前回の第10回からこの11回までの間に起きたわが旧シエラの大きな出来事といえば、やはり無資格者の完成検査によるリコール騒動だろう。この件についてはまた別の機会にお話しするつもり。今回は、梅雨時期を前にしたワイパーについてのおはなし……。TEXT/PHOTO●山口尚志(HISASHI Yamaguchi)
旧型シエラ納車からはや1年。
えっ、スズキ新型ジムニーがキャンピングカーに!? 車中泊できたらもう無敵
納車は昨年2018年3月上旬だったが、登録は2月だったので2月上旬にスズキ販社から1年点検のお知らせ電話がきた。
ただし今回の点検、こちらにもいろいろな事情が生じて先延ばしにしており、結局点検日を3月29日に定めてその日を待つことにしたのだが、同時にある部品を注文して29日に手に入るようにしてもらった。
ある部品とは、他のスズキ車にあるカタログ名「時間調整付フロント間欠ワイパー(ミスト付)」のスイッチレバーである。
旧型ジムニーおよび旧型シエラの間欠ワイパーは間欠時間固定式だ。
この部分、せめて新型シエラだけは時間調整機能が与えられるかと思っていたが、新型軽ジムニーとともに固定間欠型を継承している。
ティーダのそれも7段階の時間調整式で、雨量に応じて間欠時間の長短を便利に使っていたが、私の旧シエラにはそれがない。
なければないでかまわないと思っていたのだが、やはりあったほうが便利かなということで、ソリオ用の時間調整機能付ワイパースイッチレバーを購入したしだいだ。
←それがこれである。
■えらいぞ、みんカラ「整備手帳」!
ここでいつも参考にするのが、carviewが展開している「みんカラ」の中の「整備手帳」。
ジムニーの項で検索してみたらまあ交換している人がぞろっぺでいるわいるわ。
というよりは、交換している人を見かけて「いずれ気が向いたら自分も」と思っていたわけだ。
余談だが、インターネット上にのっかっている一般の人の意見は匿名がほとんどで、仮面をかぶっているのをいいことに、無責任、中傷誹謗、いいたい放題なことを平気でいってのけるヤツが多い。
中にはまじめで耳や目を傾けるべき意見もあるが、それでもたいていは匿名だ。
だから私はインターネット上に出てくる匿名モノは、たとえ見たとしてもその場限りにすることにしているのだが、その意思はこの「整備手帳」を見るときだけは吹っ飛んでいる。
初めて見たのは2008年にティーダを買うときだったが、ここに自分の作業を見せている人たちの技量のすばらしいこと!
メーター照明の色が気に食わないと、外したメーターから針、文字盤を取り除いて基盤を露出し、半田ごてでLEDチップを好みの色に変えているひとを見たときは腰を抜かした。
そればかりか、どれほどの設備を持っているのか、自分で足まわりを交換するひとがいれば、頭で描いた回路図を紙と鉛筆で描き、実際に組み上げて車の電装品を思うとおりに作動させるひとも・・・
やる気と根気と設備とウデ、そして財力がありさえすれば、個人レベルでは不可能と思われることもできるのだということを彼らは教えてくれた。
私なんぞ不器用、注意力散漫、気もそぞろ、落ち着きがない、気が短い、そしてB型の6悪が揃っているから、とても頭が上がらない。
ただただ「へへえーっ!」と土下座するばかりである。
この「整備手帳」で自分の腕じまんをしている人の数がどれほどなのか、知る由もないが、ほんと、みんなすごいよ!
特に電気回路図を組める人、ひたすら尊敬しています。
■ワイパースイッチ交換、その作業方法(1) 事前作業
話をワイパーに戻して。
さてこいつをどう取り替えるか。
みなさんの同じ作業を参考にしたら、不器用な私でも、このページのための写真撮影を入れても、初めてなのにものの15分でできた。
外さなければならないパーツの構造を理解おけば、10分ほどでできるだろう。
まず皮切りに計器盤のハンドル下のカバーを開いておく。
次ににメーター内側のカバーをはずす。バイザー側にある2本のビスで留まっているだけなので、ビスを抜いてカバーを手前に引けば、ゴソッとはずれる。
メーターフードとハンドルの間のスペースが狭いので(チルトハンドルもないのでスペースを広げることもできない)、メーターカバーを取り去るのはちょいとした知恵の輪だ。初めてのひとはここだけ戸惑うかもしれない。
次に、どら焼きかもなかのように上下構成になっているハンドル向こうのコラムカバーをはずす。まず下側から外さなければならない。
下側で締まっている1本のビスをはずしたら、適当に叩いたり凹凸部に手をかけたりをして爪をはずして取っ払う。
上のコラムカバーは、内部で2本のねじで留められている。それぞれのねじをハンドルを右に左に90度まわしてからねじを抜き、カバーを外すとハンドルコラム部が丸出しになり、ワイパーレバー根元も露出する。
左右レバー部の根元はこのようになっている。上写真が右側でした写真が左側。
真下から。
長くなりましたので、レバー本体の交換は次のページで。
■ワイパースイッチ交換、その作業方法 (2)レバー本体交換
続きです。
ワイパーレバー本体の外しにかかる。一見、ゴチャついているのだが、外しのための作業はふたアクションだけ。車両がまだ新しいせいか、まだちっとも固くなっていない下側のコネクターを外す。
四角い穴ぼこで固定されている爪をマイナスドライバーで押し込んでレバー本体を左側に引っ張ると……。
スッとかんたんに取れてしまう。
注文したレバーを取り付ける。
