■トヨタの人気ミニバンは今後どうなるのか?
かつて、国産メーカーは複数の販売チャネルを展開していましたが、2020年2月現在ではトヨタを除いて販売店を統合し、トヨタも2020年5月を目処に全国の販売チャネルを統合すると公表しています。では、チャネル別に存在するトヨタ「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」や「アルファード/ヴェルファイア」は、今後どうなっていくのでしょうか。
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トヨタは2020年2月現在、東京地区を除いて異なる販売チャネルを展開しています。高級車と商用車を扱う「トヨタ店」、年配の人向けのセダンを中心としてきた「トヨペット店」、若者向けの車種を揃えた「ネッツ店」、そして小さめの車両が中心の「カローラ店」という販売体制です(プリウスなど一部車種は複数の販売店で併売)。
しかし、2018年11月にトヨタは「未来のモビリティ社会に向け、日本の販売ネットワークを変革」というプランを公表。この大きなポイントが全販売店全車種併売化の実施で、2022年から2025年をめどに「原則的にどの販売店でもすべてのトヨタ車が買えるようにする」と説明していました。
実際には、前述のとおり2020年5月にこれらの販売チャネルを統合して、全店舗で全車種を扱うようにすると公表。すでに、2019年4月より東京地区の販売店については、4つの販売会社を統合されており、外観はそれぞれの販売ブランドの看板を掲げているところも残されているものの、それぞれの販売会社が統合され「トヨタモビリティ東京」に社名が変更されました。
またトヨタは、2020年代の半ばには現在販売している車種を半減させる方向で調整しているといいます。人気ミニバンノア/ヴォクシー/エスクァイアやアルファード/ヴェルファイアといった姉妹車が無くなる可能性が出てきています。
2019年の年間登録車販売台数では、全体8位ヴォクシー(8万8012台)、全体17位ノア(5万2684台)、全体21位エスクァイア(4万2489台)となっています。
元々この3車種は2001年に「タウンエースノア」と「ライトエースノア」の後継車種として、ノア(カローラ店)、ヴォクシー(ネッツ店)が発売されました。その後、2014年にエスクァイア(トヨタ店/トヨペット店)が追加された経緯があります。
また、アルファード/ヴェルファイアは前出の販売台数において、全体13位アルファード(6万8705台)、全体23位ヴェルファイア(3万6649台)という状況です。
初代アルファードは「アルファードG」がトヨペット店、「アルファードV」がビスタ店(ネッツ店)で扱われ、2代目では「アルファードV」がヴェルファイアに車名変更して、現在にいたります。
これらのモデルがそれぞれ統合されるとなると、単純に販売台数が多いヴォクシーとアルファードにそれぞれ整理されるのではないかという見方が多いようです。
また、競合が多いミニバン市場で新しい車名で販売するには、認知させていくまでに時間が掛かることもあり、すでに名前が通っている車名に統合するのが賢明といえます。
既存車種の販売状況について、販売店はどのような考えなのでしょうか。統合前のトヨタの販売店スタッフは次のように話します。
「現時点では、どの車種が廃止・統合されるのかは分かりません。しかし、販売店統合や車種が廃止されるというニュースが報道されてからは、お客さまから問合せを頂くことが多くなりました。
とくに、ノア/ヴォクシー/エスクァイアとアルファード/ヴェルファイアは、それぞれ人気車種ということもあり、今後の行方を気になっている人も多いです。
販売をする側としては、車種が統合されることでお客さまにより説明がしやすくなるので、良い面もあるかと思いますが、統合された場合の車種名やデザイン、ターゲット層によって販売しづらくなる可能性もあるので、難しいところです」
一方ですでに統合している都内の販売店スタッフは、次のように話します。
「統合される前であれば、それぞれ決まったユーザー層に向けた車種を販売していたので、問題はありませんでした。しかし、統合後はノア/ヴォクシー/エスクァイアを同じ店舗で扱えるので、それぞれの違いをお客さまにも答えられなければならないため、多少混乱したこともありました。実際にどのように車種が整理されるかは分かりませんが、お客さまにとっては選びやすくなるのは良いことだと思います」
※ ※ ※
現在、ノア/ヴォクシー/エスクァイアとアルファード/ヴェルファイア以外に販売チャネルごとに専売されている車種は、「ルーミー/タンク」、「スペイド/ポルテ」、「アリオン/プレミオ」などが存在。これらの車種も近い将来には、統合・廃止される可能性も大いにありそうです。
■自動車メーカーの販売網が変化する意図とは
なぜトヨタはいまになって、販売チャネルを統合することを決断したのでしょうか。販売チャネルの統合について、トヨタは次のように説明します。
「販売の体制を『チャネル軸』から『地域軸』へと見直し、より地域に密着したディーラーとすることです。たとえばお客様の家の隣にトヨタの販売店があっても、いまのチャネル体制ではそこで希望する車種が買えるとは限りません。
それでお客さまに不便をおかけすることもあると思います。それを解消できるのが、まずはお客さまのメリットとなると考えています」
しかし、トヨタの狙いは販売網の整理だけではありません。「クルマを所有しない」という社会に向けた変革でもあるのです。
クルマを取り巻く環境は今後、所有するものから必要な時だけ使うものへと移り変わっていくと予測されています。
そんな社会変化への対応として、トヨタ自身が定額制サービスやカーシェアリング事業を立ち上げていますが、その実施にあたっての準備が全販売店全車種併売化といえます。
前出のトヨタは次のようにも説明しています。
「販売店の見直しで、より地域に密着し、地域社会をより豊かにすることを目指します。具体的には、モビリティサービスを提供する前提として、お客様の求める商品やサービスをどの店舗でも提供できる体制を整えることが狙いです」
※ ※ ※
近年、急速に普及しているカーシェアリングサービスは、利用拠点が多いほど利便性が高まります。また、トヨタは1台のクルマに乗るのではなく、好きなクルマや乗りたいクルマを自由に選ぶことのできる定額制サービス「KINTO(キント)」もおこなっています。
販売店が全車併売になれば、利用拠点が増え販売チャネルの枠を取り去ることで選べる車種の選択肢も広がるなど、ユーザーのメリットにつながるというわけです。
前出の東京トヨペットは、販売店の存在意義について次のように話します。
「最近、インターネットなどで物を購入できることが増えています。そんななか、販売店のメリットとしては実際にクルマを見て触れて試乗ができるということです。
また、『人と人のコミュニケーション』が可能な場でもあるため、単にクルマを購入するだけでなく、保険やクルマのメンテナンスといったアフターサービスなど総合的なカーライフをサポートする場所といえます」
※ ※ ※
100年に一度という自動車業界の大変革の時代を迎え、トヨタは「クルマを作る会社からモビリティに関するあらゆるサービスを提供する会社へと変わる」と宣言しています。
販売ネットワークの変革は、単に販売現場の効率化ではなく、自動車業界を取り巻く変化の一環と捉えられます。
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