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【ヒットの法則213】5代目3シリーズクーペは「4シリーズ」の先駆けとなったパーソナルクーぺ

2006年、5代目BMW 3シリーズ(E90)にクーぺが登場している。このクーぺボディには「E92」という別の開発コードが与えられたことからもわかるように、4ドアセダンとデザインを大きく変えているのが特徴。新設計の3L直6ターボユニットを搭載して登場した「335iクーぺ」とはどんなモデルだったのか、オーストリア インスブルックで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年9月号より)

セダンとの徹底した差別化を図る
ここ数年、特にドイツのプレミアムブランドメーカーは、ニューモデルの発表に際して必ずと言って良いほど、彼らの伝統を誇示する。

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いかにその当該モデルが歴史を持っているかを示し、歴史の浅い日本や韓国の自動車メーカーとの違いを明らかにしようとしているのだろう。ドイツで「レクサス」が話題になるにつれて、この傾向が加速されたような気がする。確かに、高級ブランド市場に食い込もうとする新参者の歴史は浅い。ここで追いすがるライバルと差をつけなければ、という考えもよくわかる。

そんなわけで今回、オーストリアのインスブルックにおけるBMW 335iクーペの国際試乗会の場にもヨーロッパ初の量産クーペであるBMW 327(1938~1941年)リアエンジン搭載のコンパクトクーペモデルBMW 700(1959~1964年)、そして3シリーズクーペとして1992年に初登場したE36、また1998年にフルモデルチェンジした先代のE46という4台のクーペモデルが、往年のコスチュームをまとったドライバー/パッセンジャーと共に会場に勢ぞろいしていた。

異常に暑い夏の太陽が照りつけるインスブルック空港の駐車場には、ブルーとシルバーのBMW 3シリーズクーペが並んでいた。どちらかといえば、深いブルーの方がお洒落でパーソナルなクーペには似合うような気がするので、こちらを選択する。

E92という独立した開発コードで呼ばれているように、今度のクーペは意図的に4ドアセダンとの衣装の着せ替えがはっきりしている。事実、ドアハンドル以外で4ドアセダンと共有する部品は一つもない。

まず表情を作る顔の中で大事な目(ヘッドライト)は、目頭と目尻を結ぶ上下のラインがアーモンド状に柔らかくなり、また上端が柔らな弧を描いてボンネットにまで侵入したキドニーグリルとその両脇のV型の鼻筋ラインはセダンとは反対に盛り上がり、フロントスポイラーへと伸びている。

一方、クーペの売りであるサイドビューは、古典的な浅いノッチを持ったルーフライン、フロントのホイールアーチからドアハンドルを経由してリアエンドまで一気に伸びたプレスラインが、プレーンで端正なプロフィールを作っている。

またリアエンドだが、E46のL字型と正反対になった横長型のコンビネーションライトに変わっている。6シリーズクーペと比べればずっと古典的ではあるが、これだけセダンと違うのだから「4シリーズ」と名付けても良かったかもしれない。

インテリアは、3シリーズセダンとそう大きな相違点はない。わずかにドア内張りのデザイン、そしてリアシートにまで延長されたセンターコンソールが、パーソナルな4シータークーペであることを強調している。ところでこのリアコンパートメントは十分に広く、大人4人での長時間ツーリングにも問題はない。また大きく開くドアとイージーエントリー機構により、後席の乗降性も悪くない。

ドライバーズシートに身体を預け、イングニッションボタンを押すと左後方からスルスルとシートベルトが伸びてくる。ベルトアンカーが付いたBピラーが後方にあるので、身体を捻じ曲げないですむ便利な装置だが、これは以前からメルセデス・ベンツが採用していた。本来はお腹の周りに脂肪がたまったパッセンジャー用のはずだが、BMWのオーナーも歳を取って今では同じような問題に悩まされているのに違いない。

ところでこのクーペはセダン以上に軽量化が積極的で、フロントのサイドパネルはサーモプラスト製でスチールに比べると50%も軽く、一台あたり3kgの軽量化につながる。ちなみにクーペの空車重量は1600kgでセダンよりも10kg軽い。同時に、ボディの捩れ剛性は旧クーペに比べると25%アップ、現行4ドアとほぼ同一だが、重心位置はおよそ40mmほど低い。