「カチン!」と音がするまで差し込み、下のコネクターをはめる。事前に外したどら焼き型コラムやメーター内側のカバーを戻し、作業完了。
というわけで、ビフォアアフター。
■交換部品の新旧、そしてスズキ・日産を比べてみる
順序がくるっているが、新車装着品はずしたときに、取付前の新規注文品との比較写真を撮っておいたのでお見せしよう(誰が興味持つんだ、こんなもん)。
上が車両についていたスタンダード品で、固定間欠用のワイパーレバースイッチ。
下が今回購入した、時間調整付のスイッチ。
「INT TIME」と記されたリング状のノブで間欠時間を調節する。
その数、5段階。
ティーダ、というよりは日産車は7段階だった。
あらゆる方向から撮ったものもお見せしよう。
そうそう見られるものじゃないんじゃないかな。
内部がどのようになっているのかは開かなかったのでわからないが、筐体の形が一部異なっており、新車標準品など、一部ふたが半透明になっている。
ただし、接続時に車両側に接触する、ツメなどの形は同じだ。
せめてここだけは同じでないと、きちんと取りつかないからだ。
レバーを正位置から見たときの筐体下にある穴付きの筒は、さきにお見せした、上側ハンドルコラムカバーの取付穴。つまり上側コラムはレバースイッチ筐体を介して取り付けられていたわけだ。
これは右側も同じで、ウインカーレバーの筐体にある穴がねじ穴で固定される。
また、下側コネクターのピンの数が新車標準品(時間調整機能なし)のほうがひとつ多い。
ただ、メーカー間ちがいについてついでにいうと、時間調整リングの向きがスズキ車と日産車とでは逆で、間隔を長くしたい場合は、日産車はリングを下にまわすが、スズキ車では上向きにまわさなければならない。
慣れの問題ではあるが、見た目にも操作感からしても、私の性にあっているのは日産車のタイプのほうだ。
どうせここまできたなら、マニアックだが、スズキ車と日産車(ここでは前車ティーダ)とでワイパー機能の比較をしてみよう。
かなり細かいところまで話をするぞ~。
OFFからレバーを下に向けて順次、INT(間欠)、LO(低速)、HI(高速)、上向き保持でMIST(保持している間だけワイパー作動)、レバー手前引きでワイパー連動ウォッシャーなのはスズキ、日産とも共通。
異なるのはレバー先端のリヤワイパースイッチで、先端を上にまわしてリヤワイパーを作動させるのは同じまま、日産車はINTとON(フロントのLOに相当する速度での連続作動)だが、スズキでは普通車の半数(SX4クロス、エスクード、スイフト、同ハイブリッド、同スポーツ、バレーノ)のみがINTとONで、前記車以外の普通車と軽一連はINTのないただのLOのみ。
日産車はレバーを向こうに押しやることでワイパー連動のウォッシャー噴出、スズキはノブまわしの上端下端がウォッシャー噴出で、OFFから上にまわしてワイパー連動のないウォッシャー液噴霧、ONのときにさらに下にまわすとウォッシャーが噴霧する。
ただし、普通車INT付車は、OFFから下のウォッシャー作動時にワイパーも連動する(バレーノだけは説明書を見てもよくわからなかった)。
スズキの取扱説明書で奇妙なのは、「……ONの上にあるウォッシャーマークまでまわしてあわせるとウォッシャー液が噴射し、同時にリヤワイパーも連動して動きます。ツマミから手を離すとONにもどります。」とある点だ。
ツマミをウォッシャーマークにあわせた時点でいったんONを通過しているのだからこの表記はおかしいだろ。
リヤワイパー作動中にウォッシャー液噴霧が加わるというべきだ。
……ワイパーごときで話が長くなりましてすみません。
■またバカ実験・測ってわかった、実際の間欠時間
最後にひとつ実験です。
ワイパーを時間調節付きに代え、いままでの固定間欠式の間隔が時間調整付のどのポジションに相当するのだろうかという検証を、動く画を分析して実施してみた。
前回の、給油量と燃料計の関連性を検証する動画につづく、「だれかがやらなきゃわからないバカ実験」の第2弾である。
動画で時間を図って表にまとめたら、実に意外で、かつつまらない結果が出てきたのであまりお見せしたくないがお見せしよう。
まず固定間欠式の動画から。
次にスイッチ交換後の時間調整式の動画だ。
この動画で得られた結果をまとめたのが次のふたつの表だ。
ワイパー5~6往復ぶん計測しようとしたが、間隔時間が短くなるほうについては、参考までに多めに測っておいた。
ただし、動画内ではカットしてある。
【意外だった点その1】
固定間欠式であれ、時間調整式の5つのどのポジションであれ、間欠時間が一定ではなく、同じポジション内でも結構な時間の開きがあること(表1)。
よって、固定式の間欠時間が、時間調整式の「2」に属するにしても、両者の間隔が必ずしも一致していない。
ふだんの作動の様子から見ても、てっきり、間欠時間などきっかり一定しているものと思い込んでいたので実に意外だった。
思い込みとは恐ろしい。
逆に、いかに自分の時間的感覚がアテにならないかとうことでもある。
【意外だった点その2】
表2の結果から、時間の開きをグラフにしたら「4」と「5」の開きで重複している部分があり、ときには5の場合よりも4位置のほうが間隔が長いこともありうるということ(表2のピンクの部分。)。
終わります!
(第12回に続く)
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