初回 欧州各国で売れ行き好調
長期テストでは、担当したクルマをプライベートでも使う。筆者の妻は、そのたびに変わるクルマへ普段は無関心だ。しかし、純EVのフィアット500eの担当になったと伝えた時は、珍しくとても喜んでいた。
【画像】電動になったフィアット500e カブリオレとライバルのミニ・エレクトリックも 全86枚
その反応は、レトロでモダンな500eが放つ魅力を物語っている。英国では、販売がスタートしてから1年が経過するが、購買層は幅広い。
特定の世代や性別に関係なく、欧州各国で良く売れているという。しばしば、販売台数の上位へランクインするほど。内燃エンジン版のィアット500も並行して販売されていることを考えると、500eの人気は当面続くだろう。
わたしは、個人的にガソリンエンジンで走る500を所有している。共通することと違うことも、確かめやすい。
純EVの500eは、駆動用バッテリーを効率的に搭載できる、まったく新しいプラットフォームで成り立っている。ボディサイズは、内燃エンジン版と比べて僅かに大きい。
長期テスト車のボディスタイルは、通常のハッチバック。ほかに、ピラーを残してルーフ部分が後方へ開く、ランドレー風のカブリオレもある。
スタイリングは、これまでの500らしさを残している。同時に、ファッション性がますます求められるようになったコンパクトカー・セグメントに属するだけあって、随所に施されたモダンな処理も好ましい。
42kWhのバッテリーに120psのモーター
ボディサイズは、ホンダeやミニ・エレクトリックと同等。それでいて、駆動用バッテリーはオプションの42kWhが載っているから、プジョーe-208に並ぶ容量といえる。通常の24kWhより、充電回数は少なくて済む。
駆動用モーターは120ps。この馬力は、筆者が所有する内燃エンジン版500の倍近い。
トリムグレードはアイコンという名前で、英国では真ん中。リモートキーが付き、ドアハンドルは電子式になり、上級感がある。インテリアも、内燃エンジン版より質感が高められた印象。素材は良いし、ディティールにも気が配られている。
ダッシュボードはシンプルになったものの、実際に押せるハードボタンが残されている点もプラス。ドアポケットの内側には、Made in Torinoというエンボス加工も施されている。かわいいイラストとともに。
メーターパネルはモニター式で見やすい。インフォテインメント用に10.5インチのタッチモニターが据えられ、このクラスとしては優秀といえるほど、グラフィックが高精細で反応も素早い。
余分な空間を巧みに利用し、小物入れの数も多い。コンパクトなボディサイズが故に、車内空間は限られているからありがたい。充電ケーブルをしまう場所も、ちゃんと考えられている。
交差点で周囲を置き去りにできる加速力
装備されたオプションは少数。高額なものとしては、600ポンド(約9万6000円)のグレイシャー・ブルー塗装と、500ポンド(約8万円)の17インチ・アルミホイールという2つ。
ヒーター内臓のフロントガラスとフロントシートを得られる、ウインターパックが450ポンド(約7万2000円)。ワイヤレス・スマートフォン充電機能は、130ポンド(約2万円)だ。
アップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応するから、スマホの充電機能は有用だと思う。まだ選べない上級モデルも少なくない。
アイコン・グレードの500eの場合、パーキングセンサーが付いている。小さなボディだから視認性は良く、リアカメラがなくても大きく困ることはないだろう。
着座位置は高めだが、フロアに駆動用バッテリーが敷き詰められたスケートボード構造だということを考えれば、抑え気味。内燃エンジン版の500と、目立つほどの違いはない。
フィアット500eの第一印象は、かなり良い。50km/hくらいまでの加速はとても鋭く、交差点では周囲を置き去りにできる。
高速道路の速度域まで、活発な加速力は継続する。110km/hでの走行が航続距離にどう影響を与えるのかは、これから確かめてみたい。途中で充電が必要になるような、長距離旅行も考えている。
シートは快適。身長180cmの筆者にも不満のない空間がある。乗り心地は硬めだが、市街地メインでの通勤に使い勝手は良さそうだ。
慣れが必要な回生ブレーキの効き
当初、しっくり来なかったのが回生ブレーキの効き。ノーマル・モードではかなり弱く、レンジとシェルパ・モードでは途端に強力になる。ワンペダル・ドライブも可能なほど。
低速域になるほど効きが強まるため、交差点などでは意図した位置より手前側で止まってしまうように感じる。減速感が一定ではなく、駐車時などでクルマを滑らかに動かすには、少し慣れが必要だろう。
乗り始めて間もないフィアット500eだが、別の企画で持ち出された時は、運転できずに少し残念に感じた。それだけ早速気に入っているということだから、出だしは順調といえそうだ。
セカンドオピニオン
フィアット500eには、24kWhの駆動用バッテリー版もある。こちらは、冬場は主に市街地での移動にしか使えないだろう。42kWhの大容量が、ありがたいと感じるはず。
わたしがケンブリッジ周辺を運転した時は、とても楽しいと感じた。500eの魅力には、多くの人が惹き込まれてしまうようだ。 Piers Ward(ピアス・ワード)
テストデータ
価格
モデル名:フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
新車価格:2万8495ポンド(約455万円)
テスト車の価格:3万175ポンド(約482万円)
オプション装備
グレイシャー・ブルー:600ポンド(約9万6000円)
17インチ・アルミホイール:500ポンド(約8万円)
ウインター・パッケージ:450ポンド(約7万2000円)
ワイヤレス・スマートフォン充電機能:130ポンド(約2万円)
テストの記録
航続距離:320km(WLTP値)
故障:なし
出費:なし
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