F1チームには多数の人々が関わり、さまざまな職種が存在する。この連載では、普段は注目を浴びる機会が少ないチームメンバーに焦点を当て、その人物の果たす役割と人となりを紹介していく。今回は、メルセデスのトラックサイド・エンジニアリング・ディレクターのアンドリュー・ショブリンに焦点を当てた。
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【F1チームを支える人々:デイブ・ロブソン】バトンの相棒を経てウイリアムズへ。どん底からの再起に技術面から貢献
過去10年間、そのなかでも特にメルセデスが毎年タイトルを獲得していた時代には、チームのさまざまなメンバーが脚光を浴びた。チーム代表トト・ウォルフ、ノンエグゼクティブチェアマンの故ニキ・ラウダ、ストラテジー責任者ジェームズ・ボウルズ、技術責任者のジェームズ・アリソン、ルイス・ハミルトンのレースエンジニア、ピート・ボニントンなどだ。
そして、メルセデスがチームを引き継ぐずっと以前から所属し、今も有名なメンバーのひとりが、“ショブ”の愛称で呼ばれる、現トラックサイド・エンジニアリング・ディレクターのアンドリュー・ショブリンである。
ショブリンは、リーズ大学で機械工学を学び、F1への道を歩み始めた。最終学年にキットカーを組み立て、フォーミュラ・スチューデントの競技会に参加したことをきっかけに、車両力学の分野を選んだ。彼は資金援助を受けながら、博士号取得まで研究を続け、軍の物流車両の開発を支援した。
当時はさまざまな地形を考慮しながら作業を行ったが、その後、彼は、新しいF1チームから、レースの世界に踏み入る機会を提供され、車両がレーストラック上でどのようなパフォーマンスを見せるかに焦点を当てることになった。
ショブリンは1999年シーズンを前に、ブリティッシュ・アメリカン・レーシング(BAR)に加入。研究開発の部署から始め、2000年代序盤にはトラックサイド・エンジニアリングの分野に移り、その後、ジェンソン・バトンのレースエンジニアになった。
チームがホンダワークスチームに変わり、その後、ブラウンGPになる過程で、ショブリンとバトンはともにチームにとどまり、ドライバーズチャンピオンシップ獲得という成果を達成した。バトンは2010年にマクラーレンに移籍、それ以降も優勝は収めたものの、再びタイトルを獲得することはなかった。一方ショブリンは、チームをメルセデスが引き継いだ後も、ブラックリーにとどまり、最初の年にはミハエル・シューマッハーのレースエンジニアを務めた。
ショブリンは、ひとつのチームが4つの名称の下で戦い、10年を経るなかで、エンジニアリングとセットアップの経験を積み、メルセデスでは、チーフレースエンジニア、トラックサイド・エンジニアリング・ディレクターへと昇格していった。
トラックサイド・エンジニアリング・ディレクターとしてのショブリンの仕事は、レースウイークエンドにおいて、そのサーキットで勝利を目指して戦えるか、数ポイントを目標にせざるを得ないかにかかわらず、チームが2台のマシンから可能な限り最大限のパフォーマンスを引き出せるようにすることだ。
そのためにショブリンは、サーキットの車両およびエンジニアリングクルーと、ファクトリーでサポートにあたるエンジニアリングチームと協力し合って、作業を進める。その仕事には、シミュレータードライバーの協力を得ながら、FP2後にデータがフィードバックされてから、夜間に異なるセットアップやソリューションをテストする作業も含まれる。
土曜の朝にすべての情報を受け取ると、ショブリンは、予選でマシンがパルクフェルメ状態になり、マシンセットアップが固定される前に、最後のプラクティスで試すべきオプションを選択するという作業を先頭に立って行う。スプリント・フォーマットの週末には、時間の余裕がなく、非常に大きなストレス下で取り組むことになる。
ショブリンの役割は、チーム内で最も重要なもののひとつだ。しかも、メルセデスがマシンコンセプトの選択を誤り、マシンを理想的な車高で走らせることができないため、この2年、彼の仕事はよりいっそう困難なものになっていると、本人も認めている。そういう難しい状況下で、エンジニアたちはドライバーのフィードバックをマシンのパフォーマンス向上につなげようと奮闘しているだけに、うまくいったときの彼らの満足感は非常に大きい。
ショブリンは、BARやホンダでチーム低迷時の経験を積んでいるため、メルセデスが現状を打破するために何が必要かを理解しており、チームの復活にそれを役立てていくはずだ。
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