F1で10年以上レースが行われていないサーキットでグランプリが開催されるのは、2018年のフランスGPのポール・リカール以来だ。さらにそれが一度もレースをしたことがないサーキットでのグランプリ開催となると、2016年にヨーロッパGPという名で開催されたアゼルバイジャンのバクーがそうだった。
こういうグランプリで重要となるのが、いかに週末をスムーズに過ごすかということだ。F1には3回のフリー走行があるが、それぞれやらなければならないことは決められていて、ドライバーやチームにとっては“3回もある”ではなく、“3回しかない”というのが正直な感想だ。
フェルスタッペン、メルセデスに迫る予選3番手「トップスピードの良さを武器に勝利を狙う」レッドブル・ホンダ【F1第9戦】
たとえば、フリー走行1回目の最初の40分は返却しなければならないタイヤでの走行となるため、ブレーキなどのマシン各部がきちんと稼働しているかの確認を行うとともに、セッティングが基本的に間違っていないかをチェックする。セットアップ作業を本格的に開始するのは、40分を過ぎて2セット目のタイヤでの走行からだ。
そしてフリー走行1回目の走行データを見て、さらにセットアップしてフリー走行2回目に臨む。その変更したセッティングを2回目のフリー走行の最初のタイヤで確認し、問題がなければ、タイヤを履き替えて予選シミュレーションを行い、その後、レースを見据えて2種類のタイヤでのロングランのデータを収集する。
フリー走行2回目を終えてレッドブル・ホンダは2台ともトップ4に入る走りを見せていたように、金曜日に順調な滑り出しを披露していた。これはどのグランプリでも大切なことだが、特に今回のように初めてF1を開催するグランプリではより重要となる。
金曜日が順調だと、土曜日に向けてのセットアップ変更も最小限にとどめることができるので、土曜日のフリー走行3回目で確認すべき作業も少なく、エンジニアは予選に向けた準備をしっかりと行うことができるだけでなく、ドライバーは自分が乗っているマシンに自信を増すことができる。予選一発のアタックというのは、ドライバーがいかに自分のマシンに自信を持てるかが重要で、逆にこの段階でセットアップがまとまっていないと、予選はかなり厳しい戦いとなる。
金曜日にクラッシュしたランド・ノリス(マクラーレン)が、土曜日のフリー走行3回目で19番手に低迷したのがそのよい例で、結局予選では今シーズン初めてQ2で脱落した。
これに対して、週末を通して少しずつマシンに自信を深めていったレッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンにとっては、フリー走行がいずれもスムーズだったことは、予選に向けて大きな励みになった。
「フリー走行の時点では、まだ少し自信が持てない部分があったけど、微調整を加えたら、うまくバランスが取れて、予選でプッシュすることができた」(アルボン)
この“微調整”というのが肝で、ここでマシンに自信が持てないまま予選に臨んだり、セットアップを変更すると、Q1の1回目のアタックが手探りとなり、2回目のアタックはミスが許されないため、思い切ったアタックができなくなる。アルボンはQ1の1回目のアタックで6番手のタイムを刻み、自信を深め、Q1の2回目以降はいずれも思い切ったアタックをしていた。そのことはQ2を1回のアタックのみで通過していたことでもわかる。
そして、Q3でも1回目から早々に4番手に。2回目はイエローフラッグが出て自己ベストを更新できなかったが、予選4番手はアルボンにとって、今シーズンだけでなく、昨年デビュー以来、自己最高位となった。
順調な週末は、マックス・フェルスタッペンにとっても歓迎すべきことだ。
「マシンが走り出しからいい状態だった。そうなると、セットアップに迷いはなくなり、どんどん精度を上げていくことができるんだ」
予選3番手は本人が「サブスクしているみたい」というように、今シーズン5度目と最も多いが、ポールポジションとのタイム差は、今シーズンこれまで最も小さかったベルギーGPの0.526秒をさらに縮めて、0.365秒とした。
「今週末、僕らはチームとして、とてもいい仕事ができていると思う。予選で今シーズン最もメルセデスと接近できたので満足している」
ただし、グランプリの週末はもう一日残っている。日曜日のレースでもレッドブル・ホンダの2台がスムーズな1日を過ごすことができれば、チームとして今シーズン最高位となっている第5戦70周年記念GPの、フェルスタッペン優勝&アルボン5位を更新する可能性は十分ある。
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