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今だからこそ“最近のイイクルマ”を思い起こす──心に残っているクルマ達 2019-2020 Vol.1

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今だからこそ“最近のイイクルマ”を思い起こす──心に残っているクルマ達 2019-2020 Vol.1

クルマ趣味は我慢の今だからこそ、思い切り楽しめる時に備えておきたいもの。そこで、アフターコロナに改めて味わいたい、この1年で印象に残ったクルマ達を紹介。ひと時、ともに楽しい妄想の世界に浸っていただければと思う。

Right Light Media大排気量の自然吸気エンジンにMTのみ

“マニア”以外には2CVよりも好ましい訳──ココロに効くクルマに乗ろう VOL.12

今はクルマ趣味は我慢の時。トンネルの先に明るい光が見えてきたら、また思い切り楽しもう。

もちろん、その時のために想像、妄想を重ねておくのは自由。そんなわけで、ここでは私自身がこの1年の間に乗って強く印象に残った、アフターコロナに改めて味わいたいクルマ達を、新旧問わず紹介していく。ひと時、ともに楽しい妄想の世界に浸っていただければ嬉しい。

最初に挙げるのはポルシェ718スパイダーだ。2019年7月にスコットランドで行われた国際試乗会で、718ケイマンGT4をサーキットで、そしてこちらの718スパイダーを一般道で、それぞれ試すことができた。

2台は言うまでもなく従来のケイマンGT4、ボクスター スパイダーの後継に位置づけられる。718シリーズのエンジンが4気筒ターボ化されていたにも関わらず、こちらのエンジンは水平対向6気筒自然吸気ユニットを積み、しかも6速マニュアルギアボックスだけを組み合わせるということで、乗る前から期待は大きかった。内心、もし気に入ったら718ケイマンGT4を購入するつもりで試乗会に臨んだのである。

そもそも718シリーズがダウンサイジングターボを積んだのは、燃費向上、CO2排出量削減のためでは? 4.0リッターという大排気量の自然吸気は時代に逆行していない? という疑問へのエンジニアからの答は、「燃費計測方法がNEDCからWLTCに代わり、小排気量の過給エンジンは必ずしも有利じゃない」ということだった。それ自体は、やっぱりねというところだったが、感心したのはポルシェがそれを見越して、こうして新しい自然吸気エンジンを開発していたことである。

ちなみに先代のGT4/スパイダーのエンジンは、911カレラSから流用されたもので、悪くはないが特段スペシャルではなかったのは事実。それが今回は新開発とされていたのだから心を揺さぶった。シャシーも同様。先代と違って718スパイダーのそれは、718ケイマンGT4と共通化されている。実は、まさにこのモデルから718スパイダーも、開発がポルシェモータースポーツに移管されているのだ。

www.rockyphotography.de記憶に残るワンシーンもスパイダーだからこそ

実際、最初にサーキットで走らせた718ケイマンGT4は、硬質なタッチで一気に高回転域まで吹け上がるエンジンの刺激と、新採用の大型ディフューザーの恩恵による従来とはまるで別物のコントロール性を見せるシャシーで、思う存分楽しませてくれた。この時点で心のなかではコイツで決まりだなと思っていた。

しかし、続いて一般道で718スパイダーに乗ると、その爽快感、痛快さにノックアウトされてしまった。常に全開か全閉のサーキットより、ワインディングロードの方が高出力自然吸気エンジンの旨味であるレスポンス、ツキの良さをフルに味わうことができたし、剛性感たっぷりのシャシーがもたらすキレの良いフットワークは、紛れもなくGTモデルのそれ。しかも、そこには風と戯れて走る歓びすらも付随してくる。

考えてみれば自分のクルマでサーキットを走ることは滅多に無い。しかも、GTモデルのオープンモデルは、この時点では718スパイダーだけ。いっそこっちに……と、気持ちが傾いてきたのだ。

のちに追加された、同じエンジンをデチューンして搭載する718ケイマン&718ボクスターのGTSもいいのだが……。実は718スパイダーの試乗中、晴れやかだった空がみるみる真っ暗になり、大雨に降られたことがあった。スピードが出ていればいいが、ペースが落ちると雨粒が顔面に、室内に、どんどん入ってくる。結局、途中で諦めてクルマを停め、ペアを組んでいたENGINE誌の村上政編集長と一緒に車外に出て、面倒くさい手動のトップを閉めて戻ったのだった。さすがスコットランド。その直後に空は、何事もなかったかのように晴れだしたけれど!

Right Light Mediaワンタッチで開閉できる電動ソフトトップだったら、こんなことはエピソードにもならない。スパイダーだからこそ、単なる雨も記憶に残るワンシーンになったのだ。どうせ乗るなら、そういうクルマでしょう?

こうして718スパイダー、実は帰国後すぐにオーダーを入れたのだが、いざ発表されたら日本仕様はRHDしか用意されず、ドライビングポジションを考えて一旦購入を断念した。けれど、この自由に出掛けるのも憚られる生活の中で、またあの開放感が脳裏に甦ってきて、そして消え去ってくれないで居る。色々な意味で時が来たらば、ゼヒまた走らせてみたいと願う筆頭の1台が、この718スパイダーなのだ。

PROFILE
島下泰久
1972年生まれ、神奈川県出身のモータージャーナリスト。走行性能はもちろん、先進技術やブランド論などクルマにまつわる事すべてが守備範囲。著書に「間違いだらけのクルマ選び」などがある。

文・島下泰久 編集・iconic

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みんなのコメント

5件
  • いつか、こういう車に乗ってワインディングロードやサーキット走行会に参加してみたい。
  • 走って止まって曲がれればなんでもいい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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