2023年11月、いよいよ「ラリージャパン2023」が開催される。だいたいの場合、ラリーカーのベースとなるのは我々も購入できる「市販車」だ。そこで少し気が早いかもしれないが、ラリージャパン日本勢の好成績を祈りつつ、今乗りたい「WRカー世代&ラリー1世代」のベース車をチョイスした!!
※本稿は2023年8月のものです
文/伊達軍曹、写真/ベストカー編集部、トヨタ、三菱自動車、スズキ、SUBARU、BMW、FavCars.com
初出:『ベストカー』2023年9月10日号
インプレッサにランエボ……乗れば気持ちはWRC!! ラリージャパン2023開催前の今こそ乗りたい「WRカーベース車」12選
■心頭滅却すればWRカーも市販車と同じに見える!?
「ガワも中身もベース車とはかけ離れている」ということもままあるが、「同じ」ではないにせよ「ベース車である」という事実は変わらない
市販車に近い成り立ちだったグループA時代と違い、1997年から2021年の「ワールドラリーカー(WRカー)」と、2022年以降の「ラリー1」規定に基づいて作られたラリーカーは、市販車とはまったく別物だと言える。
例えばWRカー規定ではエンジンもトランスミッションも別のモノに置き換えることができ、大きなオーバーフェンダーなども追加できるほか、そもそもの駆動方式をFFから4WDに変えることすらできる。
そうして出来上がったWRカーを「市販のベース車とおおむね同じである!」と認識するには無理があるわけだが、世の中には「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉もある。
集中力をもって、例えば市販されたヴィッツGRMNを眺めていれば、いつしかそれは「ヤリスWRCに近い何か」に見えてくるものだ。
仮に見えなかったとしても、それらベース車が「一般的なモデルと比べて遥かに硬派で、遥かに運転が楽しい一台」であることに変わりはない。ここはぜひとも心頭を滅却しつつ、WRカー世代のベース車に乗るべきであろう。
■近年大活躍中のヤリス!!
・ヤリスWRC気分で……トヨタ ヴィッツGRMNに乗る
ヴィッツGRMNの発売時新車価格は400万円。1.8Lの直4エンジンにスーパーチャージャーの組み合わせだが、四輪駆動ではなくFF
1997年からWRCに参戦したWRカー「ヤリスWRC」のノウハウが投入された、2018年4月に150台のみ販売された限定車。
とはいえこれの中古車は残念ながら現在まったく流通していないため、ヤリスWRCの気分を味わいたい場合は、2013年9月に200台限定で発売された1.5Lターボの「GRMNターボ」を探すべし。
・中古車相場:200万~280万円(GRMNターボ)
・諸元(GRMN):全長3975×全幅1695×全高1510mm、1140kg、1.8L直4 スーパーチャージャー(212ps/25.5kgm)
・GRヤリス ラリー1気分で……トヨタ GRヤリスに乗る!
トヨタGRヤリス。ラリー等の競技ベース車として「RC」も用意されている
ボディ構造は異なるが、いちおう2022年からのワークスマシンである「トヨタ GRヤリス ラリー1」のベース車。1.5L直3+CVTの「RS」はさておき、通常の「RZ」であれば、わざわざGRMNヤリスを選ばずとも、ほぼ「素」の状態でラリー競技に出場可能なほどの潜在能力を堪能できる。
・新車価格:396.0万~456.0万円
・中古車相場:360万~630万円
・諸元(RZ):全長3995×全幅1805×全高1455mm、1280kg、1.6L直3ターボ(272ps/37.7kgm)
■グループA車両で闘い続けたランエボ軍団に乗る!!
・ランサーエボリューションIV
ランサーエボリューションIV。ベース車のフルモデルチェンジにより2世代目となり、ランエボの象徴ともいえる「AYC」が初搭載された
・中古車相場:200万~350万円
・諸元:全長4330×全幅1690×全高1415mm、1350kg、2L直4ターボ(280ps/36.0kgm)
・ランサーエボリューションV
ランサーエボリューションV。3ナンバーサイズへと進化し、よりWRカーのイメージに近づく迫力満点なスタイリングに!
