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離島で生き延びるクラシック フォード・カプリ MGBロードスター フィアット500ほか 前編

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離島で生き延びるクラシック フォード・カプリ MGBロードスター フィアット500ほか 前編

古き良き南欧の空気が残るマデイラ島

アフリカ大陸から650km以上離れた、大西洋に浮かぶポルトガル領のマデイラ島。起伏に富んだ小さな陸地には、古き良き南欧の空気が残る。街を歩けば、懐かしいクラシックカーとも沢山出会える。

【画像】離島に生息 フォード・カプリ MGB フィアット500ほか 同年代のクラシックも 全108枚

ブーゲンビリアやハイビスカスなど、南国らしい花が咲き誇る急斜面を、年代物のクルマがゆっくり登っていく。力を振り絞って。ちなみに面積は741平方kmで、奄美大島と同じくらいだ。

道路の整備が進み、トンネルが掘られ、島の反対側まで速く向かうことも可能になった。だが、うねうねと坂が続く旧道も現役。特に島の南部、フンシャルの山際には世界有数の急勾配がある。場所によっては、斜度は45%にも達するという。

殆ど断崖絶壁のように見える坂道だが、頑張って登る価値はある。壮大な絶景を拝むことができるから。

輸送費が高い離島では、クルマは徹底的に走り込まれ、生涯を終えることが珍しくない。「自分のクルマを家族のように大切にする人が多いですよ」。と話すのは、マデイラ島の観光文化担当長官を務めるエドゥアルド・ジェズス氏だ。

約2000台のクラシックカーが生き抜いており、レストアにも熱心らしい。「費やした金額が、価値に反映するとは限りません。しかし、毎年恒例のレストア・コンテストを通じて、かつての輝きを取り戻したいという動機を所有者へ与えています」

島には複数のオーナーズクラブも存在する。積極的にイベントが開かれているそうだ。

「大西洋の真珠」と呼ばれる美しい島に残る、現役で走り続けるクラシックカーたちを今回はご紹介しよう。

協力:ビジット・マデイラ、ヴィダマール・リゾートホテル、ブリストル空港駐車場

フォード・カプリ 3000GT(1973年)

オーナー:エドゥアルド・ボナル・シルバ氏

旅行代理店を営むエドゥアルドは、休日のドライブが何よりの楽しみだという根っからのマニア。1974年式ミニ・クラブマン 1275GTや、1974年式ダットサン1600 SSS、1972年式マツダRX-2など、合計8台のクラシックカーを所有しているそうだ。

そんな彼の1番のお気に入りが、1973年式フォード・カプリ 3000GT。鮮やかなペッパー・グリーンのボディに、ブラックのビニール・ルーフが決まっている。

ドライなサウンドを響かせるV6エンジンは、多くの視線を集めるという。パワフルで、急な坂も簡単に登り切ると誇らしげだ。「カプリは、ヨーロッパのマスタングと呼ばれていましたからね」

「これは、夫を失った婦人が15年間も眠らせていたクルマでした。彼女から買い取るまで、4年間も説得を続けたんですよ。クラシックカーは自分にとっての生きがい。多くの島の人と同様にね」。とエドゥアルドが笑った。

MGB ロードスター(1965年)/MGA 1600 クーペ(1960年)

オーナー:トニー・マーティンズ氏

1989年に銀行員を退職したトニーは、マデイラ島のクラシック・オートモービル・クラブの会長を努める重鎮。完璧なレストアのため、レッドのMGBは英国マンチェスターまで運ばれた過去がある。

1年後に作業終了の連絡を受けると、彼は渡英。グレートブリテン島の南、サウサンプトンの港まで自ら運転し貨物船へ積み込み、マデイラ島へ復帰させた。

この小さな島には、36台のMGBが走っているらしい。「古いクルマなので、新しい電子技術は採用されていません。すべて機械仕掛け。メンテナンスは難しくなく、英国製なので部品の入手も簡単」。と、島で開かれるラリー・イベントにも参加する彼が話す。

