、ヒロイックな活躍をする車両を愛でる人はもちろん、時代再現のために用意されたビンテージカーを隅々までチェックする人、あるいはカーチェイスシーンの熱い走りに血をたぎらせる人など、その楽しみ方は色々である。
ガラスの破片も散乱!モノグラム製プラモ「1941年型コンチネンタル」を『ゴッドファーザー』仕様に・後編【モデルカーズ】
【画像40枚】穴だらけのコンチネンタル・クーペと、その制作工程を見る!
さてそこで、言わずと知れた名作、『ゴッドファーザー』である。公開は1972年であるが、作中の時代設定は1945年から1955年にかけての約11年間であり、そこには当時のアメリカ車がふんだんに使用されている。お金のかけられない邦画なら、1945年のシーンに登場するクルマも1955年のシーンに登場するクルマも特に違いはなく、また「取り敢えず古ければいいだろう」という塩梅に設定にそぐわない年式の車種が出てきてしまうケースがほとんどだが、そこはやはりハリウッド大作。概ね考証に間違いはなく、作中での時間の流れがクルマの変化からも感じられるというコダワリようなのだ。
シチリアのシーンに登場するアルファロメオ6C2500の堂々とした体躯なども見どころではあるが、この映画の中で特に注目に値するのは、1941年型リンカーン・コンチネンタル・クーペであろう。『ゴッドファーザー』三部作を通しての主人公はマイケル(アル・パチーノ)だが、このコンチネンタルは長兄ソニー(ジェームズ・カーン)の愛車として登場する。ちょっと血の気の多い暴れん坊、しかし地元では一種の英雄のように皆の羨望を集めるソニー。その相棒として、非常にナイスなチョイスであった。これはやはり、のちに『タッカー』を手掛けるフランシス・コッポラ監督ならではの選択と言えるだろう。
この初代コンチネンタルについて説明しておくと、そのデビューについては、ヘンリー・フォードの息子にして二代目社長であるエドセル・フォードが果たした功績がよく知られている。父とは違い美的センスに優れたエドセルは、自分のレジャー用自動車として、リンカーン・ゼファーをベースにした2ドア・コンバーチブルを造ることを思いつき、このアイデアを実現。彼の友人たちの反応から市販化を決定し……というのが、そのストーリーだ。
ゼファーと同一のシャシーに、独自の美しいボディを架装したコンチネンタル。リアエンドにはカバーで覆われたスペアタイヤが付くが、これこそが「コンチネンタル」、つまり大陸風という名の由来だ。アメリカ本土ではすでにスペアタイヤはトランク内などに収められており、背後に背負った形はヨーロッパ車のもの、という訳である。ボディは低くワイドで、サイドのステップも廃されたそのスペシャル感こそ、まさにギャングスタの愛車として相応しいではないか。
試作ボディを譲り受けて劇中車再現にトライ
という訳で、『ゴッドファーザー』に登場する1941年型コンチネンタルを模型で再現したのが、ここでお目にかけている作品である。すでにこのコーナーでもコンチネンタル・クーペの作例をご紹介している(下の「関連記事」参照)が、そこで述べた通り、モノグラムの1/24スケール・プラモデルにはコンバーチブル(カブリオレ)しか存在しないのが悩みの種だ。
実は、件のグレーのクーペ作例の制作時、その作者・周東氏はもうひとつボディを制作していた。このボディは形状に若干の難があり、新たに作り直したため宙に浮いてしまった謂わば試作品なのだが、ここでお目にかけている作例は、周東氏の協力によりこの試作ボディを利用させて頂いたものなのだ。
『ゴッドファーザー』のコンチネンタルを、後世まで語り継がれる存在としたのは、その末路である。ハイウェイの料金所で待ち伏せに遭い、数人のヒットマンにトミーガンでハチの巣にされてしまうのだ。そこで作例は、この弾痕だらけになった状態を模型で再現。ガラスも割れ、その破片が散乱した状態としてみた。その工作の詳細は、制作過程の写真に付したキャプション、そして後編の記事でじっくりお読みいただきたい。
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