日本の自動車メーカーは、2021年4月以降の新規生産車から燃費基準達成車と低排出ガス車を示すステッカーの貼り付けを廃止した。
政府が自動車メーカーへ通達したことによって、これまで見慣れてきたステッカーが、順次新車から消えていくことになる。
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そこでなぜ廃止されることになったのか? またウインドウガラスに貼られているステッカーが、どのような役割があるのか、貼っていい場所、貼ってはいけない場所はあるのか、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。
文/岩尾信哉
写真/ベストカーweb編集部
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■消えゆく燃費基準達成車&低排出ガス車ステッカー
新型ハリアーのリアガラスにはステッカーがまったく貼られていない! トヨタは自社のウェブサイト(モデルごとのページ)で、同社の2021年4月の生産分の車両から燃費基準達成車/低排出ガス車ステッカーの貼付を取りやめるとしている。さらに、ホンダも同様の内容として同2種のステッカーを廃止することを明らかにしている
●トヨタ/順次廃止
●日産/順次廃止
●ホンダ/順次廃止
●スバル/順次廃止
●マツダ/順次廃止
●三菱/順次廃止
●スズキ/順次廃止
●ダイハツ/順次廃止
※2021年4月1日以降はメーカー、モデルによって、ステッカー貼付の有無が生じた販売車両が混在する場合が想定される
トヨタは他メーカーに先んじて、自社のウェブサイトでのモデルごとのページなどで、2021年4月以降の新規生産車への燃費基準達成/低排出ガス車ステッカーの貼り付けを廃止することが明らかになった。
自動車に関して定められている公的なステッカー(法律上は「標章」と呼ばれる)である、これら2種類のステッカーは、その名の通り国土交通省が定める燃費基準および排出ガス基準を達成したモデルのリアガラスに貼り付けられていた。
さっそく自動車メーカーの広報に問い合わせてみると、メーカーが一斉に2021年4月以降の燃費ステッカーの貼り付け廃止を決定していた。
当然ながら、自動車メーカーの各工場の生産・在庫・出荷の量にはモデルごとに違いがあるなど全モデル一律というわけにはいかないようで、自動車メーカーとしてはいわゆる「ランニングチェンジ」(細かい設計変更などを実施する際に、生産を継続しながら適宜仕様を変更していく手法)といった流れで、順次、対応を進めていくようだ。
たとえば、最新のトヨタ系のニューモデルであるレクサスUX300eのウェブサイトを確認してみると、「2021年4月の車両生産分より、車体 (後面ガラス) への燃費基準達成/低排出ガス車ステッカーの貼付を廃止いたします」との注釈が添えられていた。
政府が後述するような燃費基準および税制の改正を実施したことをきっかけとして、今回の販売車両の燃費基準の表示に関して、ステッカーを貼付するか、自社のウェブサイトやカタログに掲載するかという、政府からの通達に基づいた“二択”を提示されたようだ。
手間とコストを考えれば、自動車メーカーとして選択の余地はないはず。ディーラーでも特に説明をする義務もないので、自動車メーカーも大々的な発表は見送ったようだ。
■車体貼り付けか、カタログ掲載かの二者択一
お馴じみの燃費基準達成と低排出ガス車のステッカー
まずは実車への貼り付けが廃止されることになった燃費基準達成車と低排出ガス車に貼られていた“認定”ステッカーについて、その意味合いを確認してみよう。
自動車の燃費基準とは、国土交通省が「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネルギー法)」に基づいて設定した、メーカーに求める自動車の燃費性能に対する目標値である。通称“省エネ法”の歴史は古く1979年に制定された。
1999年に改定を受けて乗用車ではいわゆるトップランナー方式、ごく簡単にいえば、最も燃費の良いモデルを基準として、販売車両の燃費向上率が審査されるようになった。これを受けて、2000年から低排出ガス車、2004年から燃費基準達成車へのステッカーの貼付がそれぞれ開始された。
