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4気筒エンジン以上に車体が凄い!? ニンジャZX-25Rに見る市販車レース常勝マシン ニンジャZX-10Rの設計思想

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4気筒エンジン以上に車体が凄い!? ニンジャZX-25Rに見る市販車レース常勝マシン ニンジャZX-10Rの設計思想

250cc4気筒エンジンにばかり注目が集まっているが、250クラストップレベルと思えるハンドリング、抜群の安定性を備えたニンジャZX-25Rは、車体構造も「本気のスーパースポーツ」である。
なぜなら、カワサキのフラッグシップスーパースポーツであり、最高峰の市販車レース・スーパーバイク世界選手権で勝利し続けているニンジャZX-10Rの設計思想が流れているのだ。

そして、それは多くの人が乗れば体感できることでもある。

【画像ギャラリー15点】1000ccスーパースポーツZX-10Rと、250cc4気筒ZX-25Rの車体構造を写真で比較

MotoGP ZX-RRで培われ、ZX-10Rに生かされた車体構造を継承

最初にそのハンドリングの良さに気がついたのは、高速道路のインターチェンジの分岐路にあるロータリー状のコーナーだった。少しだけ高めのスピードで進入した事もあってわずかに身構えたのだが、ニンジャZX-25Rは何もせずとも、実に軽やかに、そして少しシャープにバンキングしたのだ。「ほう。これがそうなのか」と感心した。

何がそうなのかと言うと、カワサキの明石工場で行われたニンジャZX-25Rメディア向け発表会に出席した筆者は、車体のコンセプトや方向性に関して質問したのだが、その時に車体設計担当のエンジニアは「車体はただ低重心にしたのではなく、重心位置を少し上に持っていき、そこを(車体の前後を貫く方向にある)ロール軸にしたマシンの動きを意識した」と回答したのである。これを聞いて、非常に驚いた。

実はその同日、ニンジャZX-25Rの発表会が行われる直前に、筆者は川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーの技術本部長の話をうかがっていた。
内容は2002~2009年までのMotoGPレーサー ZX-RRの車体に関するもので、初期の車体設計を担当していたのはまさにその人だったのだ。

そして、ZX-RRで当時理想とした車体の方向性は「やじろべえのようにタイヤの接地面を支点にして左右に動くのではなく、それよりも高い位置にあるマシンの重心位置をロール軸にした動きを意識した」というものだった。

重心位置を変化させた、2011年モデル以降のニンジャZX-10R

概念としては、ロール軸=重心位置を中心にボディが左右に動く、つまりステアリングヘッドは内側に入り、前輪は外側へ出ていくという、ちょうど飛行機が胴体を中心に羽を振るような動きである。
言ってみれば、これはZX-RRの開発で得られた知見であり、実際に2011年モデル以降のニンジャZX-10Rからは、このような考えに基づいた重心位置の変更が行われており、昨年2019年までのスーパーバイク世界選手権5連覇の要因にもなっているはずだ。
(実のところ、近年のニンジャZX-10Rのハンドリングに対する評価は高く、特に扱いやすさに関しては定評がある)

そして、筆者はそのカワサキのエンジニア達が口をそろえた、重心位置をロール軸にするハンドリングをニンジャZX-25Rに乗り実感し、納得したという訳である。前口上が長くなったが、ニンジャZX-25Rのハンドリングは忖度なしに素晴らしいと思う。
その理由には、ここまで述べきたロール軸の話だけではなく、鋼管製トレリスフレームの出来の良さも加えるべきだろう。

鋼管製トレリスフレームといえば、このところKTMのお家芸のようになっているが、やはり鋼管の持つしなりや弾性は人間の感覚に合っているだろうし、鋼管トラス構造のフレームワークではその構造上、剛性バランスも最適化しやすい。
もちろん、そこにはコスト抑制という理由もあるだろうが、その合理性はそのままコストパフォーマンスの高さに結びついている。

とにかくあらゆる場面で、ニンジャZX-25Rのハンドリングは軽快かつ信頼感がある。
その軽さはと言うと、そこそこのスピードで高速スラロームを行うと、なんの引っ掛かりもなくヒョイヒョイと動くのだ。
(ライダーのレベルによってはあまりのスムーズさ、俊敏さに不安感を覚えるかもしれない)
それも頭から倒れ込んでいくような感覚もそこはかとなく感じさせるのだが、これが高荷重な走りになるとしっとりとした落ち着きに変わってくる。

4気筒エンジンによる車重はあるが、軽快かつニュートラルなハンドリングを見せるZX-25R

山間部のワインディングはこのバイクの真骨頂だろう。
コーナーへのアプローチから脱出まで、実に軽快でニュートラル。この性格はライダーのレベルや速度レンジに影響される事もなく、ナチュラルにコーナーをトレースしていく。しかも、安定感はかなりのもので、左右の激しい切り返し、荒れた路面、不愉快なコーナーの段差舗装でも車体は予想以上に落ち着いており、普段はそこで感じる不安感や恐怖が希薄なのである。

このあたり、ハンドリングの軽快さは例の重心位置によるもの、フレキシブルでありながら安定した性格はトレリスフレームの剛性バランスによるもの、と理解すれば良いのだろう。
4気筒エンジンを搭載するせいもあってか、ニンジャZX-25Rの車重は184kg(試乗した「SE」グレードの場合)と250クラスのスーパースポーツ系の中では決して軽くはない。

となると、この運動性の妙はやはり車体の設定にあると見るべきで、筆者個人の感覚では滑らかに調教された4気筒エンジンよりも、この車体に大きな価値観を感じるのである。

フロントサスペンションは、左右で伸圧を別々に受け持っているが、言われなければ気づかないし、低速では少々コツコツと硬めに感じるリヤサスペンションも、ペースが上がってくるとちょうど良い腰のあるフィーリングになる。
フロントブレーキはシングルディスクだが、その制動力は十分だ。SEに標準装備されるKQS(クイックシフター)も悪くない。さすがに1万rpmを超える高回転域では入りがやや渋くなるが、シフトの瞬間に心持ちスロットルを戻してやれば、スムーズに作動する。

そういうわけで、ニンジャZX-25Rはエンジン、車体の双方に大きな特徴を持ったモデルであると言って良いだろう。いずれもその特徴を形作るのは、カワサキにおけるここ10数年位の技術的蓄積である。
その、「どこの部分」に価値を見出すか。ともすれば世間が250cc4気筒にフォーカスしてしまうのも分からないわけではないが、そういった表層だけではないところに、カワサキのバイク作りの哲学があるのではないだろうか。

カワサキ ニンジャZX-25R 主要諸元

【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク50.0mm×31.8mm 圧縮比:11.5 総排気量249cc 最高出力33kW<45ps>(ラムエア加圧時46ps)/1万5500rpm 最大トルク21Nm<2.1kgm>/1万3000rpm 変速機:6段リターン
【寸法・重量】全長:1980 全幅:750 全高:1110 ホイールベース:1380 シート高785(各mm) 車両重量:183kg(スペシャルエディションは184kg) タイヤサイズ:F110/70R17 R150/60R17 燃料タンク容量:15L
【価格】スタンダード:82万5000円 スペシャルエディション:91万3000円

試乗レポート●関谷守正 写真●山内潤也/カワサキ 編集●上野茂岐

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