4月9日~11日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で旧車イベントの「オートモビルカウンシル2021」がおこなわれた。そこで気になったクルマを武田公実がピックアップする。今回は、2200万円で販売されていた日産「スカイラインGT-R(R32型)」のお話。
近年、海外から注目を集めているGT-R
2021年で6回目を迎えた「オートモビルカウンシル」は、毎年2月にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「ノスタルジック2デイズ」と並び、日本を代表するクラシックカー・トレードショーである。
ノスタルジック2デイズが国産旧車およびヤングタイマーを中心とするブース展開をおこなっているのに対して、オートモビルカウンシルはヨーロッパ車が展示車両の大部分を占めている。
ところが今回のオートモビルカウンシルでは、奇跡のような国産ヤングタイマーの出品が話題になった。新車として生産されてから30余年を経ながら、重ねた走行距離はわずか1800km! そして販売価格は2200万円という、驚きの日産スカイラインR32型GT-Rである。
第1世代スカイラインGT-Rの最終型「ケンメリ」ことKPGC110型GT-Rが生産を終えて以来、16年の時を経て、1989年に登場したR32型スカイラインGT-Rは、2.6リッター直列6気筒DOHC24バルブガソリンツインターボの「RB26DETT」エンジンを搭載し、電子制御トルクスプリット式4WDシステム「アテーサE-TS」で4輪を駆動。後輪操舵システムのさきがけである「スーパーHICAS」も搭載したハイテク・スポーツカーだった。
当時「グループA」時代にあったツーリング・カー・レースの覇権獲得を最大の目的として誕生したR32型GT-Rは、その役割を果たすとともに、最初期の全日本GT選手権でも活躍した。
GT-Rは以降、1995年に代替わりしたR33型スカイラインGT-R、1999年に登場したR34型スカイラインGT-Rとともに、基本的には日本国内マーケット専売モデルだった。
ところが、製造から25年経過した車両はFMVSS(アメリカにおける保安基準)の制限を受けることなく、アメリカに中古車として輸入し、販売/登録が可能になるという取り決め、いわゆる“25年ルール”のくびきが外された近年のアメリカから、GT-Rをとりまく状況は予想外の変化を遂げてきている。
もともとは日本製車両&日本製パーツを使ったカスタマイズを指す、アメリカでの呼び名から、今ではジャパニーズ・クラシックカーそのものの総称となっている「JDM(Japanese Domestic Market)」愛好家のあいだで、R32GT-Rは、現行のR35型ニッサンGT-Rにも継承された「Godzilla(ゴジラ)」のニックネームとともに、まさしくカリスマ的モデルとして崇められているのだ。
その人気は国際マーケットにおける相場価格にも直結しており、R34型GT-Rの限定車ならば、2000万~3000万円の価格が常態化しつつあるようだ。
ただしこの価格帯は、生産台数が1万1344台と少ないR34型GT-Rの、しかも限定モデルに限ってのことらしく、もっとも生産台数が多い(4万3661台)のR32型GT-Rや、市場では少々不人気とされる生産台数1万6435台のR33型GT-Rには、よほど特別な事情がない限りは当てはまらないようだ。
しかし、三重県の老舗国産旧車スペシャリスト「ヴィンテージ宮田自動車」が出展したR32型GT-Rは、近年のクラシックカー/コレクターズ市場にあらわれる第2世代スカイラインGT-Rのなかでも、特別な1台だったのである。
まるで新車
国産旧車スペシャリストの老舗でありながら、欧州車中心のオートモビルカウンシルにおいても常連で知られるヴィンテージ宮田自動車が、1億円のトヨタ「2000GT」の傍らに並べたのは、初期のイメージカラーである「KH2 ガングレーメタリック」にペイントされたR32型GT-Rだった。
1995年登録とのことであるが、後継のR33型GT-Rがすでにその年の1月1日にリリースされているから、R32型としては最終型にあたる1台といえよう。したがって車齢は26年に及ぶが、オドメーター(距離計)にはわずか“1800km”という驚異的な数字が刻まれる。
その超ローマイレージ(低走行)を裏付けるように、コンディションは事実上の新車で、カスタマイズの形跡のないフルオリジナル。ボディを見まわしてもキズはもちろん、ながらく車庫保管されていたクルマにはありがちな、クリアの剥離・くすみなども皆無。ショー出品に備えて仕上げたであろうことを加味しても、素晴らしいというほかない。
また、純正の鍛造アロイホイールや新車時の純正装着タイヤ、ブリヂストン・ポテンザ RE71も新品そのままの状態。ステアリング・ホイールの革の縮みや擦れもなく、擦れやすいジャージー素材のインテリアまで、新車当時のコンディションをほぼ保っている。
ドアを開くと、かつて日産のS13型「シルビアQ’s」を愛車としていた筆者にとっては懐かしい“あのころの日産車の匂い”までプンプンと漂ってきたのだ。
“極上”の理由
ヴィンテージ宮田自動車の代表で、東海三県では人気ラジオDJとしても知られる宮田篤さんからお話を聞いてみたところ、このR32型GT-Rの初代オーナーは購入直後に体調を崩し、治癒後に乗るために長らく所蔵していたとのこと。
ところが残念なことに、その夢はかなわず。その後、別のオーナーが引き継いで所有していたものをヴィンテージ宮田自動車で預かり、現在はちゃんと走るためのメンテナンスを行っているとのことだった。
宮田さんは「できれば国内にとどまって、これからこのクルマを楽しみつつ新しい歴史を紡いでほしい」と、述べる。ただし「乗るときには、タイヤは交換したほうがイイですね(笑)」と、コメントしてくれた。
ちなみに2019年1月、アメリカで開催されたボナムズ「スコッツデイル・オークション」に出品されたR32型GT-Rは、走行距離約2万4000kmというローマイレージ。しかも、完全ノーマルコンディションで、リアバンパーには「日産プリンス多摩」のディーラーステッカーさえ確認できる極上車だったにもかかわらず、落札価格は7万8400ドル(当時の為替レートで約860万円)に終わっている。
でも、今回出品されたR32型GT-Rは、ボナムズ・オークション出品車さえ、“フツー”に見えてしまうほどの1品。まるで時空を超えて現代に現れた、タイムカプセルともいえるのである。
文と写真・武田公実
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みんなのコメント
すると初期型の未対策部分もそのままという事になるな・・・
コレとインジェクターは購入と同時に対策済みに予め交換を推奨する。
両方、遅かれ早かれ今ではリコール該当確実で液漏れする。特にインジェクターからは
ガソリンなんで火災の危険性もある。
欲しい人は買えばいいが、踊らされるなよ、と言っておきたい。