今回のステッカー貼付廃止のきっかけといえるのが、2020(令和2)年12月末に経済産業省と国土交通省は燃費基準の変更と税制改定を公表、2021(令和3)年3月末に施行した。
具体的には、「自動車重量税のエコカー減税及び自動車税・軽自動車税の環境性能割について、新たな2030年度燃費基準の下での区分の見直し等、所要の措置を講ずる」として、「環境性能割の臨時的軽減」(適用期限を9ヵ月延長し、令和3年末までの取得を対象)や「グリーン化特例の内容を見直したうえでの2年間延長」などが実施された。
これまでステッカーに示される燃費基準達成値や排出ガス基準の低減率などは、自動車取得税や旧自動車税の環境性能割などが減税される、いわゆる「エコカー減税」の減税率に関わってくるから、ステッカーが貼られた車両の大まかな燃費性能と税制上の優遇の程度がわかるという仕掛けになっている。
■法律改定がきっかけ
このような法律改定としては、政府が2016(平成28)年度の燃費実績を元に2019(令和元)年に策定した、2030(令和12)年度を目標とした燃費基準値の削減達成率が表示される。ちなみに、新たな燃費基準値は平均25.4km/Lとされ、2016年度実績値と比べて32.4%の改善を狙っている。
まずは緑色の楕円形内に星が表示される「燃費基準達成車ステッカー」に記載された内容を確認すると、目標とされる年次の燃費達成基準と達成率がポイント(%)表示されてきた。
表示内容については、前記の燃費基準と繋がる排出ガス基準値を元に、星5個の☆☆☆☆☆から始まり、95%の星4個半に続き、5%刻みに55%の星半分まで設定されている。
いっぽう、青色の楕円形の中に星印が表記される「低排出ガス車標章」は、自動車の排ガスに含まれる有害物質(窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素など)の排出量が、法令で定められた規制値より何%低減されているかを示している。
表記の例としては上から「☆☆☆☆ 低排出ガス車 2030年 排出ガス基準 ──%低減 国土交通大臣認定車」といったようになり、規制値から75%以上低減されていれば星が4つ、50%以上であれば星3つといったように格付けされている。
ところで、今回の実質的なステッカー貼付が廃止された理由には、従来から法律で義務化されているわけではないこと、すなわち政府主導、メーカー実施という制度の成り立ちが大きく関わっている(車検ステッカーは法律で義務化されていることは後述する)。
国土交通省のメディア向けのコメントを拾うと、「ステッカー自体に法令の定めはなく、貼られていなくても問題ない」とのこと。メーカーとしてもあくまで政府の通達ゆえにリリースなどで発表する義務はないのだから、粛々と車両から2種類のステッカーが消え去っていくことになる。
ステッカーの表示の具体例(参考資料:ホンダ)
■車検ステッカー
検査標章とは、いわゆる車検のステッカー。これを貼っていないと50万円以下の罰金刑が科せられる
左が2004年~2016年12月まで使用されていた検査標章。右が2017年1月から採用されている検査標章。2004年以前は7×7cmと巨大だった
ここからはそのほかの公的に定められた自動車を使用するうえで必要な、いずれも見慣れたステッカー類をいくつか挙げておこう。
「検査標章」が法律上の正式名称とされる、車両に貼られたステッカーで最も重要といえるのが「車検ステッカー」だ。法律でフロントガラス内側前方の視界を遮らない見やすい位置に貼りつけることが義務付けられ、これを怠ると50万円以下の罰金刑が科せられる。
車両のオーナーに対して検査の有効期間を示すことと、街中で取り締まりを実施する際の確認という目的があるため、剥がしてしまうと検挙されることになる。
車検ステッカーの貼る位置については注意が必要
車検ステッカーの貼る位置について
法律上では道路運送車両法の第六十六条に「自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。」とされ、車検切れのまま公道を走行すると違反行為として取り締まりの対象となり、違反点数6点の“一発免停”となることを肝に銘じておきたい。
軽自動車の検査標章は黄色となる。左が表、右が裏(車内)
