■もくじ
どんなクルマ?
ーアヴェンタドールSの脅威
ーウラカン・ペルフォルマンテのしたたかさ
どんな感じ?
ーアヴェンタドールS サーキット試乗
ーウラカン・ペルフォルマンテ サーキット試乗
「買い」か?
ーアヴェンタドールS/ウラカン・ペルフォルマンテ どっち?
■どんなクルマ?
アヴェンタドールSの脅威
富士スピードウェイでランボルギーニの国際ワンメイクレース、スーパートロフェオが開かれた日の翌日、そのフルコースのピットには、今日の同社を代表する2種類のミドエンジンスポーツカーが3台ずつ並べられていた。12気筒のアヴェンタドールSと、10気筒のウラカン・ペルフォルマンテである。
去年、アヴェンタドールからアヴェンタドールSに進化したランボルギーニのフラッグシップは、今や世のスーパースポーツのなかでもレアな自然吸気6.5ℓV12エンジンのパワーを700psから740psに増強して、パフォーマンスの更なるアップを図った。
結果としてアヴェンタドールSは、7段シングルクラッチ2ペダルトランスミッションを介して0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速8.8秒、0-300km/h加速24.2秒、最高速350km/hオーバーという、驚異的なパフォーマンスデータを公表するに至っている。
と同時に、ノーズをはじめとするボディスタイリングや、カーボンモノコックの前後にアルミのサブフレームを備えるシャシーも手が入れられたが、なかでも特記すべきは4WS=4輪ステアシステムの採用だ。
それは、後輪を低速では逆位相に切って俊敏性を高め、高速では同位相にステアして安定性を高める、というもの。ちなみに駆動系は4WDである。
一方のV10モデルはウラカン・ペルフォルマンテ。
ウラカン・ペルフォルマンテのしたたかさ
去年の10月、ウラカン・ペルフォルマンテはニュルブルクリンク北コースで6分52秒01という驚異的なラップタイムをマーク、ポルシェ918スパイダーの記録を5秒も短縮して世界最速の市販ロードカーの座に着いた注目のモデルで、これも4WDだ。
5.2ℓV10自然吸気エンジンはノーマルのウラカンに対して30spと4.1kg-mが上乗せされて640psと61.2kg-mを発生、逆に車重は40kg軽量化されて1382kgしかなく、それを7段ツインクラッチギアボックスで引っ張るパフォーマンスは0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速8.9秒、最高速325km/h以上と、アヴェンタドールSに肉薄する勢い。
それに対応してサスペンションやブレーキも徹底して強化されているが、それにも増して凄いのが、ランボルギーニが独自開発した空力デバイス、ALAの存在である。
これがONになるとボディ内を気流がスムーズに流れて抵抗を減少、高速での加速やトップスピードを目に見えて上昇させる一方で、これがOFFになるとボディそのものやリアのウイングが強烈なダウンフォースを発生して、ブレーキング時やコーナリング時にボディを路面に押し付ける。
さらにリアのエンジンフード内のALAは、コーナリング中の内輪にダウンフォースを与えるエアロベクタリングの作用もする。
しかもそれらは状況に応じてクルマがすべてON/OFFをするので、ドライバーが操作する必要は一切ないという優れた代物である。
■どんな感じ?
アヴェンタドールS サーキット試乗
最初はアヴェンタドールSに乗り込み、インストラクターの同型車に2台が追走する。
今年の春にヴァレンシアのサーキットで経験しているクルマだが、4WSの採用もおそらく効果を発揮して高速域での安定感は充分、V12自然吸気エンジンの醍醐味を存分に味わえる。
当方より前に乗った同業者から、ストレート終わりでフルブレーキングしたときの姿勢がシビアだったという報告を聞いていたので、走り出した直後はマイルドなブレーキングを心掛けた。そうしたらアヴェンタドールSは、そこでも安定した挙動をキープしていた。
実はアヴェンタドールSには最後にもう一回、乗ることができた。その際には、最初に乗ったときよりクルマにもコースにも慣れていたので、よりリラックスしてドライビングを愉しむことができた。
その結果、例えば最終コーナーでは意図的なスロットルオフによって軽いテールスライドを誘発することができるなど、この巨大なV12ミドエンジンスーパースポーツが意外とコントロールし易いことも実感できた。
続いては韋駄天、ウラカン・ペルフォルマンテのコクピットに収まる。
ウラカン・ペルフォルマンテ サーキット試乗
これも3カ月ほど前にイタリアのイモラサーキットで試乗、その速さと安定した挙動に感激したものだったが、果たして日本のサーキットで走っての印象はどうだったか?
