オランダのザントフォールトで10月12~15日、ファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)の2023年シーズン最終戦が行われ、土曜日にポール・トゥ・ウインで今季3勝目を挙げたトレゾア・オレンジ1のリカルド・フェラー/マティア・ドルディ組(40号車アウディR8 LMS GT3エボII)が、日曜のレース2でも逆転勝利。週末2連勝を飾った同ペアが“スプリントカップ”のタイトルを獲得した。
来季2024年に、アウディからアストンマーティンへとマシンをスイッチすることが発表されたコムトゥユー・レーシングのワン・スリーで幕を開けた第10戦ザントフォールト。今大会は2週間前にスペインのバルセロナで行われたエンデュランスカップの最終戦に続く、2023シーズンとスプリントカップのフィナーレ・イベントだ。
AFコルセ、1着ゲットスピードの降格により1-2達成。ASPが耐久カップ2連覇/GTWCヨーロッパ
すでに耐久カップとシリーズ・オーバーオールの“2冠”を決めているアコーディスASPチームと僅差でスプリントカップタイトルを争うトレゾア・オレンジ1のクルーは、レース1に向けての予選で最速タイムを刻み、貴重な1ポイントを加算する。
迎えた決勝は雨上がりのダンプ路面でスタートが切られると、直後に3番手88号車メルセデスAMG GT3エボ(アコーディスASPチーム)が40号車に襲いかかる。しかし名手ラファエル・マルチェッロにしては珍しく濡れた路面に足を取られコースオフ。これにより88号車は15番手まで順位を下げることとなった。
一方の40号車アウディは、7番手からロケットスタートを決めて3番手に浮上し、88号車の脱落に乗じて2番手に順位を上げてきた69号車フェラーリ296 GT3(エミル・フレイ・レーシング)の追撃を受けることに。2台は接近戦を演じたままレース中盤へと入っていくが、ピットストップでついに順位が入れ替わる。
後半スティントもフェラーリとアウディの接近戦は続く。トップに立ったティエリー・フェルモイレン駆る69号車は、レース時間残り11分というタイミングで迎えたセーフティカーランからのリスタート後も40号車を押さえていたが逃げを打つことができない。対する40号車のドルディは、残り5分を切ったタイミングで跳ね馬に仕掛けると1コーナーから3コーナーにかけて並びかけオーバーテイクに成功。そのままトップチェッカーを受けてシーズン3勝目をマークするとともにドライバー選手権で88号車マルチェッロ/ティムール・ボグスラフスキー組を抜いてランキングトップに立った。
その88号車メルセデスAMGは、序盤のコースオフから驚異的なリカバリーを見せ、表彰台は逃したものの46号車BMW M4 GT3(チームWRT)に続く4位でフィニッシュしてみせた。5位は同じくWRTの32号車BMW M4 GT3だ。
■タイトル争う2台が8-9番手で並んだレース2グリッド
日曜のレース2に先んじて行われた予選2では、14号車フェラーリ296 GT3(エミル・フレイ・レーシング)が最速タイムを記録するも、黄旗区間での減速が充分でなかったとして3グリッド降格ペナルティを受けて4番手に。2番手タイムをマークした159号車マクラーレン720S GT3エボ(ガレージ59)も同様の違反によってポジションを下げた結果、マキシム・マルタン/バレンティーノ・ロッシ組46号車BMWがポールシッターとなった。
スプリントカップにおけるタイトル争いの中心にいる88号車メルセデスは8番手、レース1を制した40号車アウディが直後の9番手に続くスターティンググリッドとなり、ドラマの発生を予感させる。果たしてそれは現実のものに……。
前日と同じくダンプ路面で迎えたスタート2のオープニングで88号車がスピン。99号車アウディR8 LMS GT3エボII(トレゾア・アテンプト・レーシング)に後方からヒットされた2冠チームのメルセデスAMGは後続車とも接触しリヤバンパーを失っただけでなく、左フロントサスペンションにダメージを受けたことから、この段階でリタイアとなってしまった。
最大のライバルが消えたことで楽になった40号車アウディは、スタートから約15分後に降り出した雨の助けも借り6番手へとポジションを上げていく。またピットストップではチームメカニックたちが素早い作業でマシンをコースに送り出し3つ順位を上げることに成功した。
レース時間残り21分。3番手でリスタートを迎えたフェラーは、前を走るロッシの46号車を捉えてオーバーテイクすると、続けざまに首位を走る30号車BMW M4 GT3(チームWRT)も交わしてレースリーダーに。その後は2番手に順位を上げてきた32号車BMWに3.5秒のギャップを築いてトップチェッカーを受け、週末2連勝でスプリントカップのシリーズチャンピオンを決めてみせた。今季限りでワークス活動を終了するアウディスポーツ・カスタマーレーシングにとっては“有終の美”となる勝利&チャンピオンシップ制覇だ。
レース2の総合3位はゴールドカップを制し、同クラスのシリーズチャンピオンも獲得した30号車BMW。アンドレア・カルダレッリ駆る60号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(BSR)が、14号車フェラーリとのバトルに競り勝ち4位となっている。シルバーカップなどこの他のクラスのシリーズチャンピオンは以下のとおりだ。
■GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ2023 スプリントカップ・チャンピオン
・プロ:マティア・ドルディ/リカルド・フェラー(トレゾア・オレンジ1)
・ゴールド:カラン・ウイリアムズ/ニクラス・クルッテン(チームWRT)
・シルバー:ジョーダン・ラブ(ハウプト・レーシングチーム)
・ブロンズ:アレックス・マリキン(ピュア・レキシング)
■GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ2023 オーバーオール・チャンピオン
・プロ:ラファエル・マルチェッロ/ティムール・ボグスラフスキー(アコーディスASPチーム)
・ゴールド:カラン・ウイリアムズ/ニクラス・クルッテン(チームWRT)
・プロ-アマ:アレックス・フォンタナ/イヴァン・ヤコマ/ニキ・ロイトウィラー(カーコレクション・モータースポーツ)
・シルバー:アレックス・アカ/ロレンツォ・パトレーゼ(トレゾア・アテンプト・レーシング)
・ブロンズ:アレックス・マリキン(ピュア・レキシング)
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