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ロータス・セブンの究極進化形 ドンカーブートF22へ試乗 リアルでソウルフル 前編

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ロータス・セブンの究極進化形 ドンカーブートF22へ試乗 リアルでソウルフル 前編

パワーウエイトレシオは675ps/t

このクルマは、どのカテゴリーに合致するのだろう。スーパーカーか、グランドツアラー・ロードスターか。とにかく、一般的な公道用モデルとは別次元にある。

【画像】ロータス・セブンの究極進化形 ドンカーブートF22 ケータハムとロータスMk6も 全126枚

バケットシートには、サベルト社製のハーネスが組まれている。希望すれば、シートにはヒーターも追加できるらしい。車重は750kgと軽量だが、全幅は1910mmとワイド。タイヤの接地面積は、フェラーリ430 スクーデリアに近い。

車重1t当たりの馬力、パワーウエイトレシオは675ps/t。ドンカーブートの技術者は、並外れた能力や気質を持つドライバーへ、完璧に応えられると主張する。乗り心地はしなやかで、長距離ツーリングにも好適だとも話す。

それでいてサーキットの走行会では、マクラーレン750 Sなどのスーパーカーを凌駕するラップタイムを繰り出すはず。荷室の容量はポルシェ911 GT3より広い反面、ブレーキにはレース仕様のアンチロック・システムが実装されている。

大きなリアウイングは備わらないが、路面がドライでセミスリックタイヤを履いていれば、加速時には2.15Gの勢いを体験できるとか。暴風雨にも対応するカーボンファイバー製のルーフは取り外しが可能で、小さく畳んで荷室へ収納できる。

シャシーやボディには、最先端の技術や材料が投じられている。しかし、設計の基本形は1957年へ遡る。ルーツは、昔のロンドンにある。

45年前にオランダでのセブンの権利を取得

上記のすべての条件が、1台のモデルへ当てはまるとは考えにくい。緻密な市場分析を経て、モデル開発が進められたわけでもない。それでも、少量生産でプライドの高いスポーツカーメーカーなら、実現できるようだ。

いくつかのカテゴリーを横断しているとしても、ドンカーブートF22は、並外れた仕上がりにあることは想像に難くない。ネザーランド(オランダ)人は仕事が丁寧だし、同社のモデルは高い完成度で知られている。

ジョープ・ドンカーブート氏が権利を取得し、ネザーランドでロータス・セブンの独自仕様を生産し始めたのが45年前。葉巻型ボディにタイヤの付いた、初代となるS7を発売して以来、更なる性能を求めて改良が続けられてきた。

最近は、海抜マイナス3mの場所にある同社のレリスタット工場で、半分狂気とも思えるようなマシンが作られている。AUTOCARでは2020年にドンカーブートD8 GTO-JD70へ試乗しているが、その時も度肝を抜かれた。

そして2023年、最新版となるF22が完成したという。ワークショップを尋ねると、シャシー番号001番の、ダークブルーのクルマが待っていた。天気予報は雨がちだという。パワーウエイトレシオの数字を思い出し、背筋がゾクゾクする。

同社が誇る最先端技術 エックスコア

数名のスタッフが、ポリッシャーで部品を研磨している。パイプフレームを溶接する部門では、青白い火花が絶え間なく飛び散っている。

半分組み上がったF22のシャシーには、真っ赤なヘッドが載った直列5気筒エンジンが収まっている。その横に、これから取り付けられるAPレーシング社製のブレーキキャリパーが整然と並ぶ。

ディフューザー類は、サスペンション・コイルと同様に美しく塗装済み。ワークショップでは同時に数台のF22が作られていたが、どれ1つとして同じカラー・コーディネートにない。チャコールグレーのカーボンファイバー製部品を除いて。

ある1台は伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナ氏のヘルメット・カラーをモチーフにしているのがわかる。別のクルマは、ガルフレーシングのブルーとオレンジ。文面ではちょっと派手に感じられるかもしれないが、いずれも魅力的に見える。

カーボン製シェルは、同社が誇る最先端技術でできている。エックスコアと呼ばれる、複合素材を用いた超高剛性構造の成形技法を生み出すまでに、10年を投じたという。

発泡フォームを充填させたカーボン素材を型にはめ、加熱させることで膨張し形状が整う。発泡フォームが固まると、強固なカーボン製の構造体が完成する。信じられないほど軽量でもあるとか。

最高出力507ps、最大トルク65.1kg-m

エックスコアのワークショップは、外からは見えない場所にある。F22の生産だけでなく、古いドンカーブートのレストアにも活用されている。彼らは、FIA世界耐久選手権(WEC)で活躍する、トヨタGR010用のエアロパーツも製造している。

とあるF1マシンの部品も請け負っているとか。様々な工業製品に活用できる、同社の水準の高さを示す技術といえ、収益基盤にもなっている。過去には経営的に厳しい時代もあったと、父から事業を引き継いだデニス・ドンカーブート氏は振り返る。

少しそれたが、話題をクルマへ戻そう。このF22は、エックスコアの開発費も影響して、決して安くない。英国価格は、25万2000ポンド(約4536万円)になる。それでも、生産予定の100台はすべて商談が進められているそうだ。

後継モデルの予定はない。1990年代後半から親密な協力関係にあったアウディから2.5L直列5気筒エンジンを購入し、F22のために100基が確保されている。だが、この傑作ユニットは廃盤となったため、ドンカーブートも入手できなくなった。

そのかわり、徹底的なチューニングが施されている。アウディRS3 パフォーマンス比で100psと14.2kg-m増しとなる、最高出力507ps、最大トルク65.1kg-mまで強化されている。

トランスミッションは5速マニュアルで、ジャガー・ランドローバー由来のリミテッドスリップ・デフを装備。勇ましいサイドエグゾーストを、メッシュ越しに眺められる。

この続きは後編にて。

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