「製造が1967年以前なので、1速にシンクロメッシュがなく、運転には少し技術が必要です。それでも、快適で素晴らしいクルマだと思います」

もう1台、自慢の英国車がブルーのMGA 1600 クーペ。1960年式で、北米フロリダから英国を経てマデイラ島にやって来たのだとか。

オースチン・テン・サルーンGSI(1946年) /シンガー・ヴォーグ(1966年)

オーナー:パウロ・ペルネータ氏、ジョオ・ペルネータ氏

ブラックの艶が深い、オースチン・テン・サルーンを一家の誇りとして大切にしている、ペルネータ親子。「1976年に開催された、マデイラ島初のクラシックカー・コンクールで入賞を掴んでいます」。と息子のジョオが笑顔で話し出す。

「タン・レザーのシートの香りが、とてもいいんですよ。個性的で、いかにも英国車っていう感じです。定期的に島を訪れていたウィンストン・チャーチル元首相も、自身のオースチンを一緒にフェリーで運んで乗っていたんです」

彼らのクルマは、もともとタクシーとして走っていたのを、祖父が買い取ったのだとか。「おじいさんはクルマが大好きでしたが、晩年はガレージに停めっぱなしになっていました。その後に父が結婚して、クルマも復活を果たしました」

ペルネータ家が所有するクラシックには、20年前に購入したという、シンガー・ヴォーグもある。ダークブルーのボディの艶が見事だ。

フィアット1500(1966年)

オーナー:ジルベルト・ゴサルベス氏

電気技術者として働くジルベルトは、幼い頃からのフィアット・ファンだ。「子供の頃、隣の家がフィアットを数台所有していて、スタイリングやエンジンのサウンドが大好きだったんです。自分で最初に買ったのは、ウーノ。1989年でした」

島のフィアット・オーナーズクラブに加わった彼は、ここで唯一現存する1500のオーナーになった。「これ以前には、600 Dも考えていました。1500はスペアパーツの入手が難しく、レストア作業は難航しました。仕上げるのに3年も掛かっています」

「1500は、いつも期待に応えてくれる感じです。妻も気に入っています。機敏で力強く、運転しやすいんです」。と笑顔でジルベルトが説明する。

一見すると状態は良さそうに見えるが、2度目のレストアも考えているらしい。「ボディには少しサビがあります。1回目は早く運転したくて、少し作業を急いだ部分がありました。今回は丁寧に仕事を終えたいと思っています」

フィアット・ヌォーヴァ500(1957年)

オーナー:ジョオ・フェルディナンド・フェレイラ氏

フィアットとルノーのディーラーで主任メカニックを務めていた、ジョオの1番の楽しみが、クリーム色のフィアット・ヌォーヴァ500で地元のカフェを訪れること。1979年に購入したそうだ。

特徴といえるのがオープンルーフ。1957年から1960年式まで、限定的に作られている。「それ以降は、ハードトップの500 Dへバトンタッチしています」

ヌォーヴァ500は速くないと彼は認めるが、ソフトトップをロールバックした姿を気に入っている。険しい山道でも、懸命に走る様子が夢中にさせるという。「部品はポルトガル本土から輸入しています。島でも維持に問題はありません」

オースチンA55 ケンブリッジ(1960年)

オーナー:アイレス・アンドラーデ氏

マデイラ島に存在する2台のオースチンA55 ケンブリッジの、1台を所有しているのがアイレス。オリジナルのボディカラーはブラックだったが、1998年に購入し、レッドとホワイトのツートーンへ塗り替えた。

現在はファミリーカーとして、家族と一緒に島内のドライブを楽しんでいる。妻も子供も、A55 ケンブリッジが気に入っているという。「今でも島では人気者のクルマです。前オーナーも、懐かしんで買い戻したいと連絡してきます」

「乗り心地はすごく快適。今までずっと違うクルマに乗ってきたので、すっかり白髪になってしまいました」。と冗談交じりに話すアイレスは、A55 ケンブリッジの滑らかな走りを評価している。

島内の320kmを走るラリーイベントにもこのクルマで参加し、優勝したらしい。「コースの各ステージを、指定された時間内に指定の平均速度で走る必要がありました。優勝した瞬間は、誇らしい気持ちでいっぱいでしたね」

この続きは後編にて。

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