上級ファミリーSUVの有力な選択肢
Q4 eトロンは幅広いターゲット層を想定しており、アウディがバッテリーEV(BEV)での躍進を狙うモデルといえる。新しいモノへ積極的に感心を示すアーリーアダプターから、より一般的なマジョリティへBEVを広める役割を担っている。
【画像】優れたBEVのクロスオーバー アウディQ4 eトロン 兄弟モデルのVW ID.4とID.5も 全88枚
カタログ値で480kmを超える航続距離と、ファミリーユーザーに丁度いいボディサイズ、全国的なディーラーネットワークやアウディというブランド力で、英国で高い人気を獲得すると予想されていた。トップのアウディA3に次ぐ勢いで。
ところが、2022年7月末の販売台数を確認すると、A5に次ぐ9位という状況。ひと回り大きいSUVのe-トロンの方が良く売れている。
アウディによれば、半導体不足が大きな影響を及ぼしているという。潜在的な需要は存在し、状況が好転すれば販売数も伸びると考えているようだ。
だとしても、Q4 eトロンはBEVであるかどうかに関わらず、プレミアム・ファミリーSUVとして優れた内容を備えている。普段使いしやすい、有力な選択肢の1つだ。
反面、惜しまれる点もなかったわけではなかった。当初はワゴン風ルーフラインを持つQ4 eトロン 40でスタートし、途中でクーペ風ルーフラインのQ4 eトロン・スポーツバック 40へ乗り換えているが、そのどちらにも存在した。
BEVなことを忘れるほど馴染みやすい
全体の印象は間違いなくイイ。ボディは実際よりコンパクトに感じる適度な大きさで、車内空間は広い。運転しやすく乗り心地は穏やかで、走行中は静か。パワーとトルクも充分。操縦性も褒められる。
少しの時間で、BEVであることを忘れるほど馴染みを覚えた。電動のパワートレインは洗練性や静寂性に優れるため、プレミアムなモデルとの相性は高い。アウディというブランドに合致する、エネルギッシュさも備えている。
一方、アウディらしさという点では充分ともいえなかった。実質的な兄弟モデルといえるフォルクスワーゲンID.4との差別化が、足りていないように筆者は思えた。
内装にはグロスブラックのプラスティック製パネルがふんだんに用いられ、ブランドの特長といえた高い知覚品質には届いていなかった。ロゴマークを隠したら、フォルクスワーゲンのモデルだと勘違いする可能性もゼロではないだろう。
電動パワートレイン自体の質感も同様。明確な違いを体感しにくい。
Q4 eトロンの航続距離は仕様によって異なる。英国価格4万4990ポンド(約742万円)の40の場合、203psの駆動用モーターがリアに1基搭載され、77kWhの駆動用バッテリーが載り、1度の充電で508km走れる。
実際の距離は、温かい夏で480kmほどだが、寒い冬場は約350kmになる。気温が低くなるほどバッテリーの効率は落ちるため、BEVを購入する場合は、お住まいの地域の冬の条件で検討することをオススメしたい。
航続距離や充電で困ることはナシ
長期テスト車両は、途中で4万6490ポンド(約767万円)の40 スポーツバックへ変更された。パワートレインの仕様は同じで、航続距離も同等。乗りやすさにも目立った違いはなかった。
日々の通勤にも使った。職場での充電も可能で、長距離旅行も含めて駆動用バッテリーの残量や航続距離に悩まされた場面はほぼなかった。
旅先では途中の充電器を利用したわけだが、グリッドサーブ社のエレクトリック・フォアコートと呼ばれる充電インフラには感心させられた。BEV時代の新しいサービスステーションといえる。
350kWの急速充電器がたくさん並んでおり、空きを心配する必要はナシ。最大135kWで充電できるQ4 eトロンのバッテリーも、短時間で満たせた。約30分で50%分の電気を得られ、料金は20ポンド(約3300円)だった。
長期テスト車両の点検中、代車でやって来たのはスポーツバックの50 クワトロ。前後2基の駆動用モーターで299psの最高出力を発揮し、77kWhの駆動用バッテリーを搭載していた。
Sラインという上級トリムグレードで、英国価格は5万4970ポンド(約907万円)。仕上がりの差を考えると、40 スポーツバックと比べて割高に感じられたことは事実だ。
加速は鋭いし、インテリアも豪華。ステアリングホイールも専用品ではある。ベルギーやオランダでの休暇も楽しませてくれたが、40 スポーツバックがQ4 eトロンのベストモデルに思える。見た目も車内空間も、大きな違いはない。
優れた体験を濁したソフトウェアのエラー
Q4 eトロンの体験を濁していたのがソフトウェア。乗り換えた前でも後でも、幾つかのバグが含まれていた。
当初の40の場合、インフォテインメント・システムが何度もクラッシュし、再起動を迫られた。その後に警告灯が点灯してしまい、ディーラーへ持ち込んでいる。
乗り換えた40 スポーツバックはしばらく快調だったものの、スピードメーターにエラーが生じ、そこからインフォテインメント・システムのクラッシュも引き起こした。こちらもディーラーへ持ち込んだが、原因は掴めなかったようだ。
