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ステアリングを握れば瞬時にわかる「ゴルフGTI」が世界のベンチマークになり得た理由

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ステアリングを握れば瞬時にわかる「ゴルフGTI」が世界のベンチマークになり得た理由

1974年に初代モデルが登場以来8代目となった現在もコンパクトハッチバック車の世界的なスタンダードで在り続けているゴルフ。その派生モデルも多くあるが、中でもスポーティなGTIは、ホットハッチのマイルストーンとして、いまも輝き続けている。

ホットハッチのスタンダードとして世界中のメーカーが目指す存在へ

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70年代から80年代にかけて大活躍した、スウェーデン出身の元アルペンスキー選手にインゲマル・ステンマルク(以下、敬称略)という男がいる。アルペンスキー・ワールドカップで通算86勝は歴代第1位。アルペン競技界において史上最強にして不世出の「20世紀を代表する選手」と、最上級の形容を与えられたほどの名スラローマーである。彼と同年代で、80年代の日本のスキーブームを牽引したプロスキーヤー、海和俊宏氏も「異次元の速さだった」と言う。多くの選手が打倒ステンマルクを目指し、切磋琢磨した。だが、「ステンマルクに次いでの2位は優勝にも匹敵する」とまで言われるほどの強さであり、誰もがそれを認めざるを得なかったそうだ。

当然のようにステンマルクの存在が世界のアルペン界の活性化に、大きく寄与した。マテリアルの進化はもちろん、スキーがレジャー産業の中で大きく注目される一因にもなった。そうした盛り上がりは日本でも同じ。来日した際、個人的にも親交のあった海和氏をお忍びで尋ねたときに、大騒ぎになったこともあった。一時代を作ると言うことは、まさしく世界を動かすことになるのだ。

フォルクスワーゲンのゴルフGTIのステアリングを握りながら、ふとそんなことが頭に浮かんだのである。さらには「もしジョルジェット・ジウジアーロがゴルフのデザインを担当することがなかったら……」。そんな仮定の話まで、よぎる。最善の機能美を実現したゴルフが、果たして他のパッケージングやデザインを与えられても、こうして生き続けることが出来たのだろうか? GTIのような魅力的な個性が登場しただろうか? さらに「GTIクラス」などと言うセグメントはどうなっていただろうか? 色んな思いが次々に浮かんでは消え、消えては浮かんでくる。

世界基準となる、よく出来たベースモデルのエンジンやサスペンションをチューニングしたスポーツモデル。その完成度の高さから「ホットハッチ」などとも呼ばれ、これまた世界的な人気車となって「GTIクラス」というカテゴリーまで成立させてしまったのが、ゴルフGTIだ。登場以来、ゴルフはコンパクトハッチバックとしてだけでなく、ホットハッチのスタンダードとして世界中のメーカーが目指す存在ともなった。

そして今、目の前には最新のGTIがある。相も変わらずのさりげなさである。これ見よがしのハデハデさやスポーツモデルにありがちな、押しの強さや演出過多がない。実はこれもゴルフGTIの大きな魅力。少しだけ主張している部分があるとすれば強烈なストッピングパワーを発揮する赤いブレーキキャリパーがホイールの隙間から見えているところぐらいだろう。

だがひとたび走り出せば、ノーマルとの違い、さらにはライバルとの違いを瞬時に理解させてくれる。いや、正直に言えば剛性感の高さが分かるほどずしりとした手応えのあるドアを開けただけでも、GTIがもつ特別感をたっぷりと味わうことが出来る。おまけに初代GTIから受け継がれたチェック柄のシートが現れると、気分は最高潮なのである。シートバックは両サイドが高く、いかにもホールド性は高そうだ。

優しく速い、安全にしてストレスフリーの乗り心地

こうして相当に気分が上がったところで245馬力の2L直列4気筒DOHCターボエンジンをスタートさせ、走り出してみる。優しく速い。これが第一印象であり、同時にこれほど速く走ることを強要してこないスポーツモデルも珍しいと思ってしまう。ところがひとたびその気になると、しっかりとドライバーが持てる最大限のスキルに合わせて、最大級の速さを見せてくれる。ただただ扱いやすく、そして安全にしてストレスフリーの速さは、ハッチバック車のマイルストーンとなるふさわしいのである。

あのステンマルクが来日した際、海和氏のご厚意によって、幸運なことにステンマルクと一緒に過ごす事が出来た。誕生日を迎えた彼はサムライのような真似をしながら、用意されたケーキを切ったりと、実にお茶目であったし、我々にも気遣いを欠かさないジェントルマンであった。GTI同様、このさりげなさがあるからこそ、多くの尊敬を集め、そして王者になろうと目指すのだろう。

19インチホイールに装着されたロープロファイルタイヤとホイールから覗く赤いブレーキキャリパーが高性能車としての主張。

グリルの赤いアクセントラインとハニカムパターンのメッシュグリルも初代以降、GTIに与えられてきた“決め事”。

さりげないとはいえ、スポイラーやサイドシルといった空力パーツを装着したリアスタイルのは独特の雰囲気を醸し出している。

スポーツモデルのセオリーどおりデジタルメータークラスターの中央に、タコメーターを配した、GTI専用レイアウト。ステアリングホイールにはGTIの証として、赤いラインやステッチ、そしてGTIエンブレムが入る。

シートバックのホールド性は優れている。初代から守られてきたタータンチェック柄のGTI専用のファブリックスポーツシート。

レスポンス抜群で、どの回転域からでも、欲しいだけのパワーを期待どおりに引き出し、切れのいい走りを実現してくれる。

(価格)
64,660,000円~(GTI/税込み)

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,295×1,700×1,465mm
車重:1,430kg
駆動方式:2WD
トランスミッション:7速AT
エンジン:4気筒DOHCガソリンターボ 1,984cc
最高出力:180kw(245PS)/5,000~6,500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1,600~4,300rpm
問い合わせ先:フォルクスワーゲンカスタマーコール 0120-993-199

撮影/篠原晃一

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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