今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は、メーカー系の「ワークスチューナー」が手がけたモデルを紹介する前編だ。
ワークスチューニング試乗会(2002年:前編)
TRD、ニスモ、マツダスピード、ラリーアート、STiのワークスチューナーと無限による最新チューンドカーの試乗会が、2002年も箱根で開催された。そのショートインプレ集を2回に分けてお届けするが、箱根は霧だらけの悪天候で、いずれのクルマも本来のパフォーマンスの一端しか垣間見られなかったことをお断りしておく。
【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?
ランサー エボリューションVII GT-A ラリーアートスポール
2ペダルのランサー エボリューション「GT-A」をベースに、乗り心地とハンドリングの高い次元での両立を狙い、高速からワインディングまでスポーツマインドあふれる走りを楽しめるセッティングとしたモデルだ。
MTのランサー エボリューションVIIと同じリアウイング(GT-Aではオプションとなっている)や、オリジナルのカーボンルックエアロミラーなどを装着しているが、ボディカラーが地味めなワインレッドなので遠目にはおとなしく見える。インテリアも、セディアワゴン用のカーボン調パネルを採用した以外はノーマルで、大人のチューンドカーといった雰囲気だ。
4段階調整式ダンパーの減衰力は何段目かチェックしなかったが、足まわりはかなり固めのセッティングだった。AT仕様なのだだら気楽に乗りたいと考えれば、もう少し乗り心地を重視してもいいのではと思われた。給排気系チューンの効果やブレーキは、残念ながら試乗条件が悪くて今回は試すまでには至らなかった。
無限 インテグラ タイプR
FF世界最速を目指したインテグラ タイプRを、スーパー耐久レースなどで活躍している無限が、実戦からフィードバックされたパーツを数多く採用して作り上げたチューンドモデル。
空力を徹底的に重視したというエアロパーツは、高速などでかなり効果が高そうだ。CFRP製のボンネットの重量はわずか5.6kgと、ものすごく軽い。室内もロールケージにフルバケットシート & フルハーネスと本格的で、リアシートに人が乗ることは考慮されていないスパルタンぶりだ。シートポジションはかなり低めで、見切りが悪いから市街地走行には向かない。メーターパネルは液晶モニター(参考商品)となっており、表示はアナログメーター風とデジタル表示の切り替え式で、カーナビの画面にも対応するというから、市販されれば面白そうなアイテムだ。
専用ECUによるエンジンチューンの効果は、試乗条件の関係で残念ながら体感できなかった。だが、インテグラ タイプRのオーナーだったら、予算と走り方に応じてパーツを選んで装着してみたいという気にさせるクルマだった。
TRD カローラランクス ストリートバージョンII
カローラのハッチバック バージョン、ランクスがベースだがフロントグリルとタイヤ&ホイールくらいしか換えていないから、ボディサイドの大きなTRDロゴのおかげで派手に見えるが、実際の外観は地味目だ。だがインテリアは、レッド/ブラックの2トーン バケットタイプシートやステアリングのおかげで目にも鮮やかだ。着座位置は、前述の無限 インテグラ タイプRほどではないがけっこう低めだ。
2ZZ-GEエンジンにはハイコンプピストンが組み込まれ、吸排気系もチューンされ、最高出力は20ps、最大トルクは20Nmもパワーアップされている。それに対応するよう足まわりも強化されている。エンジンのパワー差はすぐに体感できるほどではないが、低域からフレキシブルでトップエンドまで吹けも良く、サウンドもスポーティだ。クラッチも重くなく、街中での使用でも問題ない。足まわりとのバランスも悪くない。
だが、初期制動が強すぎるブレーキは、ハードブレーキング時に姿勢を乱しやすいので要注意だ。これさえ改善されれば、さりげなく速いホットハッチとして市街地でもワインディングでも楽しめそうだ。
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