現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > プロフェッショナルのノウハウとは?──新型KTM890アドヴェンチャー試乗記

ここから本文です

プロフェッショナルのノウハウとは?──新型KTM890アドヴェンチャー試乗記

掲載 更新
プロフェッショナルのノウハウとは?──新型KTM890アドヴェンチャー試乗記

KTM「890アドヴェンチャー 」の2021年モデルを田中誠司がテスト!

KTMとは?

BMWらしい大型SUV──新型X7 xDrive40d試乗記

KTMといえば、モーターサイクル・ファンのあいだでは通好みのブランドとして日本でもそのポジションが定着しつつあるものの、果たしてKTMとは何の略なのか、また、どこの国が発祥で、どれくらいの規模のメーカーなのか、など、細かいことまで把握している読者はまだ少ないかもしれない。

順に説明すると、KTMとはKronreif & Trunkenpolz Mattighofenの略で、同社の創業者Johann Trunkenpolzおよび彼の右腕だった経営者Ernst Kronreifの名字と、本拠地Mattighofenの頭文字をとった社名である。Mattighofenはドイツ国境に近いオーストリア北部の街だ。

メーカーとしての規模は、2020年の世界二輪車生産台数が16万98台と、BMW(16万8104台)やハーレーダビッドソン(18万336台)を若干下まわりこそしたものの、このへんの順位は毎年のように入れ替わっている。傘下のハスクバーナやガスガスをカウントすればKTMの数字は合計27万47台まで伸びる。

1954年にモーターサイクルの生産を始めるも、1992年には一時倒産の憂き目に遭ったこのブランドが急速に力をつけたのには、オフロードやエンデューロ競技での活躍、とりわけ2019年までダカール・ラリーをなんと18回も連覇することによって示された卓越した技術と、ネイキッドとモタードの中間的性格を備えた「デューク」シリーズの大ヒット、そしてオレンジと黒のコーポレートカラーを軸に据えたブランディングの成功が与って力あった。

倒立式フロントフォークを世界で初めて量産化したことで知られるWPサスペンション社をグループ傘下に収めて開発体制を強化し、デザインはザルツブルグのキスカデザイン社に一任するなど、独自性を貫いている。

従来型との違い

KTM「890アドベンチャー」は、「790アドベンチャー」の後継モデルとして2021年2月に日本に導入された。Vツイン1.3リッターエンジンのトップモデル「1290スーパーアドベンチャー」と単気筒の「390アドベンチャー」「250アドベンチャー」の中間に位置づけられ、並列2気筒889ccエンジンを搭載する。

クローム・モリブデン鋼管フレームと直結した、つまりハンドルバーと連動して首を振らないLEDヘッドライトと高めのウィンドスクリーン、そしてラリーの現場から抽出した技術である、重心高を低くするためライダーの左右膝前にも容量を振り分けた燃料タンクの組み合わせが外観上の特徴だ。

ライディング・ポジションは、シート高を830mmと850mmから選べる。低いほうに設定すれば、腿の部分が細めなこともあり、身長172cmのライダーでも充分両足が地面に届く一方、燃料タンクのために張り出した部分でニーグリップもしやすいという、扱いやすい設定とされている。

従来型とはステッカーのグラフィックが異なる程度であるが、890アドベンチャーの改良型エンジンはボア、ストロークともに拡大され、10psと12Nm増の最高出力105ps/8000rpmおよび最大トルク100Nmを獲得している。

KTMの逸材

不等間隔爆発を採用したためか、低回転域ではわずかに不揃いなビートを伝えるものの、6000rpmを超えた先に回転のキメが整うスウィートスポットがある。ピストンやクランクシャフトは鍛造製で、高回転に耐える。

100psを超える出力に対し、車重は乾燥重量196kgであるから、絶対的な加速は充分以上に速いうえに、9000rpm少々で訪れるレブリミットまで、常にトルクを右手でコントロールできている実感が得られる。

排気量アップと並行して、スロットルレスポンスが低下するデメリットを受け入れたうえで、クランクシャフトまわりの慣性重量を20%増加させた効果だろう。

試乗車にはオプションのTECK PACK(11万4774円)が装着されており、ウィンドスクリーン背後のTFTモニターと、ハンドルの左手元に備わる十字スウィッチを通じて、スロットル操作に対するエンジンのレスポンスをストリート/レイン/オフロード/ラリーの4つのモードから選択できる。トラクションコントロールやクイックシフターのオン/オフ、後輪へのABS介入もコントロール可能だ。クルーズコントロールもこのリストに含まれている。

今回はフルウェットの舗装路のみ短時間という限られた条件での試乗だったが、それでもこの890アドベンチャーから伝わってきたのは、このモデルがコンペティションで培ったプロフェッショナルのノウハウを注ぎ込んだ逸材であるということだ。

ある人はフルアジャスタブル・サスペンションにブロックタイヤで武装した「890アドベンチャーR」を選んでオフロードに臨むかもしれないし、またある人はパニア・ケースに荷物を詰め込んで長い旅路に赴くかもしれない。

軽さと扱いやすさ、絶対的なパワーの組み合わせがいずれにしても鍵を握っているということを、KTMはプロダクトラインナップの中心に位置するこのモデルによって、実証しようとしているのだろう。

