光と音が渦巻く華やかなブースのなかに、これまた華やかにカスタマイズされたキラキラ系の車たちが展示され、その傍らで半裸に近いキャンギャルたちが踊り狂う東京オートサロン。
や、「半裸に近いキャンギャルたちが踊り狂う」というのは10年ぐらい前までのことで、ここ数年の東京オートサロンにおけるキャンギャル各位の衣装はかなり抑えめなニュアンスへと変わってきている。
だがそれでも「華やか」という言葉が似合うのが東京オートサロンであり、華やかさこそがオートサロンの魅力の根本であるのだろう。
だが同時に、筆者はついつい「地味ブース」にも引かれてしまう。
有名どころのブースではなく、なんだかよくわからない団体または企業が地味に出展しているごく小規模なブース。それが、筆者が言う「地味ブース」だ。
地味ブースはいい。静かでホッとするし、意外と役に立つ情報が展示されている場合も多いし。
だが……いったいなぜ、地味ブースはそこにあるのだろうか?
大半の地味ブースはほとんどの来場客からスルーされているように見えるし、わざわざブースを出したからといって、彼ら地味企業や地味団体の直接的な利益に繋がっているとも考えにくい。
「だのになぜ 歯を食いしばり 君は出すのか そんなにしてまで」
などと「若者たち」の替え歌をひとりで歌っていても疑問は解決しないので、取材を敢行した。東京オートサロン2019における個人的な地味ブース・オブ・ザ・イヤーを授与したい「日本ワイパーブレード連合会」のブースを直撃したのである。
わたし「いきなりすみません。ぶっちゃけお客は来ますか?」
係の人「簡単なクイズに答えてくれればもれなく景品が当たるキャンペーンをやってますし、キャンギャルのお姉さんも配置してますから、意外と皆さん立ち寄ってくださいますよ」
わたし「なるほど。キャンギャルさんも“気立てがいいお嫁さんタイプ”って感じでステキですしね。でも、とはいえわざわざ貴団体がブースを出す意味ってないんじゃないすか? もしかして主催者から無理やりお願いされて、仕方なく出展してるとか?」
もちろん実際はこのような失礼な口調ではなかったが、まさにこういった意味のことを、わたしは係のおじさんに尋ねた。すると答えはこうだった。
係の人「いえいえ。こちらのほうから申し込んでお願いして、数年前から出させていただいてるんですよ」
わたし「なんでですか?」
係の人「……ワイパーブレード交換の重要性をここで訴えても、ちゃんと交換する人の割合ってたぶん10%も上がらないですよね?」
わたし「10%どころか、1%も上がらないでしょうね」
係の人「おっしゃるとおりです。でも、もしかしたら0.1%の人には伝わるかもしれない。それを地道に繰り返していくことで0.1が0.2になり、そしてゆくゆくは、もっと大きな数字になるかもしれない。そしてその結果として事故が減るかもしれないし、我々のビジネス拡大につながるかもしれない……ということを目的とした、いわば草の根運動なんですよ。即効性のある何かを狙っているわけではないんです」
わたし「なるほど、理解しました。そして、ちょっと感動しました。では失敬」
地味ブース側の考え方(というか日本ワイパーブレード連合会さんの考え方)はちょっと気が長すぎるような気もするし、今の時代は正直、もっと他のやりようもあるんじゃないかとは思う。
「でも……こんな昭和の町役場みたいな雰囲気の場所も、決して悪くはないよね」などと独り言を言いつつ、筆者は「看板娘」さんの写真を撮らせていただいたのだった。
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伊達軍曹(だて ぐんそう):自動車コラムニスト
外資系消費財メーカー勤務を経て自動車メディア業界に転身。「IMPORTカーセンサー」編集デスクなどを歴任後、独自の着眼点から自動車にまつわるあれこれを論じる異色コラムニストとして、大手メディア多数で活動中。
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