・中古車相場:350万~640万円
・諸元:全長4350×全幅1770×全高1415mm、1360kg、2L直4ターボ(280ps/38.0kgm)
・ランサーエボリューションVI
ランサーエボリューションVI。写真はマキネン4連覇を記念したモデル「トミー・マキネン エディション」。
・中古車相場:250万~700万円
・諸元:全長4350×全幅1770×全高1415mm、1360kg、2L直4ターボ(280ps/38.0kgm)
1997年シーズンからライバルたちはWRカーへと移行していったが、三菱はグループAのランエボIVで参戦を続行。そしてトミ・マキネンが見事4勝を挙げてドライバーズチャンピオンの座を守った。
翌1998年もランエボVのグループAマシンで戦い、1999年は同VIのグループAマシンでマキネンが4連覇を果たすという偉業を達成した。改造範囲の広いWRカー相手に勝利したランエボIV~VIに対してはリスペクトの念しか沸いてこない!
■インプレッサWRX STIに乗る!!
・インプレッサ 22B-STiバージョン
スバル インプレッサ 22B-STiバージョン。専用のワイドボディを纏ったオーラはWRカーに限りなく近い
WRCで3連覇を達成した「インプレッサWRC 97」のイメージを再現したロードモデル。2212ccにボアアップされたEJ22改エンジンは最高出力こそあえて280psにとどめたが、7900rpmまでストレスなく吹けあがる特性を実現。
足回りはWRカー同様に専用チューンのビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリングを採用した。限定400台のため中古車はほぼ出てこないが、たまに出てくる時は1000万から1500万円ほどの値が付いている。
・中古車相場:1000万~1500万円
・諸元:全長4365×全幅1770×全高1390mm、1270kg、2.2L水平対向4ターボ(280ps/37.0kgm)
・インプレッサ WRX STI(2代目)
2代目スバル インプレッサWRX STI。WRCのドライバーズチャンピオンを記念した「Vリミテッド」など、WRCにまつわる限定モデルも存在
2001年からスバルは2代目WRX STIをベースとするWRカーで参戦。
初年度はメカニカルトラブルに悩んだもののリチャード・バーンズがドライバーズタイトルを獲得し、2003年シーズンには市販車のフェイスリフト(写真上)に基づくインプレッサWRC2003を投入した。その息吹を今、330万円前後の市販中古車で感じたい!
・中古車相場:120万~690万円
・諸元:全長4415×全幅1740×全高1425mm、1460kg、2L水平対向4ターボ(280ps/43.0kgm)
・インプレッサ WRX STI(3代目)
3代目スバル インプレッサWRX STI。モータースポーツベース車の「スペックC」も設定
来日するたびに「次のインプレッサは前後オーバーハングをゼロにしてくれ!」と言っていたペター・ソルベルク選手。
その声に応え(?)、2008年シーズンの「インプレッサWRC2008」は5ドアハッチバックとなったGRB型WRX(写真上)がベースに。結果としてワークス最終年となった、ある意味メモリアルなベース車だ。
・中古車相場:70万~360万円
・諸元:全長4415×全幅1795×全高1470mm、1480kg、2L水平対向4ターボ(308ps/43.0kgm)
■カジュアルにWRカーの香りを楽しめる4台!!
・スズキ スイフトスポーツ(ZC31S)
スズキ スイフトスポーツ。遺伝子を感じることができる最も手軽な存在と言えるかも
スズキは初代スイフトをベースとする「イグニス スーパー1600」でJWRCに参戦。3年目で王者に君臨した。その後の市販版スイスポはイグニス スーパー1600と直接の関係こそないが、血肉を分けた“親戚”ではある。
・スズキ SX4
スズキ SX4。日本において市販車のイメージは比較的地味だったが、実はWRカーとして活躍していた
イグニス スーパー1600でJWRCを制したスズキは、2008シーズンにWRカーでもってWRCに参戦。その時のマシンが「SX4 WRC」だ。地味な市販版SX4にもこれの“血”が流れていると思うと、胸アツである。
・ミニ クロスオーバー ジョンクーパーワークス
ミニ クロスオーバーJCW。ミニと言えばの3ドアと比較するとボディは大きいが、ワークスはクロスオーバー(海外名:カントリーマン)でWRCに出場
「おしゃれの権化」と思われがちなミニだが、そもそも元祖ミニはモンテカルロラリーで活躍しており、ミニ クロスオーバーのWRカーも、2011年から2012年にかけてBMWワークスとしてWRCにスポット参戦した。
・プジョー 206 RC
プジョー 206 RC。日本でも好評だった206のホットハッチモデルで、ほかにホモロゲモデルで日本50台限定の「206GT」も存在
2016年から3年連続でマニュファクチャラータイトルを獲得した「プジョー206 WRC」は、市販版の206とは似ても似つかぬWRカーだが、2L+5MT+3ドアの「206RC」だけは、WRCの香りがほのかに感じられる。
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