東ホール3にあるマツダのブース。そこに展示されている2台のコンセプトカーが、今回の東京モーターショーのハイライトだ。デザイナーから魂動デザインの進化形は、どう見えるのか? 東京モーターショーで最も注目を集めるVision Coupe(ビジョン・クーペ)を取り上げる。
「7」がなくて6の次が8になっていた、難波治のデザインウォッチング 東京モーターショー編。7は、東京モーターショーで最も注目を集めるVision Coupe(ビジョン・クーペ)です。なぜ、最終回の後に7が出てくるか、というと……最後まで読んでいただければわかります。ーさて、マツダ・ビジョンクーペ、です。今回のショーのスターと言っていいでしょうね、これ。難波 はい。これはね、マツダがね、これまでに築いてきたものから、もうひとつ階段を登った、って感じかな。ブランドとしても、別にプレミアムブランドになろうとしているんじゃなくて、質感とか上質さとか美しさとか、そういうものを表現するブランドになろうという意志を、はっきりと見せた感じのショーカーですよね。この前のRXビジョン。あれのときから、ちょっとそういう兆しは見えていたんですけど、今回はこうやって4ドアセダンで自動車としてそれを表現しているところがハッキリと明確に、それを意図しているというか意識させて表現した感じがします。
難波 これまでじつはいくつかの明確なモチーフを使って、クルマの挙動みたいなものを視覚化させていたんですけど、今回は本当にボリュームの、造形ボリュームのバランスだけ、重心位置のバランスとか、そういうアーキテクチャーとして、クルマを魅せるような方向に変えてきていますから、やっぱり、これまでのMAZDA Designのもうひとつ高みをいこうとしてます。ブランドとして、その他の日本の自動車メーカー、量産の自動車メーカーとは一味違うブランドの会社になろうというような意識がすごく見えて、とっても綺麗に作られているし、バランスもいいし、いいクルマに仕上がっていますね。
難波 唯一、おかしいところ。それはですね。クルマをサイドビューで見たときに……あ、その前に、あのですね、マツダのその、どうしてこんなふうな上質なクルマに見えてるかっていうと、これね、全部、方程式に則ってるんです、ちゃんとクルマのデザインのセオリーに則っていて、たとえばAピラーの、Aピラーをずーっと延長していくと、フロントホイールの軸にいく、それからキャビンのリヤ周りのCピラー辺りの、キャビンとしての重心位置ね、それがちゃんと後ろのタイヤに乗るとか、それはクルマデザインのじつはまったくの基礎なんですよ。基本。それはね、やっぱり昔からのセオリーなのね。それから、フロントのタイヤが前に出てAピラーがちょっと後ろにひいて、要するに前のドアの見切り位置から、フロントのあのホイールアーチのとこまで面が長いじゃないですか。それは上級車の姿ですよね。ーボルボもそういうふうに説明していましたよね。難波 ちょうど車が後ろを向いてますけど、このアングル、リヤクォーターのアングルなんか、わりといいんですよ。でも、だんだんだんだんバランスが良くないところが見えてきますよ。
難波 ノーズが長過ぎ。ーああ。難波 ノーズ、長過ぎですよね。これがやっぱちょっと惜しいよね。たしかに、いままでのマツダらしさね、ボンネットの綺麗なノーズってマツダらしいんですけど、だから、否定はしないんですけど、純粋にそのバランスだけ言うと、ちょっと、崩れてる。でも、もしかしたら前田さんはあえてやっているかもしれない。「マツダはそこが違うんだ!」ってことをノーズのこのグリル、マツダグリルを象徴的に扱うために、あえてやっているというふうにしか思えない。ここまでわかってるから、多分あえてやってると思いますね。
ーでも、前回のRXビジョンよりは前が4ドアになったから短くなっていると思いますけど。難波 あ、僕が言ってるのはフロントオーバーハングですよ。フロントオーバーハングが長いってこと。カットされてたら、クルマのバランスとしてはもっと良くなってると思う。でも、それとブランドを示すっていうのは別次元の判断基準があるので、そこは多分あえてやったんだと。でも、本当に綺麗に作り込まれていて、面も上質だし。こういううふうに滲み出てくるみたいなものっていうんですか、面の表情から、こちらに何かを、心を訴えてくるようなデザインっていうのはなかなか簡単にはできなくて、なかなかいいと思いますよ。これは。で、ちゃんと伸びやかな部分と、きゅっと締まった部分と、両方あるんですよ。すごくダイナミックな部分とそれを締めるような部分と両方混ざってて、そのバランスがとってもいいので、かなりレベルの高いデザインだと言っていいんじゃないでしょうか。
ーこれから先のマツダ車のエッセンスがここにすべてある、って感じでしょうか。難波 それを明示していますね。フロントグリルからヘッドランプにつながるこういうカタチにしたじゃないですか。いままではフロントグリルはフロントグリルで、クロームの枠があって、そのクロームの枠が最近は目玉につながってたりしてたんですけど、今回からはあえてグリルとランプとひとつの塊にした姿にして、それは象徴的だし、じつにシンプルに強くマツダらしさを表現するアイテムになっていると思いますね。これはね、なかなかいい出来じゃないですか。まあ、この全幅、長さ、高さ、はどうやったって、カッコよくなるんですけど(笑)。でもね、ここまで質感も表現できて作り込みも綺麗だし、なかなかコンセプトカーのでき上がりとしてもいいと思いますね。内装もね、あまり威かしがないんですよ、このクルマ。クルマ全体で、ひとつ上の質感というかマツダが目指していきたい部分のところ、世界観をちゃんと表わしていると思う。あとさ、このブースがめっちゃカッコいいよね。うん。他のね、自動車メーカーとはまったく違う。だから、ブランドづくりをしっかりやっている。羨ましい! とっても羨ましい!
ーということで、フランクフルト・モーターショーに続いて、難波さんとショー会場を回ってきました。今回もフランクフルトに続いて、コンセプトカー・オブ・ザ・ショー!を決定したいと思います。ちなみに、フランクフルト・モーターショーでのコンセプトカー・オブ・ザ・ショー!は、KIAのPROCEEDコンセプトでした。
難波 はい。今回の東京モーターショーのベスト・コンセプトカーは、マツダのVision Coupeですね。次点が、スバルのVIZIV PERFORMANCE CONCEPT、スズキのe-SURVIVOR(イー・サバイバー)とします。編集長はどうですか?ーやはりマツダのVision Coupeですね、今回はもう、これでしょう。次点はスバルと三菱e-EVOLUTION CONCEPTを推します。カメラマン役として同行したN子さんはどうでしたか?N子 私も難波さんと同じです。マツダのコンセプトカー、完成度高いし、美しくて見ていて飽きなかったです。ということで、東京モーターショー2017のベスト・コンセプトカー!は全会一致でマツダのVision Coupeとなりました!東京モーターショーは5日まで開催しています。ぜひ、ご自分の眼でご確認ください!
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