ダウンサイズエンジンでもトルクフルで軽快な走り
およそ10年ぶりにジープのフラッグシップモデル、グランドチェロキーがフルモデルチェンジした。型式でいうWLと呼ばれる5代目グランドチェロキーは、同門となるステランティスグループのアルファ ロメオ ジュリア、ステルヴィオに使われている“ジョルジオ”プラットフォームをベースに、ホイールベースを延長するなどして開発されたものだ。それによってグラチェロ初の3列シート7人乗り仕様の「グランドチェロキーL」が登場した。
日本では先行して2022年2月にこのLが発表されており、それに遅れて10月に2列シート5人乗りの標準仕様が上陸した。また、今回のタイミングではまだ用意されていなかったが、のちにグラチェロ初となるプラグインハイブリッドが追加されることになっている。 エクステリアデザインは初代ワゴニアにインスピレーションを得たもので、特徴的な逆スラントノーズを継承。ジープブランドのアイデンティティである、7スロットグリルや台形のホイールアーチももちろん受け継がれている。
ボディサイズは全長4900mm×全幅1980mm×全高1810mm、ホイールベースは2965mm。3列シート7人乗りのLに比べて全長は約300mm、ホイールベースは125mm短縮されており、その結果、最小回転半径が6.3mから6mとなり、Lよりも取り回ししやすくなっている。
インテリアはフラッグシップモデルにふさわしく、レザーとウッドを組み合わせたモダンテイスト。ダッシュボード中央には、10.25インチディスプレイを配置。オーディオ、エアコン、車両セッティング、音声認識システムなどは直感的に操作できる。
試乗車のグレードはリミテッドで、アルパイン製プレミアムサウンドシステムが備わっていたが、これがかなりいい音を奏でていた。ちなみに、プラグインハイブリッドの上級グレードであるサミット リザーブならマッキントッシュ製プレミアムサウンドシステムが標準装備されるというから、そちらもいずれ試聴したい。なお、シフトノブにはジープブランド初となるダイヤル式の「ロータリーシフト」を採用。かつて、ジャガー・ランドローバーが採用していたものと同様の操作方法だ。 今回の試乗車はガソリン仕様で、最高出力272ps、最大トルク400N・mを発生する2L直4ターボエンジンにZF製8速ATの組み合わせ。駆動方式はもちろんフルタイム4WD。「クォドラトラックII 4×4システム」は、いわゆるオンデマンド式で、システムが4WD不要と判断すれば、自動で2WD(後輪駆動)に切り替え燃料消費を抑制する。走行モードを切り替える「セレクテレインシステム」は、サンド/マッド、スノー、オート、スポーツから選択が可能。通常走行時はオートを選択しておけばいい。
Lが3.6L V6エンジンを搭載しているのに対して、標準ボディは2L直4ターボエンジンと聞いて、「物足りないのでは? 」と、いささか不安を感じていたけれど、いざ走り出してみるとその不安はすぐに払拭された。動き出しから低速域までのトルクの立ち上がりも、2Lとは思えないほどパワフル。実はV6の最高出力が286psなのに対してこちらの直4は272psとわずか14psの差。さらにV6のトルクは344N・mなのに対して、直4は400N・mとこちらが上回っているのだ。Lと標準で車両重量差が100kgあることを鑑みれば、2Lの方が軽快に走るのは自明の理。実際に高速道路に入っての高速巡航時や追い越しで加速する場面では、パワー不足を感じるようなことはまったくなかった。
ADAS(先進運転支援システム)ももちろん最新世代となっており、アダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキはもとより、交差点内での対向車との衝突被害を軽減するインターセクションコリジョンアシスト、ドライバーの疲労や居眠り運転を検知するドライバーアテンションアラートなど、ワンランク上の安全装備を採用している。新世代の車載通信モジュール「テレマティックボックスモジュール」を全車に標準装備することで専用アプリと連動。車両停車位置から最終目的地までの徒歩経路を案内するラストマイルナビゲーション、オイル量やタイヤの空気圧など車両コンディションに異常があった場合に通知するヘルスアラート機能など、最新のコネクティビティも備えている。 アルファ ロメオのプラットフォームを採用しダウンサイジング2Lターボエンジンを搭載、なんて聞くと、往年のアメリカ車ファンは嘆くかもしれない。ハンドリングは舵のきかないデッドな部分はほぼなく、わずかな入力に対しての応答性は高まっているし、最新の8速ATとの組み合わせもあって、小気味よく走る。ただ、それでもやっぱりどこかにアメリカンSUVの味わいがある。グローバル化、そして電動化が進む中で、ブランドはいかに個性を維持し続けられるかが肝要となるだろう。
新型グランドチェロキーの発表に際し、生粋のジープガイであるステランティス・インドアジア太平洋地域、セールスマーケティングオペレーション上級副社長のビリー・ヘイズ氏と、このために来日していたジープのインテリアデザインを統括するチーフインテリアデザイナーのクリス・ベンジャミン氏がプレゼンテーションを行ったが、彼らの言葉の端々からはジープへの思いがビシビシと伝わってきた。それらがジープをジープたらしめるゆえんなのかもしれない。 文/藤野太一 写真/茂呂幸正、ステランティス ジャパン
先代のジープ グランドチェロキー(4代目)の中古車市場は?
2011年に登場した4代目はオフロード性能だけでなく、オンロードでの快適性やインテリアの質感が高められ、フラッグシップにふさわしい仕立てのSUVとなった。ジープで初めてエアサスペンションを採用するなど、新機能も積極的に導入している。ライバルの輸入車SUVより販売価格が抑えられていたこともあり、日本でも人気のモデルであった。また、オンロードの走りを向上させた“マッスルカー”SRT8などもラインナップしていた。
現在、中古車は300台以上が流通しており、車両価格も初期型なら100万円台から探すことができる。SRT8は30台前後が流通しているので、“アメ車”らしい大排気量モデルをお探しの方はこちらを検討してみてはいかがだろうか。 ジープ グランドチェロキー(4代目)の中古車を探す▼検索条件ジープ グランドチェロキー(4代目)× 全国文/編集部、写真/ステランティス ジャパン
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