スポーツカーは乗り心地の悪さと積載性の悪さで購入を諦める人もいるのではないだろうか? でもやっぱりスポーツカーに乗りたい!! そんな方のため、国産スポーツカー5台を「乗り心地・実用性能」に絞ってテストした。
※本稿は2023年2月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/平野学
初出:『ベストカー』2023年3月10日号
普段使いで一番いいのはシビック タイプR!? 国産スポーツカー5台の使い勝手比較
■硬い乗り心地のスポーツカーで一番快適なのは?
意外なのか順当なのか、乗り心地のよさNo.1車はZとなった
乗り心地は市街地を40~50km/hで走って確認した。スポーツモデルは高い速度域を基準にするため、街中では路上の細かなデコボコを乗員に伝えやすい。そのなかで一番快適だったのはフェアレディZだ。試乗車はバージョンSTで19インチタイヤを装着しており上下に揺すられたが、スポーツモデルでは快適な部類。
2位はスープラ。乗り心地は引き締まった印象で、タイヤが路上を細かく跳ねるような粗さを抑えた。足まわりは想定する速度域を高く設定して街中では硬く感じる。
3位は僅差でシビックタイプR。コンフォートモードを選ぶと、通常の走行では不満はないが、段差を乗り越える時に角の立ったショックを伝える。
4位はGR86で、乗り心地は単純に硬い。少しバタバタした振動を直接的に伝える。その代わりステアリング操作もダイレクト感が伴う。5位はN-ONE。安定しているが後席に座ると突き上げ感が気になる。
■日常使いにも見逃せない! 居住性チェック!
Zはスポーツカーでありながら乗降性と着座位置は悪くないと評した
前席居住性の1位はシビック。全高が1400mmを超える5ドアハッチバックだから、頭上には充分な空間があって乗降性もよい。タイプR専用のシートは、腰をしっかりと支えて長距離を移動する時でも疲れにくい。
2位はGR86。乗降性はよくないが、前席の体の支え方と座り心地は良好だ。3位は僅差でフェアレディZ。欠点は運転席の上下調節機能で、背もたれは動かず座面だけが上下する。
スポーツカーでは下げた状態で運転するユーザーも多く、背もたれが下がらないから、腰の支え方が少し甘くなる。着座位置の高さによって座り心地に影響を受ける。
4位はスープラ。前席の座り心地に不満はないが、サイドウィンドウの上下幅が狭めだ。シフトレバーが収まるセンターコンソールも高めに位置するから、全幅がワイドなわりに車内には圧迫感が伴う。
5位はN-ONE。空間効率は優れているが、現行型は前席がセパレートタイプになる。座り心地が硬めで、なおかつ座面の幅が狭く感じられるから、座り心地が少し窮屈になる。
■荷物もたくさん載せたい! 積載性チェック!
積載性の1位はシビックだ。荷室容量に余裕があり、リアゲートの開口部は広いから、荷物の収納もしやすい。後席を格納すれば、大きな荷物も積める。
2位はN-ONE。燃料タンクを前席の下に搭載したから、後席を格納すると大容量の荷室になる。後席の座面を持ち上げて、リアドアから背の高い荷物を積むことも可能だ。
3位はGR86。2ドアクーペだからトランクスペースの開口部は小さいが、後席の背もたれを前側に倒すと、荷室の床面を広げられる。
4位はフェアレディZ。荷室の床は底が浅いが、リアゲートは大きく開いて使いやすい。5位のスープラは、荷室は相応に深いが、開口部は狭めだ。
■車内を整頓! 収納設備チェック!
収納設備はN-ONEが1位。フタの付いた収納ボックスは少ないがトレイは豊富だ。シートバックポケットもあり、荷室下側も収納スペースになる。
2位はシビックで、5ドアハッチらしく基本的な収納設備は充実する。3位はGR86で、ひと通りの収納は行える。4位はスープラで、グローブボックスが薄型だ。5位は僅差でZ。収納設備が限られ、グローブボックスの幅は狭めだ。
■渡辺陽一郎が結論を出す
総合1位はシビックタイプRに! シビックの素質のよさが大きく評価された
総合1位はシビックタイプRだ。5ドアハッチだからファミリーカーの実用性も備わり、ベーシックなシビックの走りが本質的に優れるから、タイプRの推奨度も高まった。要は素性がよく、小回りの利きなど悪い機能もあるが、総合評価は高い。
2位はGR86。機敏な運転感覚を重視して乗り心地は硬めだが、後席が装着されるから、2名乗車時には手荷物を置ける。トランクスペースも使いやすく、クーペでは実用的だ。
3位はフェアレディZ。後席を備えない2ドアクーペだから、街中での使い勝手は低いが、動力性能、安定性、乗り心地はよい。生粋のスポーツカーで50年以上の歴史もあるから、中高年齢層のファンも多く、快適性にも配慮してさまざまなユーザーの期待に応えている。
4位はN-ONE。ノイズと乗り心地はもう少し洗練させたいが、後席を含めて居住性が優れ、軽自動車だから街中でも運転しやすい。5位はスープラ。走行性能は高いが、視界や取りまわし性はいまひとつだ。基本はBMW Z4と共通で、方向指示器レバーも左側に備わり、さまざまな機能が海外向けだ。
●総合ランキング
・1位:ホンダ シビックタイプR
・2位:トヨタ GR86
・3位:日産 フェアレディZ
・4位:ホンダ N-ONE RS
・5位:トヨタ GRスープラ
【番外コラム】永田恵一のナンバーワンは?
5位はGRスープラ。Aピラーの強烈な傾斜による厳しい乗降性で、ちょっとした外出で乗るのは躊躇してしまいそう。
3位は同率でZとN-ONE。理由は、Z/楽しさと実用性のバランスは良好だけど、やはり2シーターでは厳しい時がある。N-ONE/軽自動車なので実用性は文句ないが、凄く楽しいわけでもないわりに、約200万円は高いという差し引きだ。
GR86とタイプRの1位争いにおいて、それぞれの○と×を挙げると、GR86/○2+2のスポーツカーとしてスペース、ボディサイズ、楽しさの絶妙なバランス、×/MT+アイサイトの設定なし。タイプR/○スペースと乗りやすさ、×/全幅の広さと切れ角の少なさによる取り回しの悪さ。
ここはバランスのよさとATにはアイサイトが付くことを加味しGR86の勝ちとするが、より日常的な乗り味なのはBRZだ。
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