セダンよりもスポーティ、それでいてしなやか
この335iクーペに搭載されているエンジンは「N54」と呼ばれる新設計の直列6気筒ガソリン仕様で、排気量は2979cc、ピエゾ式直噴システムとツインターボが組み合わされる。最高出力306psは5800rpmで、また最大トルクの400Nmは1300~5000rpmの間で幅広く得られる。

ちなみにターボ過給を採用するため、出力に応じた剛性確保の観点からこのエンジンのクランクケースにはマグネシム合金は使われず、アルミ製となっている。それでも同じ出力を有するV8エンジンよりは、70kgも軽い。

さすがに小型タービンを2基組み合わせたツインターボ、ピックアップが良く均一なパワーの立ち上がりを見せ、走り出すとすぐにまるでディーゼルターボエンジンのように太いトルクがスロットルに応じてリニアに湧き上がってくる。

しかもディーゼルと違ってタコメーターの針はグングンと上昇し、6800rpmのレッドゾーンまで、よどみのない滑らかな回転フィールを持っている。これならば、ディーゼルに慣れきっている欧州のドライバーも、ガソリンエンジンに納得するだろう。

BMWの発表によれば、6速MTでの0→100km/hの加速は5.5秒(6速AT:5.7秒)、最高速度はともにリミッターで250km/hに制限されている。

レポーターが選択したテスト車には6速オートマチックが装備されていたが、このZF製のトランスミッションは改良された油圧系と新型のトルクコンバーターを採用し、さらに効果的で演算能力の高いソフトウエアを組み合わせた結果、その反応速度はスロットルムーブメントだけでなくシフトスピードにおいても従来のシステムにくらべて40%以上も素早くなっている。さらにシフトダウンに際しても、これまでのように一段ずつ落ちるのではなく、そのスピードに合ったギアが直接選択される。

もちろんシフトは、スポーティにステアリングコラムから伸びたパドルでも操作が可能だ。しかもトルコンの持つソフトな快適性は失われていないので、SMGが設定されていなくても問題はない。

クーペに採用されているサスペンションは、基本的には4ドアセダンと同様にフロントがストラット式、そしてリアが5リンクと呼ばれるマルチリンク式の組み合わせである。

前述のようにフロント部分の軽量化により、前後アクスルへの重量配分はほぼ50対50と理想的なバランスが保たれている。さらに全高がセダンよりも46mm低く、重心位置も40mm下がっているので、ハンドリングはずっとスポーティである。しかも喜ばしいことに、これまでのランフラットタイヤを装備したBMWのようにハードではなく、あくまでもソフトでしなやかなのだ。

それでいながら、低いボディのおかげで大袈裟な動きは少ないので、気がつかないうちに結構なペースでダウンヒルのワインディングロードを下っていった。すると、直前に降った雨でまだ路面の乾いていないコーナーに飛び込んでしまったが絶妙な制御のDSC(ダイナミックスタビリティコントロール)のお陰で、クルマはすぐさま正しい姿勢に戻った。さらにこうした場合にオプションで設定されるアクティブステアリングシステムが装備してあれば、ステアリングによる制御介入まで行う。だから、もう一歩進んだパッシブセーフティを望むドライバーには必要なオプション選択だといえる。

3シリーズクーペは、そのエレガントなスタイルが象徴するように洗練された走りの品質、特に乗り心地の面で大きな進歩が見られる。それゆえにこれまでのややハードなセッティングであったBMWスポーツにちょっと躊躇されていたご年配の方々にも勧められる。

またこのクーペには近々、インテリジェントな4WDシステムであるxDriveシステムを搭載したモデル「335xi」も追加されるので、このパワーをちょっと持て余し気味に感じるドライバーには最適な選択枝となるだろう。もちろんここまでのパワーを必要としない向きには325i(2.5L/218ps/250Nm)や330i(3L/272ps/315Nm)も当然、準備されている。またヨーロッパには、ディーゼルエンジン搭載モデルもカタログに載る。

さらにもっと欲張りで、時間とお金に余裕のある方々には、あと1年も経てば登場する400psのV8を搭載したM3もスタンバイしている。さらに、アルミ製のリトラクタブルトップを持つ4シーターカブリオレも、その順番を待っている。3シリーズはまさに、ネバーエンディングストーリーなのである。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年9月号より)



BMW 335iクーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4580×1985×1395mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:306ps/5800pm
●最大トルク:400Nm/1300~5000pm
●トランスミッション:6速MT(6速AT)
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速:5.5秒
●最高速: 250km/h(リミッター)
※欧州仕様

[ アルバム : BMW 335iクーペ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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