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ジャガーEタイプを現代技術で再生 イーグル・ナンバー1 精神と構造は変えず 後編

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ジャガーEタイプを現代技術で再生 イーグル・ナンバー1 精神と構造は変えず 後編

新しい技術を巧妙に古い技術へブレンド

イーグル社のジャガーEタイプ再生プロセスを観察すると、元の基本構造が維持されているとわかる。だが美しいボディは、パネルのシル部分が加工されている。ジャッキポイントの間には、追加の溶接が施されている。

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「強固で過剰設計かもしれません。でも、製造時の許容誤差は大きいまま。当時のジャガーが、どうやって短時間に多くのEタイプを製造していたのか、理解できないほどです」。と話すのは、イーグル社のポール・ブレース氏。

腐食や変形した部分は切除し、新しい部材へ置換。完成したボディは一度仮組みし、トリムなどのフィッティングが確認される。その後、ボディシェル全体へ腐食保護が施され、塗装される。

シートや内装類は、イーグル社の内製。オリジナルのヒーターボックスを利用した、独自のエアコンユニットも製造している。

ワイヤーハーネスは新調され、追加の電装系にも対応。ダッシュボードには、当時のままのスイッチ類が残される。イーグルの車内の眺めは、基本的にオリジナルに正しい。

新しい技術が、巧妙に古い技術へブレンドしてある。工房ではコンピューター制御の成形マシンの横で、年代物の旋盤が現役で動いている。

サスペンションの変更はシンプルながら、確かな改良が施されている。Eタイプは、新車時から独立懸架式だったから、基本的な構造は変わらない。

別のクルマのように感じさせる操縦性は、アームやリンク類の長さや動作角など、ジオメトリの調整で生まれているという。新しいダンパーとタイヤも活きてくる。

大きく改良されたリアサスとステアリング

イーグル社の一員でもあるジョン・マクラーレン氏のイーグル・ナンバー1には、フェンダーとタイヤとの位置をタイトにするため、6.5Jの15インチ・ホイールが組まれている。ピレリP7のサイズは、225/60だ。

実は当初、別のボディシェルをベースに彼のEタイプは作られていた。ところがタイヤが外側へオフセットされたことで、手作りのホイールアーチのラインが左右で異なることが強調されてしまった。

そこで大胆にも、ジョンが保有していた別のボディシェルを利用し、再制作したという。その結果、HUF 42Eのナンバーを付けたナンバー1が完成した。

オリジナルと大きく異る部分が、リアサスペンション。標準のプレス製アームではなく、パイプを組んだリンクが充てがわれている。またラバーブッシュではなく、ピロボールで支持されている。

ウイッシュボーンの動きを完全に制御でき、ボディロール時にパッシブ・リアステアを与えることを可能としている。コーナリングが鋭いのは、この影響だ。ネガティブキャンバーも与えられている。

フロント側も、上部のウイッシュボーンを再設計。ロワー側の位置も調整され、こちらもネガティブキャンバーが与えられた。キャスター角も変えられる。

路面の凹凸が操舵に影響を与えるバンプステアを抑えるため、ステアリングラックの取り付け剛性を高め、位置を変更。独自のアームが可能な限り水平に動き、俊敏さを高めている。ノーマルでは、停まった状態でステアリングを回すと、ラックが動くという。

車重は100kg前後は軽量に仕上がる

ナンバー1のステアリングは、現在のイーグルよりシャープらしい。「多くのオーナーは、もう少しゆっくりの反応を好みます。でも、お好みのクイックさを与えられます」。とブレースが説明する。

ブレーキはAPレーシング社製の4ポッドキャリパーと、巨大なベンチレーテッド・ドリルドディスクが選ばれている。「サーキットを熱心に走らない限り、ここまで大径の必要はないでしょう。1サイズ小さい方が乗りやすいはず」

ブレースが続ける。「お客様毎にニーズは異なります。最高で最大のものを望む方もいます。ですがクルマの目的を聞いて、ベストと思えるものを提案します。最も人気のあるスペックは、GTとスポーツですね」

カーボン製のエアスクープが装備されているが、リアブレーキの方が熱しやすいためだ。多くの改良が施されているものの、車重は増えていないという。

「通常、100kg前後は軽く仕上がります。マグネシウム製のサンプにデフ、ハブ、アルミニウム製のエンジンブロックなど、できることは少なくありません。バッテリーも小型のリチウムイオンにすれば、10kg軽くなるんです」

現在、イーグル社では約20名のスタッフが働いている。ここまで細心の注意が払われているということは、それなりの時間と費用を必要とする。同社の創業者、ヘンリー・ピアマン氏によれば、1台のイーグルを仕上げるのに4000時間以上が必要らしい。

一生に一度の買い物としての価値

「余計な心配や不安を取り除いた、イーグルの再生モデルを固定価格で提供する。われわれの仕事でユニークなポイントといえます」。とピアマン。

「一度クルマを分解し、見積もりをとったら驚く金額だった、ということもなくありません。1つの基準、1つの価格。イーグルEタイプなら、そんな落胆も不要です」

「イーグル・クラシックの場合、現在の英国価格は42万ポンド(約6510万円)から。ベースとなる、Eタイプの車両代も含まれます。通常、制作には約4500時間、18か月から24か月は必要です」

「自社開発したオプションのご提案もします。クルマはオーダー内容によって異なるので、最終的な価格はまちまち。イーグルGTの場合は、さらに2万500ポンド(約318万円)が追加されます。必要な税金も別です」

「最近、ジョンと同じ仕様に当たる、中古のイーグルを2台販売しましたが、価格は43万5000ポンド(約6742万円)と、54万ポンド(約8370万円)でした。ジョンがナンバー1を売ることはないと思いますが」

ちなみに、スパイダーGTとロードラッグGTの場合、ボディの工数が増え8000時間は要する。価格は50%増しだという。

少し呆れるような内容にも思えるが、彼らは真剣だ。上等なテーラードスーツのように、大抵のオーナーにとっては、一生に一度の買い物といえる。手間を掛け、望み通りに仕上げてもらう価値は間違いなくあるのだろう。

もうすぐ、50番目のイーグルEタイプが完成する。世界中に点在する幸福なオーナーは、50名に増えることになる。

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