Q4 eトロンとの時間は基本的には素晴らしいものだった。プロダクトとして関心を持てたし、実用性も高かった。だが、ソフトウェアがそれを乱していたことは間違いない。
この件に関しては、英国の読者からも少なくないメールが寄せられた。高速道路を走行中、ソフトウェアが完全に固まってしまったケースもあったようだ。
アウディとしても、アップデートの必要性は認識しているという。Q4のソフトウエアには既知の問題があると、読者の1人はディーラーの担当者から告げられたという。早く改善されると良いのだけれど。
半導体不足が解消するまでに、ソフトウェアの見直しも完了できれば望ましい。より多くのユーザーが、本来のQ4 eトロンを楽しめるようになる。
セカンドオピニオン
汎用性の高いプラットフォームが、個性を消してしまうことはないようだ。確かに動的能力では、Q4 eトロンとフォルクスワーゲンID.4に大きな違いがあるわけではない。
しかし、走りの洗練性はアウディとして充分。フロントグリルの4リングスにふさわしい内容だと思う。 Felix Page(フェリックス・ペイジ)
テストデータ
気に入っているトコロ
ボディサイズ:軽快に運転でき不足ない車内空間を備える、丁度いい大きさだといえる。
航続距離:現実的に約480kmは走れる。ベルギーへの夏の旅行も楽しめた。
扱いやすさ:少し時間が経つと、良い意味でBEVなことを忘れるほど使いやすい。
気に入らないトコロ
内装:グロスブラックのプラスティックパネルが多く、プレミアム感は薄く指紋が残りやすい。
ソフトウェア:何度かエラーが発生し、クルマの印象にも影響を与えた。早急に改善されるべきだろう。
走行距離
テスト開始時積算距離:2270km
テスト終了時積算距離:1万2588km
価格
モデル名:アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)
開始時の価格:4万6490ポンド(約767万円)
現行の価格:5万375ポンド(約831万円)
テスト車の価格:5万4565ポンド(約900万円)
オプション装備
パノラミック・ガラスサンルーフ:1250ポンド(約20万6000円)
マトリックスLEDヘッドライト:1075ポンド(約17万7000円)
アシスタンスパッケージ・プラス:950ポンド(約15万7000円)
ダンピングコントロール・サスペンション:950ポンド(約15万7000円)
MMIナビゲーション・アドバンスド:750ポンド(約12万4000円)
セーフティパッケージ・プラス:650ポンド(約10万7000円)
20インチVスポーク・グラファイト・アルミホイール:625ポンド(約10万3000円)
アウディ・フォーンボックス:475ポンド(約7万8000円)
プライバシーガラス:395ポンド(約6万5000円)
パドル付きフラットボトム・ツインスポーク・レザーステアリングホイール:285ポンド(約4万7000円)
ストレージパッケージ:225ポンド(約3万7000円)
アルミニウム・トリム:225ポンド(約3万7000円)
フロントドア・アコースティックガラス:120ポンド(約2万円)
ライティングパッケージ:100ポンド(約1万7000円)
燃費&航続距離
カタログ航続距離:508km
駆動用バッテリー容量:76.6kWh(実容量)
平均航続距離:410km(5.3km/kWh)
最高航続距離:490km(6.4km/kWh)
最低航続距離:339km(4.5km/kWh)
主要諸元
0-100km/h加速:8.5秒
最高速度:159km/h
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
トランスミッション:シングルスピード・オートマティック
トランク容量:535L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:235/50 R20
車両重量:2120kg
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:714ポンド(11万8000円/1か月)
CO2 排出量:0g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
エネルギーコスト:363ポンド(6万円/電気)
エネルギー含めたランニングコスト:363ポンド(6万円/電気)
1マイル当りコスト:0.07ポンド(12円)
不具合:ソフトウェア
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みんなのコメント
ご自身はステップワゴンに乗っている。
昨年1億以上かけて自宅を建てたばかりなのに。
当方アウトランダーPHEVの旧車乗りで買い換えたいなあって言ったら、いくらってきかれたので600万と言ったら安いねえ。。私はそれでいいよだって。先を越されそう。
アウディってどうよって聞くくらいの自動車の素人が電気自動車に手を出す時代になったのかも。笑