現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 極端なEV推しはナンセンス? 実は最新ハイブリッドがEVよりエコな実態と理由

ここから本文です

極端なEV推しはナンセンス? 実は最新ハイブリッドがEVよりエコな実態と理由

掲載 更新 66
極端なEV推しはナンセンス? 実は最新ハイブリッドがEVよりエコな実態と理由

 現段階ではハイブリッド車のほうがバッテリーEV(電気自動車)より効率的?

 脱炭素が叫ばれ、欧州を中心に、ハイブリッドまで含んだエンジン車廃絶の動きが強まりつつある。無論、EVが環境にやさしいエコカーであることに疑いはない。

新型アクアの最高燃費はヤリスHVの36.0km/Lに0.2km/L届かず! 記録を塗り替えてきた超燃費競争はもう終わったのか?

 一方で、何でもかんでもEVという風潮に疑問を感じている自動車ユーザーも多いのではないだろうか?

 実はハイブリッド車、特に日本の最新モデルを見ると、現時点ではトータルで見ると、EV以上に環境負荷が低いと言えるほど効率的なレベルに達している。クルマの多様なあり方を含めて、きっちり考えるべきものは多い、といえそうだ。

文/高根英幸
写真/TOYOTA、Daimler

【画像ギャラリー】世界初バイポーラ型ニッケル水素バッテリーを搭載した新型アクアをみる

EVがクリーンなのは「走行時」の話

写真はメルセデスベンツのEQシリーズ。すでにEQCなどは日本導入されており、欧州勢はEV化を加速させている

 バッテリーEV(以下EV)は、確かに走行中はクリーンな乗り物だ。地下駐車場などで遭遇すると、音が静かなだけでなく、排気ガスを出さないことで人体への悪影響がなく、地球に優しいクルマだというイメージを実感できる。

 しかし、それはあくまでも走行時の、その場だけの話だ。実際には、現在の日本においてはEVのCO2排出をゼロにすることはできない。それはEVを作り上げるまでと、走行に必要な電力、そして使用後のリサイクルにおいて結構な量のCO2を排出するからだ。

 LCA(ライフサイクルアセスメント=材料の製造時から使用中、そして廃棄時のリサイクルまで含めたCO2排出量の評価)で比べた時、EVは意外と環境負荷の高いクルマなのである。

 欧州ではとっくにこの問題に取り組んでいて、再生可能エネルギーを使ってバッテリーを製造、クルマを製造するよう体制作りを進めている。しかしそれでも、原材料から廃棄までを通じてカーボンニュートラルを実現する難しさは並大抵ではない。

 それはEV以外のクルマでも同じことだが、環境性能の高さを謳うEVだけにエンジン車よりも製造時のCO2排出量が多いのは矛盾を感じはしないだろうか。

環境負荷で考えれば現状では「EVよりハイブリッド」

写真はレクサス UX300eのシステムイメージ。EVは床下いっぱいにバッテリーを敷き詰めるなど、HVより圧倒的にバッテリー搭載量が多くなる

 ハイブリッド車であれば、ガソリン車よりも製造時のCO2排出量は多いがEVほどではないし、燃費性能ではガソリン車より格段に優れている。LCAで評価してもEVよりもガソリン車よりもCO2の排出量が少ない傾向であるのは明らかだ。

 それにバッテリーの素材であるリチウムやコバルトは、資源として限りあるだけでなく、採掘や精製の工程で環境汚染を引き起こす物質でもある。鉱山労働者の健康問題や、地元住民や動物、植物への影響も含めて、大量に生産することにリスクがある素材なのである。

 コバルトフリーのバッテリーやリチウム以外(例えばナトリウムなど)を使ったバッテリーなども開発されているが、実用化して現在のリチウムイオンバッテリーと置き換えられるには、まだかなりの時間を要する。

 「クルマのCO2排出量さえ減らせれば、他の公害問題には目をつぶる」。こんなバカなことを言い出す国はないだろうから、EVが本当に地球に優しいクルマになるまでの道のりはまだまだ遠いのである。

 ハイブリッドにもEVと同じ部品が搭載されているから、根本的に抱える問題は変わらない。けれどもバッテリーの搭載量が10分の1程度で済むことを考えれば、1台あたりの環境負荷はずっと少なくなる。

実燃費でリッター30kmを叩き出す最新のHV

ハイブリッド車の環境性能は、車格、バッテリー搭載量等によって異なる。そのなかでも、ヤリスハイブリッド1kmあたりのCO2排出量は65gと少ない。LCAにおいてもEVより環境負荷が小さい

 ハイブリッド車といっても、車格やハイブリッドシステム、バッテリーの搭載量などによって、実際の環境性能は大きく変わってくる。

 最近のコンパクトカーはガソリン車であっても燃費性能に優れているから、いくらハイブリッド車でも大きなSUVやミニバンとなると、コンパクトカーのガソリン車と比べれば環境性能では負けてしまう。

 しかし、ハイブリッド車でも最新モデル、しかもコンパクトカーとなれば話は別だ。トヨタ ヤリスハイブリッドの環境性能には、ガソリン車はもちろんEVだって太刀打ちできないだろう。