文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

パイオニアのカーナビアプリ「COCCHi」アップデート、法人契約に「仕事オプション」が追加
パイオニアのカーナビアプリ「COCCHi」アップデート、法人契約に「仕事オプション」が追加
レスポンス
ポルシェ911ダカールが生産完了!「2500台目」はとりわけスペシャルな「ゾンダーヴンシュ」だった
ポルシェ911ダカールが生産完了!「2500台目」はとりわけスペシャルな「ゾンダーヴンシュ」だった
Webモーターマガジン
トヨタ「“4人乗り”軽トラ!?」登場! 格納「2階建て構造」で”広すぎ空間“実現!? 「対面座席」&テラス席もあるMYSミスティック「ミニポップビー」お台場で実車展示
トヨタ「“4人乗り”軽トラ!?」登場! 格納「2階建て構造」で”広すぎ空間“実現!? 「対面座席」&テラス席もあるMYSミスティック「ミニポップビー」お台場で実車展示
くるまのニュース
東風日産、新型EVセダン「N7」を公開!中国・都市部の先進的なユーザーに向けて2025年上半期に発売へ
東風日産、新型EVセダン「N7」を公開!中国・都市部の先進的なユーザーに向けて2025年上半期に発売へ
LE VOLANT CARSMEET WEB
ミシュランが乗り切った、時間との戦い。MotoGP最終戦に向けわずか7日間で1400本のタイヤを用意
ミシュランが乗り切った、時間との戦い。MotoGP最終戦に向けわずか7日間で1400本のタイヤを用意
motorsport.com 日本版
欧州の新世代ユーザーは「未知のブランド」も恐れない?──パリ・モーターショー2024<外国車編>【Movie】
欧州の新世代ユーザーは「未知のブランド」も恐れない?──パリ・モーターショー2024<外国車編>【Movie】
くるくら
首都高八重洲線「10年間通行止め」にネット上で阿鼻叫喚!?「江戸橋JCTの渋滞やばい」「抜け道無くなるのつらい」実際どうすればいいの!? 首都高の答えは
首都高八重洲線「10年間通行止め」にネット上で阿鼻叫喚!?「江戸橋JCTの渋滞やばい」「抜け道無くなるのつらい」実際どうすればいいの!? 首都高の答えは
くるまのニュース
島根 出雲大社、神在祭で交通規制! 渋滞や駐車場の満車が予想。無料シャトルバスの運行も。【道路のニュース】
島根 出雲大社、神在祭で交通規制! 渋滞や駐車場の満車が予想。無料シャトルバスの運行も。【道路のニュース】
くるくら
極東パワーゲートでリコール…突入防止装置の面積が足りない
極東パワーゲートでリコール…突入防止装置の面積が足りない
レスポンス
クラス最高水準のハイパワー「18V XR ブラシレス・シールドヘッドラチェットレンチ」がデウォルトから発売!
クラス最高水準のハイパワー「18V XR ブラシレス・シールドヘッドラチェットレンチ」がデウォルトから発売!
バイクブロス
ヴィラン役は勘弁! メルセデスが制作関与の映画『F1』で「レッドブルを説得するのに3年かかった」
ヴィラン役は勘弁! メルセデスが制作関与の映画『F1』で「レッドブルを説得するのに3年かかった」
motorsport.com 日本版
異例「無料高速の有料化」と引き換えの4車線化が目前に 新設線へ車線を切り替え 西九州道
異例「無料高速の有料化」と引き換えの4車線化が目前に 新設線へ車線を切り替え 西九州道
乗りものニュース
2024年MotoGP第20戦ソリダリティGP TV放送&タイムスケジュール
2024年MotoGP第20戦ソリダリティGP TV放送&タイムスケジュール
AUTOSPORT web
トヨタ新型「カクカクSUV」登場! 「ハリアー」サイズで初の“画期的機能”搭載! 新型「bZ3X」中国投入へ! どんなモデル?
トヨタ新型「カクカクSUV」登場! 「ハリアー」サイズで初の“画期的機能”搭載! 新型「bZ3X」中国投入へ! どんなモデル?
くるまのニュース
シンガーが再創造したポルシェ「911」は1億円はくだらない…!? 1台1台オーダーメイドで作られる芸術品の細部とは?
シンガーが再創造したポルシェ「911」は1億円はくだらない…!? 1台1台オーダーメイドで作られる芸術品の細部とは?
Auto Messe Web
ヒョンデN、新たな次世代高性能EV『RN24』を発表。「スペックよりドライビング体験を優先」
ヒョンデN、新たな次世代高性能EV『RN24』を発表。「スペックよりドライビング体験を優先」
AUTOSPORT web
【ルノーカングージャンボリー2024】台数の分だけあるカングーへの愛!全国から個性派オーナーが集結
【ルノーカングージャンボリー2024】台数の分だけあるカングーへの愛!全国から個性派オーナーが集結
AUTOCAR JAPAN
【ルノーカングージャンボリー2024】ルノー車オーナー以外も大歓迎!世界最大規模のカングー祭りが今年も開催
【ルノーカングージャンボリー2024】ルノー車オーナー以外も大歓迎!世界最大規模のカングー祭りが今年も開催
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村