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ロータス・エスプリが“大穴”かもしれない理由とは?

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ロータス・エスプリが“大穴”かもしれない理由とは?

4月9日~11日、幕張メッセ(千葉県千葉市)でおこなわれた旧車イベントの「オートモビルカウンシル2021」で、武田公実が注目したクルマをめぐるストーリー。今回はロータス・エスプリにフォーカス。

エスプリはどんなクルマ?

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オートモビルカウンシル2021に出展されていた1978年型のロータス・エスプリが意外なプライスを掲げていた。

いわゆる“ボンドカー”としてはアストンマーティン「DB5」にも匹敵する人気モデルであるとともに、クラシックカーのディープな世界に足を踏み入れてしまった愛好家にとっては、1970年代スーパーカーの要素も味わえるモデルである。

ところが、その人気と名声のわりには、かなりリーズナブルな価格で流通しているようで驚いた。

エスプリは、「ヨーロッパSP」の後継モデルとして、1975年にショー・デビューした。1976年に正式リリースされたエスプリは、進化の過程でミニ・スーパーカー化していったヨーロッパと違って、企画された当初からスーパーカー的資質を意識したモデルだった。

ヨーロッパ用のそれを拡大・強化した、往時のロータスお得意の鋼板組み立て式バックボーンフレームのリアミッドシップに、ロータスが1972年からエンジンを供給していた「ジェンセン・ヒーレー」やロータスの2代目「エリート」で既に実力を証明済みだった「907」型。ヘッド/ブロックともアルミ合金製の、直列4気筒DOHC16バルブ1973ccユニットを搭載する。

このエンジンは、英本国/ヨーロッパ仕様ではデロルト社製キャブレターを組み合わせて160ps、北米/日本仕様では、ストロンバーグ社製キャブレターとのコンビで140psを、それぞれ発生した。

その排気量ゆえに、スーパーカーと呼ぶにはやや非力であるものの、シリーズ1(S1)では900kgと公称された軽量も相まって、そのパフォーマンスは充分以上のものだった。もちろんハンドリングはロータスの真骨頂というべき素晴らしさであった。

ボディは初代「エリート」以来のロータスの伝統に従って、グラスファイバー(FRP)製。そのデザインワークは、ロータス公式としては初めて外部、しかも国外のイタルデザイン社に委託され、同社の創業者、ジョルジェット・ジウジアーロの手による、フレッシュかつアヴァンギャルド的、あるいはスーパーカーそのものともいえるウェッジシェイプのFRP製ボディが生み出された。

そして、もうひとつの重要なのは、生産期間の長さである。

世紀をまたいだ2004年まで、実に約27年の長きにわたって生産された。また、この生産期間を反映するように、時期や用途に応じたバリエーションの多さも特徴で、S1からS3までのジウジアーロ・ボディの初期モデルから、1987年に登場する新ボディ「ニューシェイプ」にいたるまでの進化の歴史がある。

その後1990年代にはFIA-GTレースへの参戦などもあってさらなる進化を遂げたほか、自社設計(当時の親会社ブガッティが関与)の3.5リッターV型8気筒ガソリンツインターボも搭載されるなど、その歴史を通じての変容は多岐にわたるものとなった。

程度上々

今回、オートモビルカウンシル2021の会場にて筆者がロックオンしたロータス・エスプリは、最初期モデルの「シリーズ1(S1)」だ。置かれていたのは、愛知県岡崎市に本拠を置く、クラシック・ロータスの国内最高峰スペシャリストにして、新車のロータス正規販売店としても国内随一の実績を誇る名店「ACマインズ」のブースである。

エスプリS1は、1978年にヒート対策や内外装にブラッシュアップを施したエスプリS2にあとを譲るかたちで、わずか2年ほどでフェードアウトしてしまったため、生産台数は940台(ほかに諸説あり)とレアだ。くわえて映画『007私を愛したスパイ』において、小型潜水艦にメタモルフォーゼする純白の「ウェットネリー(Wet Nellie)」として登場したこともあって、クラシックカーマーケットでは少量生産車しかも初期モデルゆえの弱点は承知のうえで、すべてのエスプリの中でも屈指の人気を誇るようだ。

ACマインズが出展した1978年型エスプリS1は、もともと新車時代にイギリス国内にデリバリーされたあと、日本に上陸した個体だ。ただ、先代にあたるヨーロッパ同様、海外輸出を主軸とするモデルだったため、右ハンドル仕様車は英国内でも捜索が難しくなっているという。

販売されていた個体は、レストア歴こそないものの、FRPボディやダークレッドのペイント、外装ディテールは上々のコンディション。いっぽう、インテリアのレザー表皮には使用感があるものの、小規模のリタッチで美しさを回復できるレベルにあるかと思われる。

つまり、希少かつピュアな右ハンドルのS1であることにくわえグッドコンディション。しかも新規3年分の車検整備費用も込みであるにもかかわらず「720万円(税・登録諸費用別)」という、かなり興味深いプライスが設定されていた。

720万円はお買い得か?

ロータスのオーソリティであるACマインズに尋ねると、この個体が比較的リーズナブルであるのは間違いないが、エスプリ全体の相場価格が残念ながら低めに推移しているという。

ここ数年の国際マーケットにおける売買例を見ると、最初期のS1、あるいはS2ターボに設定された限定車「JPSエディション」では、極上車ならば1000万円前後に達するそうだ。

しかし、映画『プリティウーマン』や『氷の微笑』などに出演したニューシェイプ時代のモデルは、おおむね500~600万円程度。1000万円を超えるのは1990年代のGT選手権ホモロゲート用限定車「スポーツ300」や、市場に出ることはめったにない「V8」くらいに限られるという。

そんなマーケット事情を知るにつけ、「もしかしてエスプリって、リーズナブルなんじゃないの……?」という思いが湧き上がってきた。

たとえば同時代のフェラーリ「308GTB」のマーケット相場と比べると、エスプリS1の相場は半額以下に相当する。もっともエンジンの気筒数は、価格と同様にフェラーリの半分。排気量は約3分の2で、パワーも約3分の2だ。フェラーリと比べるのは少々無理があるかもしれない。

おそらく、マーケット相場を低くしている最大の要因は、28年間にわたり総計1万台以上が生産され、市場に出まわった個体が多かったことが考えられる。しかし、その台数の多さは、結果として現在のパーツ供給状況には大きく貢献しているのも事実だ。

こうしてプラスとマイナス、双方の要素を総合的に見比べると、やはりロータス・エスプリは、現時点で“お買い得”なモデルの1台であると思う。

もちろん、バックヤードビルダーの出身であるロータスゆえの華奢さ(≒壊れやすさ)も否めないが、どうせこの種のライトウェイトスポーツカー/スーパーカーを探し求めるような好事家ならば、メンテナンスや維持のためにもしかるべき“覚悟”はあるはず。

1970~1980年代のアイコン的スポーツカー、あえていうならライト級スーパーカーとして、エスプリの評価はもっと高まってしかるべきと思った。

文・武田公実

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