 1kmあたりのCO2排出量は65gと、EUの厳しい燃費基準(95g/km)を余裕でクリアするだけでなく、LCAで見ればEVよりも遙かに環境負荷が小さいものだ。

 さらにヤリスと同じプラットフォームを採用した新型アクアに至っては、バイポーラ型ニッケル水素バッテリーを採用することで安全で長寿命、低コストを実現し、ヤリスハイブリッドとほぼ同等の燃費性能を実現している。

 しかも外部に給電機能を備えるなど、バッテリー容量の大きさはこれまでのコンパクトカーのハイブリッドを大きく超えるものだ。

 プリウスPHV(8.8kWh)の6割程度のバッテリー容量を確保しているのだから、EVモードでの航続距離も従来のアクアのような2km程度ではなく、もっと長距離を走れるようになっているハズだ。

 こうした能力を積極的に活かすようにして、さらに普通充電機能をオプション設定することで、プラグインハイブリッド(PHEV)として進化することも期待できそうだ。

現時点でEVを選べるユーザーは限られる

EV購入時に心配すべき点は、買い替え時の下取り価格と充電の環境である。充電スポットをどうすべきか、急速充電器を多用することのバッテリーの負担などを考慮しなげればならない

 これからクルマを購入、あるいは買い替えるユーザーにとってEVを選ぶか、ハイブリッド(PHEVも含む)を選ぶかは、悩みどころなのではないだろうか。

 このところEVの紹介記事などで車両価格の高さを指摘する記述も見かけたりするが、それは補助金とガソリンに比べて安い走行時の電気代を差し引いて考えていないからだ。

 むしろEVで心配すべきは買い替え時の下取り価格で、あとは充電の環境さえ整っていればEVを買ってもいい状況になってきている。

 しかし、駐車場のない一軒家やマンションなどの集合住宅に住んでいるユーザーであればEVの場合、近くに設置されている急速充電器を利用して使い続けることになる。

 この急速充電はバッテリーの負担が大きいだけでなく、内部抵抗によってバッテリーが発熱するということは、それだけロスも大きいのである。EVの電費には、この充電によるロスは含まれていない。というのも普通充電だけならロスは非常に小さいからだ。

 前述のLCAでも、EVの充電に関してはバッテリーに充電された電力しかカウントしていないが、実際には充電器側と車体側の両方で電力のロスが発生している。

 新型アクアのLCAは同クラスのEVと変わらない、というトヨタからの情報もあるが、この充電ロスを考えれば実際にはアクアの方がLCAでは大きく優れることになるハズだ。

 充電時のロスは当然、電圧が高くなるほど損失が大きくなるので、近年高電圧化を目指している急速充電の規格も、安全性は確保しても電力損失はそれほど改善することはできない。

 何しろ現在、中国と共同開発中のCHAdeMO 3.0(プロジェクト名ChaoJi)では、充電器のケーブル内に冷却液を循環させて、温度上昇を防ぐ機構が盛り込まれるのだ。

 充電時の発熱は、すべて電気エネルギーによるものであるから、短時間に充電することがいかに電力を無駄遣いすることになるのか、想像してほしい。

 ハイブリッド車の場合、バッテリーを充電するのは、エンジンの動力か走行中の運動エネルギーなので、燃費がすべてのCO2排出量を表しているが、EVの場合はそうではないのだ。この電力という目には見えないモノを捉えてしっかりと評価しなければ、EVやPHEVの環境性能は正確には判断できないのだ。

 こうして説明しても、EVもハイブリッド車もユーザーに買ってもらわなければ、優れた環境性能を発揮することなどできない。どちらも最大の目的はCO2の排出量削減なのだから、メーカーも出来るだけ詳しい情報を公開して、お互いの優位性を競い合うような市場を形成していってほしいものだ。

 そして、そうしたデータから客観的に考えて、エンジン車の規制を考えるようにするべきだろう。何でも電気にすればいいというものではなく、化石燃料以外にもエンジンを利用する選択肢はあるのだから。

【画像ギャラリー】世界初バイポーラ型ニッケル水素バッテリーを搭載した新型アクアをみる

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス

みんなのコメント

66件
  • EUがEVを推進するのは域内に高性能なHVシステムがないことが要因と考えます。EV化の推進は政治的要因が多いことから本記事のように科学的な意見を広めることは重要ではないでしょうか。
  • 現実的には、世界でBEVが主流になるにはインフラ整備やバッテリー技術の向上含めて30年位は必要なんじゃないかと思ってるんだけど、それまでに都市部のユーザーから少しずつ置き換わっていくのかな?
    地方や寒冷地では少々充電環境が増えようが、あと10年は様子見かな…

    そもそも欧州では、日本より速度域が高く、一回の航続距離が長いとか何たらって、昔からクルマ雑誌等でいわれてたけど、それこそEVに不向きな環境な気がするけどなあ。政治・環境ビジネスの利権が絡んでるのかワケワカラン…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村