素晴らしいハンドリングとエンジン
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ポルシェのコーナリングは、カヌーのパドリングに似ている、と同僚が話すことがある。ボディのロール軸は、ちょうどドライバーの胸の位置。アルピーヌA110 Sの場合、数センチ上にある。
乗り心地はしなやかで、目的地までの運転は極めて楽しい。信じられないほど、操舵感は調和が取れている。ステアリングホイールを操る反応は、シャシーの回頭速度と、ボディロールのレートと、完全に同調している。
素晴らしいハンドリングの持ち主だ。そして718ケイマンはフラット6という、素晴らしいエンジンを再び搭載した。このパッケージングは、一般道で強く光る。
A110の動的な魅力は、穏やかに動き、挙動のつかみやすいリア・サスペンションの設定にある。コーナリングに調整しろを与え、操縦性の懐は深い。控えめなスペックだけでなく、実際の走りでも感動が得られる。
標準のA110の場合、英国の郊外の道にピッタリフィットする、衝撃の吸収性と姿勢制御との絶妙なバランスを獲得していた。だが、A110 Sでは硬められ、乗り心地は落ち着きを失っているようだ。
2台をじっくり味わってから、モンスターのBMW M2 CSへと乗り換える。サスペンションと、新しいブレーキ、ホイールを獲得したF87型最終進化形のM2。この変更内容で、大きく動的性能の性格が変わるクルマも珍しい。
3台で一番大きくたくましいM2 CS
エアインテークが追加されたカーボンファイバー製のボンネットとスプリッターが、フロントで強い存在感を放つM2 CS。M2コンペティションと大きな違いはないものの、アグレッシブだ。
カーボン・ポリマー製のルーフも、いい感じ。チェッカーフラッグのグラフィックは、筆者は不要だと思う。
しかしM2 CSの真骨頂となるのは、外から見えない部分。最高出力450psの直列6気筒エンジンに、ボールジョイントのサスペンション、直付けされたサブフレーム。さらに試乗車には、カーボン・セラミック・ブレーキと、ミシュランのカップタイヤが付いていた。
M2 CSには、温和な優等生の718ケイマンでは理解できない、性格が与えられている。3台の中で一番大きく、たくましい。
BMWが生み出した直列6気筒エンジンは、アルピーヌの4気筒ターボでは得られない、音響的な深みとドラマを備えている。さらにポルシェ製ユニットに匹敵する、回転域とレスポンスも。
エンジンの性能を完全に引き出すには、滑らかな路面が必要。M2 CSはアダプティブ・ダンパーを採用しているが、足腰はしっかり引き締められている。目的は明確だ。
路面を強く掴むタイヤを履き、緩衝材になるラバー製ブッシュはない。車内はノイジーで、乗り心地の感触は荒い。
同じ路面を走らせると、ほかの2台より車重がかさむことが伝わってくる。サスペンションも硬く、一生懸命機能する必要がある。
場所を問わず扱いやすく、充足感が高い
でもM2 CSには、好きにならずにはいられない、遊べる自由度がある。穏やかに甘い718ケイマンとは、まったく違う楽しさだ。
繊細さを味わうのではなく、筋肉で押し切る。サーキットなら、リアタイヤをスライドさせることも簡単。派手なバーンナウトも、ローンチコントロールを使ったロケットダッシュも、朝飯前だ。
見た目通りのモンスター。一般道では少々手を焼く。ポルシェを、鈍く感じさせるほどに。
これらの印象を総合して、ベストを選ぶ。
この3台で1番のドライバーズカーは、ポルシェ718ケイマンだろう。運転する場所を問わず、最も扱いやすく、ドライビングの充足感が高い。
勝者は、グリーンのマイク・ワゾウスキー。ここでも主役だった。
一方で、この3台のスポーツカーは、濃厚な個性派。それぞれ、立ち振る舞いはまったく異なる。特にアルピーヌA110 Sは違いが顕著。善戦した方だと思う。
BMW M2 CSは、真っ先に大好きになれる、息を呑むほどたくましい友人だった。でも、一番はグリーンのポルシェ718ケイマン。お互いに、スポーツカーとして古くから競い合ってきた好敵手は、今も変わらない。
3台のスペック
ポルシェ718ケイマンGTS 4.0(英国仕様)のスペック
価格:6万4480ポンド(876万円)
全長:4379mm
全幅:1801mm
全高:1295mm
最高速度:292km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:247g/km
乾燥重量:1405kg
パワートレイン:水平方向6気筒3995cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:399ps/7000rpm
最大トルク:42.7kg-m/5000-6500rpm
ギアボックス:6速マニュアル
BMW M2 CS(英国仕様)のスペック
価格:7万7455ポンド(1053万円)
全長:4460mm
全幅:1872mm
全高:1415mm
最高速度:280km/h
0-100km/h加速:4.0秒
燃費:10.9-11.1km/L
CO2排出量:223g/km
乾燥重量:1575kg
パワートレイン:直列6気筒2979ccツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/6250rpm
最大トルク:56.1kg-m/2350-5500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
アルピーヌA110 S(英国仕様)のスペック
価格:5万7140ポンド(777万円)
全長:4180mm
全幅:1800mm
全高:1248mm
最高速度:260km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:13.7km/L
CO2排出量:163g/km
乾燥重量:1114kg
パワートレイン:直列4気筒1798ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6400rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
M2 CSのボンネットが特にカッコイイ!
どの一台にするにしても絞ることができません。
かと言って全部買う能力も無いです。