走行モードANIMAは基本的に「コルサ」を選択したが、ひと言で表現すればペルフォルマンテは、ニュルブルクリンク最速のロードカーの期待に違わず、FSWでも素晴らしく速く、コントローラブルで、しかも官能的なドライビングを披露してくれたといえる。
自然吸気V10は、アヴェンタドールSのV12に遜色ない鋭さで回転を上げ、1400kgに満たない軽量ボディをグイグイ引っ張り上げていくし、その際に背中の後ろで奏でられるサウンドも、艶っぽさではV12に一歩を譲るものの、素晴らしい快音なのは間違いない。
とはいえペルフォルマンテの真骨頂は、やはりそのコーナリングにあった。アヴェンタドールSよりひと回りコンパクトかつ軽量であるがゆえに、身のこなしは一段とシャープで、スロットルとステアリングの操作に瞬時に反応して、コーナリングの態勢に移る。
コーナリングもしくはブレーキング中には、固めた脚とピレリPゼロコルサによるメカニカルグリップに、OFF状態のALAがもたらすダウンフォースが上乗せされて、路面を舐めるような鮮烈なロードホールディングをドライバーに実感させながら、コーナーの連続をハイペースで駆け抜けていく。
その一方、FSWの特徴である長いストレートでは、ONになったALAの効果で後半のスピードの伸びが素晴らしく、グランドスタンド終わり近いパナソニックゲートのあたりでブレーキングを開始する直前、デジタルメーターの数字が275を超えるのを確認した。
最後にひとつつけ加えておくと、ペルフォルマンテ、今回はサーキットのみの走行だったが、イタリアの試乗会ではイモラ郊外の公道も走る機会があった。そこでは、エンジンの柔軟性や乗り心地を含んで、一般道でもまったく無理なく使えたことを明記しておこう。
■「買い」か?
アヴェンタドールS/ウラカン・ペルフォルマンテ どっち?
さて今回FSWで乗った2台の最新ランボルギーニだが、いずれも税込みでアヴェンタドールSが44,904,433円、ウラカン・ペルフォルマンテが34,169,904円、というプライスタグがついている。つまり「買い」とはいっても、購買層は極めて限られるわけだ。
それでも敢えてひとつの結論をいえば、スーパースポーツのエンジンはやっぱり12気筒で、しかもそれがミドシップに収められていなければならないという、ミウラ以来のランボルギーニのフラッグシップスタイルに拘る御仁には、アヴェンタドールSが随一のチョイスなのは言うまでもない。
一方、エンジンの気筒数には特に拘らないけれども、ワインディングロードやクローズドサーキットでシャープなドライビングを心からエンジョイできるスーパースポーツが欲しい、という腕っこきのスポーツカー遣いには、ニュルブルクリンク市販車記録ホルダー、ペルフォルマンテが「買い」だろうと思う。
いずれも途方もなく速く、しかし意外なほどドライビングし易く、しかも快適でもある。ただしこの2台、クルマの持つ雰囲気やオーラの種類が、微妙に異なる。強いていえば、ランボルギーニの新しい息吹を感じさせるのはペルフォルマンテの方、だといえようか。
ランボルギーニ・アヴェンタドールS
■価格 44,904,433円
■全長×全幅×全高 4797×2030×1136mm
■最高速度 350km/h
■0-100km/h加速 2.9秒
■燃費 5.9km/ℓ
■CO2排出量 394g/km
■乾燥重量 1575kg
■エンジン V型12気筒6498cc
■最高出力 740ps/8400rpm
■最大トルク 70.4kg-m/5500rpm
■ギアボックス 7速シングルクラッチ
ランボルギーニ・アヴェンタドールS
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