アウディにとってモータースポーツは切っても切れない関係にあるが、そこにはどんな意義があるのか? アウディスポーツ スペシャリストに中原英貴氏にインタビューを行った。(Motor Magazine2021年3月号より)
ラリーで培った「クワトロ」技術を市販車にフィードバック
編集部:中原さんは自らもレースに参戦されているとのことですが、どういう経緯があったのでしょうか?
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中原:最初はそんなにモータースポーツに興味があったわけではないのですが、2010年にモータースポーツの担当になってから自分でも走りたくなってしまって・・・カートで勉強してからレース参戦を始めました。いろいろなチームやドライバーと知り合って、現在の仕事にも役立っています。
編集部:アウディとモータースポーツの関係性は、歴史的に見てどのようなものがあるのでしょうか?
中原:アウディというブランド自体、モータースポーツとは切っても切れない関係があります。それは創業者のアウグスト・ホルヒも自らがモータースポーツに参戦していて、そこで得たノウハウをクルマづくりに生かしてきたという経緯です。
そんなホルヒが残した言葉に、「レースは技術の実験室」というものがありますが、限界域の走りで培ったテクニックやパフォーマンスを市販車に反映させていくということをずっと続けてきたのです。
たとえば、1980年代には、「クワトロ」という4WD技術をラリーフィールドで実際に使い、その技術を市販車にもフィードバックしていくことで、今ではアウディの大きな財産となっています。
編集部:そういう意味では、ルマン参戦も大きな意義があるのではないでしょうか?
中原:おっしゃるとおりで、ルマンでは「TDI」というほかがやっていないディーゼルの技術を投入して、そこで勝利することでディーゼルエンジンの価値と可能性を消費者にアピールすることができました。
さらに「eトロン」という電気とのハイブリッド技術もルマンで培われてきたもので、ご存じのように現在では電気自動車にも応用されています。また、ルマンではこれまで13勝という栄冠を勝ち取ってきましたが、これはまさにアウディブランドの信頼性や耐久性を証明するのに、大きな意義を持っていると思います。
モータースポーツでの勝利で自らの技術の信頼性を証明
編集部:フォーミュラEにも参戦していますね。
中原:フォーミュラEには2017年から参戦していますが、市販車のさらなる電動化を見据えて、ルマンの次のフェーズとして今後のアウディにとって大事な活動になっています。
ここでもシーズンが進むにつれて成績も上がり、シーズン3(2016~2017年)ではルーカス・ディグラッシがドライバーズチャンピオンを獲得しました。これも電気自動車「eトロン」の市販に向けて、アウディのテクノロジーを証明できたと思います。
こうして一貫してモータースポーツで初めての技術を磨いていき、それを市販車に導入していくというアウディの哲学ができあがっていったのだと思います。
編集部:モータースポーツは、参戦すること自体は難しくありませんが、勝利を収めるのは並大抵のことではないですよね。アウディはそこで必ず結果を残してきていますが、それはなぜでしょうか?
中原:ご存じのとおり、モータースポーツで勝つということは簡単ではありません。マシンの実力やドライバーのテクニックだけで勝てるものではなく。エンジニア、メカニック、そして戦略や資金力など、すべてが揃わないと勝利を収めることはできません。
つまりチームの高い総合力というものが必要になってくると思いますが、アウディという会社は勝つことをコミットメントするためには苦労することを惜しみません。そして自然と、熱い情熱を持った人材が集まってくるんですよね。
編集部:ところで20年12月には、ダカールラリーへの参戦が発表されましたが、これにはどのような背景があるのでしょうか?
中原:まだ詳細をお伝えすることはできないのですが、ダカールラリーには電動ドライブトレーン、高電圧バッテリー、高効率なエネルギーコンバーターを組み合わせたドライブコンセプトを採用したプロトタイプモデルで参戦します。
これもフォーミュラEの次のステップとして、量産車に採用する新技術の実験室としての参戦、と理解していただいて結構です。
モータースポーツでの活躍がブランド力を高める
編集部:次に日本でのモータースポーツ活動について教えていただきたいのですが、スーパーGTにR8のGT3カテゴリー車両で参戦されていますが、その意義はどこにあるのでしょうか?
中原:アウディのモータースポーツ活動は、フォーミュラやDTMのように本社のチームが関わって参戦する「ファクトリーレーシング」と、車両を提供して運営をチームに任せる「カスタマーレーシング」があるのですが、日本での活動はこのカスタマーレーシングの一環です。
スーパーGTでは2012年から「一ツ山レーシング」さんをサポートさせていただいています。具体的には現地のサーキットにパーツを満載したトラックを派遣し、なにかあってもすぐに対応できるようにしています。これは信頼あるチームへの本社のコミットメントなんです。
編集部:でも、モータースポーツは、やはりお金がかかるので、予算を取るのは大変じゃないですか?
中原:そうですね。普通の会社だとモータースポーツって理解されにくいですよね。景気が悪くなると一番先にコストカットの対象になってしまうことが多いと思います。でも、アウディはそうじゃないんです。モータースポーツをうまくマーケティングに使ってやるべきだという、本社の理解が大前提としてあるから、続けられているんだと思います。
編集部:国内ではそのほかにもスーパー耐久やTCRジャパンにRS3で参戦されていますよね。
中原:それもカスタマーレーシング活動の一環です。スーパーGTにR8で参戦するのはやはりハードルが高いですが、アウディのカッコいいクルマでレースに出たいという人は多くて、そうしたユーザーさんに対応しています。これでアウディスポーツのカスタマーレーシングの裾野が、日本だけでなく世界に広がっています。
編集部:ところでサブブランドとして「アウディスポーツ」を2016年に日本へ導入されましたが、どういう経緯があったのでしょうか?
中原:アウディスポーツというブランドは、モータースポーツのブランドという位置づけだったんですが、培ってきたブランドをビジネスにも展開しようということで導入しました。
編集部:アウディスポーツブランドの導入から4年以上が経過しましたが、これまでの反響などはいかがでしょうか?
中原:アウディを好きな人が全員モータースポーツを好きというわけではないのですが、アウディスポーツの認知が広がっていくにつれて、市販車ではRSモデルのイメージアップにつながっています。
とくにRSシリーズのエントリーモデルであるRS3はここ数年で人気が出てきて、2020年7月には2年ぶりに再び販売することへとつながりました。限定でしたが、すでにほぼ完売しています。
編集部:最後に、RSモデルはどんな人にオススメしたいですか?
中原:これまで言ってきたように、RSモデルはアウディのモータスポーツで培ってきた技術を惜しみなく投入しています。しかし、すべてがガチガチにハードな乗り心地なわけでなく、コンフォートモードで街中を快適に走れます。SUVのQ3やQ8にもRSモデルをラインナップしているので、幅広い人にRSのパフォーマンスを楽しんでいただきたいですね。(文・まとめ:Motor Magazine編集部 加藤英昭/写真:井上雅行)
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みんなのコメント
レースの世界でトヨタはVWグループに完敗してる。
だからアンチが多い。
嘘並べて工作活動しないと精神状態を保てない病人は
ここの常連さんw
親会社のVWはそう思ってないようですけども。