数値だけでは判断できない余裕ある出力特性
「アテンザ」改め「マツダ6」として新たにスタートした、マツダのフラッグシップセダン。最大のハイライトといえるのが、新たに追加された2.5リッターのターボエンジンだ。その走りは、言うなれば大排気量自然吸気エンジンのよう……。とはいえ、日本では試乗できる車両がないので、今回は先行発売されている北米仕様のインプレッションをお届けしたい。
マツダの新型SUV「CX-30」は兄弟車の物足りなさをカバーする絶妙サイズだった
ご存知の通り、「アテンザ」は日本国内に限った車名であり、北米はもちろん、欧州やオセアニアでもアテンザ初代モデル時代から「マツダ6」と呼ばれている。北米仕様は2017年11月にフェイスリフトが発表されて最新のデザインとなり、2018年から販売開始。日本仕様と大きく異なるのは、このフェイスリフトモデルには当初からターボエンジンが搭載されていたことだ。
「SKYACTIV-G 2.5T」と呼ぶエンジンは、SKYACTIV-Gシリーズ初のターボエンジン(日本では2018年秋からCX-5に搭載)。日本仕様は230psで、北米仕様のデータをみるとオクタン価87のレギュラーガソリン使用時では227hp(230ps)に留まるものの、オクタン価93のハイオクガソリン使用時は250hp(254ps)というスペックだ。
正直なところ「なんだか物足りない」と感じた人も少なくないだろう。私だってそう、排気量が500cc少ない2リッターのターボエンジンを積むSUBARUのレヴォーグやWRX S4は300psを発生。ホンダ・シビックType Rは320ps、そしてたっぷりコストがかかっているとはいえ、メルセデスAMGが新しいA45に搭載するクラス最強の2リッターターボエンジンは427psを誇るのだから。そんなハイパワーな小排気量ターボエンジンが幅を利かせる時代に、“たった230ps”なのだから、そう感じるのは無理もない。
しかし、乗ってみるとマツダの狙いはすぐに理解できた。低回転域から太いトルクを発生し、エンジン回転数を上げなくてもグイグイと車体加速させていく味付けなのだ。それはあたかも大排気量の自然吸気エンジンのよう、と言っていい。エンジン回転でパワーを稼ぐ味付けの小排気量ターボと真逆の味付けとなるこのエンジンは、体感的には排気量4リッターくらいの自然吸気エンジンの感覚だ。
停車状態からの発進が力強い
アメリカの人たちの運転は、日本人から見るとワイルドだ。信号が青になるとグッとアクセルを踏んでそれなりの勢いで加速する。そんな時は、回転をあげてパワーを稼ぐ特性はマッチングがよくない。停止状態からドン!とアクセルを踏んだときにグググッと勢いよく加速する味付けが求められ、だからアメリカ人はそんな特性となる大排気量自然吸気エンジンを好んできた。
マツダのターボエンジンもそこを狙っているのである。SKYACTIV-G 2.5Tはエンジン回転を高めて楽しむスポーツユニットではなく、あくまで大排気量エンジンの代わりとなるダウンサイジングユニットなのだ。
そのようなマツダ6を1000kmほど乗ってみたが、驚いたのは1日に500km走ってもまったく疲れなかったこと。大排気量自然吸気のようにトルクフルなエンジンは、ググッと加速する一般道&のんびりとフリーウェイで長距離移動するアメリカの道路にはとてもマッチングがいいことを体感できた。
日本で発売が始まるマツダ6の2.5リッターターボ(グレード名は25T)も、ターボだからバリバリのスポーツユニットと考えずに、実用性に優れた大排気量自然吸気のようなものと考えればキャラクターを見誤らないだろう。もちろん、アクセルを踏み込めばしっかりと速いのは言うまでもない。
ところで、北米仕様のマツダ6は日本仕様と異なる点がいくつかあった。
日本よりも充実していると感じた部分は、サンバイザーにエクステンションがついていてサイドウインドウから入る強い日差しを遮断できる面積が増えていたこと。
また液晶のスピードメーターはマイルとキロメートルを切り替える仕掛けだったり、車両後部にシャークフィンアンテナが備わるのも日本仕様と異なる部分だ。切り替え式メーターの理由はマイル表示のアメリカ合衆国とキロ表示のカナダの両方に対応するため、アンテナの理由は衛星ラジオのアンテナを組み込むためである。
いっぽう、最上級グレードにもかかわらず電動格納式ドアミラーが備わっていないことにも驚いたが、これは駐車場の広いアメリカではドアミラーを畳む必要がないということだろう。そんなクルマ環境は、ちょっとうらやましいとも思う。
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