7月2~3日にアメリカ・オハイオ州のミド・オハイオ・スポーツカーコースで開催されたNTTインディカー・シリーズ第9戦。決勝レースは、4番手スタートのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)が逆転優勝を飾った。
パロウは、1度目のピットインを終えたタイミングで首位浮上に成功し、ソフト寄りのオルタネートタイヤを駆使して抜群のレースペースを披露。以降は、2番手を走るチームメイトのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)との差をコントロールしながら、そのままトップチェッカー受けた。
ランキングトップのパロウが3連勝【順位結果】インディカー第9戦ミド・オハイオ決勝
第5戦GMRグランプリで優勝し、第6戦インディアナポリス500マイルレースでポールポジションを獲得したパロウ。さらに続くデトロイトGPで今季2勝目を挙げると、その翌週のロードアメリカでも優勝。そして今回、ミド・オハイオでも勝利を挙げ3連勝、シーズン4勝目を記録した。
今回の勝利により、パロウが持つチャンピオンシップのリードは110ポイントとなり、実に2レースでの勝利分以上にまで広がった。ポイントランキング2位でミド・オハイオ入りしていたマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)は、1周目のアクシデントでマシンを破損しリタイア。ランキングは4位にまで後退した。
その結果、ランキング2位の座には今回のレースで2位フィニッシュを果たしたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が、ランキング3位のジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)を逆転して浮上している。
インディカー・シリーズでの3連勝は非常に珍しいものだ。いちばん最近の3連勝といえば、2020年にディクソンが記録した開幕戦からの3連勝だ。そして、3連勝を記録したディクソンは、その年のシーズンのチャンピオンとなった。
また、2020年のディクソン同様、2016年に3連勝を記録したシモン・パジェノー(当時はチーム・ペンスキー)も、その年のチャンピオンとなっている。そのため、シーズンの折り返し点である第9戦で今回シーズン4勝目を挙げたパロウは、2023年のチャンピオン獲得に大きく近づいた感さえあると言える。
予選4番手だったパロウは、セオリーとは違うプライマリータイヤでのスタートを選択。彼より前のグリッドからスタートしたカイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポーツ)をパスし、序盤にトップ争いを演じていたコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)とグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、1回目のピットストップで抜き去った。
もちろん、この首位浮上はピットクルーの作業スピードも貢献してのことだろうが、トップ2台より1周遅くピットに向かったパロウは、インラップとアウトラップを思い切りプッシュしてこの"オーバーカット"を成功させたのだ。
「クリーンエアで走るために、プライマリータイヤでスタートしたんだ。オルタネートタイヤ勢よりも長く走ることで彼らの前に出たいと考えていて、それを実現できた」とパロウはレースを振り返った。
「(第1スティントで)カークウッドをパスできたことが大きかったと思う。あの時点で彼のペースは落ちてきていたから、そのまま彼の後ろを走り続けていたら、トップ2のハータとレイホールに逃げられて、ピットストップでトップに出ることができなくなっていただろう」と、パロウはレースのターニングポイントが序盤にあったと語った。
「こんなに何もかもがうまくいくことなんて、自分のこれまでのキャリアでもなかったことだ。カート時代に連勝したことはあったが、5戦中3勝、ましてやビッグレースでの3連勝は初めてのことだ。今が自分のレースキャリアで最高の瞬間ということだと思う」とパロウは喜んでいた。
■表彰台フィニッシュを飾ったふたりのベテラン
5.0242秒の差で2位となったディクソンは、「今日は幾つか残念な点があった。最初のピットストップで燃料補給のトラブルがあったんだ。もしそれがなければ、ハータの前に出てパロウと勝負ができていたかもしれない」と語った。
若きチームメイトについては、「今のパロウはあらゆる面で強くなったと言える。予選では確実に速いし、レースでのペースも同様。さらに作戦面も万全だ。チームクルーたちも含め、パッケージが本当に強力になっているんだ」
「レースで強いというのは、常にとても多くの要素が絡み合って実現されるが、今の彼のようにスピードを備えていることは、とても大きな意味を持つ。今日の彼は4番手スタートだったが、予選で彼より速かった3人より前でフィニッシュした。それは彼が本当に素晴らしい仕事をやり切ったからだ」と称賛する。
しかし、ランキング2位となったディクソンはまだタイトルを諦めていない様子で、「何だって起こり得る。それがインディカーのチャンピオンシップだ。完全にアウトになるまでまだ望みはある。それはもう何度も見て来たことだ。だから自分たちは全力でプッシュし続ける」と、自身7度目のタイトルにかける意欲を語った。
そして、ディクソンに続く3位となったのはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だ。7番手スタートから着々と挽回し表彰台に到達したパワーは、「今日はこれが精一杯だった。自分たちは速かったし、堅実に戦い切った。ミスはなかった。スタートで順位を上げることができていたら……とも思うが、今日はパロウが本当に速かった」と話した。
「我々全員の目標はパロウを倒すことだ。しかし、それを本当に果たすことはできるのか……。タイトル争いで彼を下すのは、我々にとって非常に難しいチャレンジとなりそうだ。彼はあらゆる点でトップにある。フューエルセーブでもタイヤの摩耗管理でも、イン&アウトラップも、予選も……全部良いのだから」と、もはやお手上げ状態であることを吐露するパワー。
今回のレースを終え、パワーのポイントランキングは151点差の7位。パロウが4勝しているのに対し、パワーはいまだ勝利がない。
2戦連続のポールポジションスタートとなったハータは、2回目のピットストップに飛び込むところでピットレーン速度違反を冒し、ドライブスルーペナルティを受けて勝機を失った。また、2番手スタートのレイホールは1回目のピットストップで燃料補給、2回目はタイヤ交換で時間を要し、7位でのフィニッシュが精一杯となった。
今回のふたりは、マシンとドライバーともにそれ以上のリザルトを得る力が備わっていたように見えていたが、ピットタイミングで起きたミスによって、優勝はおろか表彰台さえも失ってしまった。
次戦第10戦は、カナダのトロント市街地で7月15~16日に行われる。昨年のレースはディクソンが優勝し、パロウは6位だったが、バンピーでリスキーなストリートコースでパロウはどんな走りを見せるのか。
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