■車庫証明ステッカー
最近、この保管場所標章を貼っているクルマが少なくなったような気がするが……
車庫証明ステッカーは正式には「保管場所標章」と呼ばれ、このステッカーの貼付に関する基準は「自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下、車庫法)」で定められている。
車庫法の第六条2項には「前項の規定により保管場所標章の交付を受けた者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該自動車に保管場所標章を表示しなければならない」とされており、車庫証明ステッカーを貼らないことは法律違反にあたる。
ただし、地方によっては規定が変わる(車庫証明が不要の場合もあり、ステッカーが交付されない)こともあってか、罰則は定められていない。
通常の保管場所標章を貼る位置は、乗用車ではリア(後面部)ガラスとなり、後面にガラスが装着されていないオープンカーなどのように、車両の後面が確認できない場合は、車体の左側面に貼ることになる。
■点検整備済ステッカー
前面ガラス左上に貼られている点検整備済ステッカー
「点検整備済ステッカー」は誰もがよく見かけるはず。視界を妨げることのないように、フロントガラスの左端(右ハンドルの場合)に貼られている場合が多い。
国の定める認証工場で定期点検を受けたことを証明するもので、これには定期点検を実施した日付、工場の認証番号、次回の定期点検実施日が記載されており、整備の時期を確認できる役割を果たす。
貼付義務はないため、点検後にシールを剥がしても罰則規定などもない。むしろ、期限切れの定期点検ステッカーを貼り付けていると、違反とみなされて罰則を受けることがあるので注意したい。
ちなみに、フロントガラスではステッカーが貼れる位置は上端から20%と定められているが、これが適用されるのは車検ステッカー、点検整備ステッカーに限られる。それ以外の後付けのルームミラーやETCやカーナビ用のアンテナ、最近普及してきたドライブレコーダーなどは、フロントガラスの一部を覆っても問題にはならない。
■保安基準に定められたクルマの窓ガラスに貼ることができるもの
最後にクルマの窓ガラスやボディに貼ることができるものを列記してみたので参考にしてほしい。
■フロントガラスに貼ることができるもの
※国土交通省が定める道路運送車両の保安基準による
・整備命令標章
・臨時検査合格標章
・検査標章
・保険標章、共済標章又は保険・共除外標章
・故障ステッカー
・バックミラー
・公共の電波の受信のために前面ガラスにはり付けるアンテナ
・塗装か貼り付けた状態で、運転手の視野を妨げる歪みがなく、運転者が交通状況を確認するために必要な視野範囲において、可視光線透過率70%以上確保できる透明のもの
・国土交通大臣又は地方運輸局長が指定したもの
■運転席&助手席のサイドドアの貼ることができるもの
運転席、助手席サイドにある窓もフロントガラスと同様の規制があるが、例外として盗難防止装置のステッカーはガラス下縁から100mm以下、ガラス開口部の後縁から125m以下の位置なら、貼り付けが可能。
■運転席&助手席の窓に貼れるフィルムは可視光線透過率70%
運転席や助手席の窓に紫外線対策として、フィルムを貼っているクルマを見かけるが、窓ガラスに着色フィルムを貼った状態で可視光線透過率が70%未満となる場合は法令で禁止されている。また着色フィルム自体が可視光線透過率70%以上であっても、既に着色された窓ガラスに貼ると可視光線透過率が70%未満となる場合もあるので注意が必要だ。
■ボディや後部座席の窓に貼ることができるもの
ボディ、リアウィンドウ、リアクォーターガラス、後部座席の窓に関してはステッカー類を貼ることができるが運転席からの視野を妨げるものはどの位置でも不可。後部座席の窓やバックウィンドウにステッカーを貼ると開閉時やワイパー使用時に剥がれてしまう可能性があるので注意したい。
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クルマ買い換えた際、ディーラーの人から車庫証明のステッカーは貼らなくてもいいと教えてもらったので、それ以降は貼らずに車検証と一緒にしてます。