国土交通省からの一斉の調査指示
国土交通省は、昨年のダイハツ工業の不正事案を踏まえ、自動車メーカー各社に型式指定申請において不正の有無を改めて精査するように、1月に指示を出した。
その結果、トヨタをはじめマツダ、ヤマハ発動機、本田技研工業、スズキにおいて不正行為が判明したと、国土交通省は2024年6月3日に発表した。
その発表を受け、トヨタは国土交通省の発表と同日に「型式指定申請における調査結果について」という記者会見を実施した。
記者会見の冒頭で、トヨタの豊田章男会長は「日野、ダイハツ、豊田自動織機に続き、グループ内で問題が発生しておりますことに対して、トヨタグループの責任者として、お客様、クルマファン、すべてのステークスホルダーの皆様に、心よりお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げた。
今回の不正が判明したのは、2014年以降、すでに生産を終了しているものも含め、7車種において国が定めた基準と異なる方法で試験を実施していたという。その中で、現在も生産している「カローラ・フィールダー」/「アクシオ」/「ヤリス・クロス」は、この日より出荷・販売を停止するという。
ただし、トヨタからは「対象となる車両は、すでに生産を終了しているものも含め、車内での徹底的な検証において法規に定められている性能に問題ないことを確認しております。従いまして、対象車両にお乗りのお客様はただちに使用をお控えいただく必要はありません」と説明している。
7車種、6事案における不正の内容とは
では、トヨタにおける7車種の型式指定申請の不正の内容は、どのようなものか? それが以下の6つになる。
1 「エアバッグをタイマー着火した開発試験データを認証申請に使用」
2 「規定と異なる衝撃角度」
3 「選定と左右逆の打点、左右片側試験を両側に代用」
4 「規定と異なる台車重量」
5 「規定と異なるブロックで試験」
6 「出力点の制御調整」
この6種類のうち、1と2、4の試験では、よりシビアな状況での開発試験におけるデータを使用した。3の試験は左右逆でも差が出ないことを確認していたという。
5は、古い試験方法を使用してしまった。そして最後の6は、狙った出力が出なかったため、コンピューターに細工をしてしまったという。他の5つに比べ、この最後の6だけは、恣意的な内容であり、トヨタとしても他と性質が異なると説明している。
内容的に、「性能が足りないのを誤魔化す」という不正ではなく、型式指定申請における手続き上のルール違反という内容と見ることができるだろう。そのため、早々にトヨタは「対象車両に乗っている人が使用を控える必要はない」と明言できたのだろう。
不正発覚に対してトヨタは、今後どうするのか?
今回の不正発覚に対して、トヨタ会長である豊田氏は、会見後半に行われた質疑応答で「正直、残念な気持ちと、ブルータスお前もか! という感じじゃないでしょうかね」と心中を説明した。
また、「再三、申し上げているように、トヨタは完璧な会社じゃないんですね。今回の、国交省のリーダーシップのもと調査に全面協力させていただく中で、トヨタからも問題が出てきたことは、ある面、私自身は、ありがたいことだと思っております。
間違いをしたときには一度立ち止まり、現地現物で何が起きたのか確認することで、“我々には、まだカイゼンの余地がある”という気付きを得ることができたと思っております」という。
今回の問題に対して、トヨタは「TPS自主研究会」を立ち上げ、認証業務の見直しを実施したという。そこでわかったのが、認証業務とは非常にリードタイムが長く、そして内容があいまいで属人的であることであった。
そこで、今後に向けて業務の標準化やプロセスの明確化を、本年中を目標に進めてゆくことにしたというのだ。
「ぜひともこれをグループ全体の共通の物差し、共通のカイゼン思想の風土づくりに結び付けるいいチャンスが到来したと思っておりますので。ぜひとも、もうちょっとお時間をちょうだいしたいと思っております」と豊田会長は述べる。
今回の騒動をきっかけに、業務を見直し、二度と不正の発生しない体制を作り上げてくれることを祈るばかりだ。
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みんなのコメント
社長時代に明確に「不正をやれ!」とは言ってなくても、
不正をしてまでも開発をやらざるを得ないプレッシャーを自ら与えていたんだろうに。