小排気量の本格スポーツMT車は個性いろいろ
四輪とは違い、バイクではまだまだMTが主役。
バイクのMT車は全排気量帯を網羅して設定されていますが、変化が目立っているのは125~150cc帯のMT車の増加です。現在は「小排気量車=コミューター」という図式は崩れ、本格的スポーツ車も投入されています。今回はそんな楽しい小排気量MT車を4車種ピックアップしました。
ホンダ・GROM(グロム)
原付二種としてみてもひときわコンパクトな車体に、クラッチ有りのMTという本格的なスポーツ車のパッケージで2013年に発売されたグロムは、見て可愛く、乗って楽しく、いじって面白いバイクとして注目を浴びました。そんなグロムも登場からはや10年が経とうとしています。息が長いということは、それだけ確かな人気に支えられているということですね。
現行型のグロムは2021年3月に発売。エンジン並びに外観が一新されましたが、大きなトピックはギヤの5速化ではないでしょうか。従来は4速MTで、レンジは十分だったものの、もの足りなさがあったのも事実。5速となった新型は、よりガチャガチャと変速の楽しみがありそうですね。大人のホビーというにふさわしい仕様です。
スズキ・ジクサー150
小さいマシンで大冒険に出るというのはいつの時代でもロマンを感じますね。それにうってつけなのがジクサー150。名前の通り154ccのエンジンを搭載したネイキッドで、堂々と高速道路を走ることができます。
そしてジクサーは隠れた冒険マシンです。軽量かつコンパクトな車体なので、狭い舗装林道もなんのその。さらに燃費性能が突出しており、以前に当編集部で実測した値では、なんと下道で65km/Lを記録(WMTCモードでは51.0km/L)。燃料タンクは12Lの容量があるため、600km以上を無給油で走れる計算になります。燃料を気にせずピュンピュン走れるとは、最高のスポーツマシンかもしれません。
アプリリア・SX125
オフロード車をベースに作られたオンロードスポーツ車がモタード。オフ車は250ccがベーシックでモタードもそれに倣いますが、250よりも小さく、しかも原付で実現したのがSX125です。型式上は原付ですが、そのパッケージは驚くほど洗練されています。
水冷のDOHC単気筒エンジンに始まり、前後輪のディスクブレーキ、アンチロールオーバー機能を持ったABSの採用などは、一部の装備が貧弱な250ccを黙らせる気合いの入れよう。特にエンジンは1万回転で15psを発揮します。原付とは思えないほどの高回転&ハイパワーエンジンです。車体構成にもチープさは一切なく、たとえばマフラーはノーマルとは思えないほどカスタム感に溢れています。
原二といえば日常のアシというイメージですが、SX125はその真逆。趣味とこだわり全開の本格モタード。日常の移動もスパイシーに味付けしてくれます。
ハスクバーナ・スヴァルトピレン125
無駄を削ぎ落として機能性をとことん磨いたものには機能美が生まれます。バイクは走る機能を突き詰めたもので、それ自体に機能美がありますが、とことん削ぎ落としたという点で見ればネイキッドこそが、バイクの機能美の最たるものかもしれません。そんな機能美溢れるネイキッド、しかも小排気量のものがスヴァルトピレン125です。
スヴァルトピレンは原付二種なので、性能云々を語るのはどんぐりの背比べになってしまうのですが、9500回転で15psを絞り出すエンジンは十分に高性能。所有感の観点から見ても他を圧倒します。まるでガレージでハンドメイドされたかのような無骨さと精巧さを併せ持っており、見ているだけでその世界観に引き込まれます。これで街なかに出かけたら目立つこと間違いなし。表参道に出かけても、隣にフェラーリが並んでも、引けをとりません。
バイクとの対話を楽しめるMTの小排気量車は、ただギヤが付いているというだけではなく、それぞれの世界観をきちんと持っていることがこの4台から読み取れると思います。その個性は所有感を満たすという効果があり、もしかしたら一部の無個性な大型バイクよりも愛着が湧く可能性があります。
たとえば、そうですね……お子さんとの散歩は、ペースこそ遅いものの、子供が見せるさまざまな表情などに心が洗われませんか? 小排気量のMT車を所有し、走ることは、きっとそれに似た感覚を味合わせてくれることでしょう。
レポート●ABT werke 写真●ホンダ/スズキ/ピアッジオグループジャパン(アプリリア)/ハスクバーナ・モーターサイクルズ・ジャパン
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