毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスズキ カプチーノ(1991-1998)をご紹介します。
文:伊達軍曹/写真:SUZUKI
■オールアルミエンジンも採用!! 史上最も本格スポーツに近づいた軽
軽自動車規格でありながら、本格的なスポーツカーとほぼ同等のスペックを備えていた名作2シーターオープン。
それが、1991年から1998年まで販売されたスズキ カプチーノです。
軽自動車の自主規制値めいっぱいの64psを発生。マツダのAZ-1、ホンダのビートとともに「軽スポーツABCトリオ」と呼ばれ人気を博した
1989年の第28回 東京モーターショーで初公開された試作版カプチーノは、当時の軽自動車規格だった550ccのエンジンを搭載し、カーボンファイバー製のボディを採用した超軽量モデルでした。
そしてその2年後の1991年10月7日、待望の市販バージョンが発売されたのです。
市販バージョンは、アルトワークス用の657cc直3 DOHCインタークーラー付きターボエンジンを縦置きに搭載。トランスミッションは専用セッティングの5MTでした。
そしてカプチーノは、市販版であっても「700kg」という驚きの車両重量を実現していました。ほぼ同時期に販売されていた「ホンダ ビート」が760kgですので、カプチーノの700kgというのは超絶軽量といえます。
ルーフとボンネット、リアフェンダーの一部にアルミニウムを使用し、ホイールや駆動系にもアルミニウムを使うことで、カプチーノは徹底的な軽量化を果たしたのです。
ルーフは3ピース構成で取り外せばトランクに収納できるため、フルオープン、タルガトップ、Tトップの3つの形態を選択できた
足回りも本格的でした。軽自動車でありながらサスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式で、ブレーキも四輪ディスク。
部品点数がどうしたって多くなる本格的な機構を採用しながらも、ライバルより圧倒的に軽い車重を実現していた点に、当時のスズキの技術者の「本気っぷり」が見て取れる気がいたします。
ロングノーズ&ショートデッキの古典的なフォルムは美しいだけでなく、「フロント51対リア49」という理想的な前後重量配分も実現していました。そしてルーフには着脱可能な3分割構造のアルミ材パネルを採用。
その結果、「クローズスタイル」のほかに「Tバールーフ」「タルガトップスタイル」「フルオープンスタイル」という合計4種類のスタイルを楽しめたのもカプチーノの特徴です。
1995年5月にはマイナーチェンジが実施され、エンジンがオールアルミ化されると同時に、当時最新だった16ビットのコンピュータ制御も採用。
ちなみにエンジンがオールアルミ製になったことで、ただでさえ超軽量だったカプチーノの車重は「690kg」となり、その軽量っぷりにさらなる磨きがかかったのでした。
■市場低迷と規格変更で暗転した運命…しかし復活の噂も
そのような「本格派」だったスズキ カプチーノですが、残念ながら1998年10月には販売終了となり、今のところ「2代目カプチーノ」は登場していません。
カプチーノが(現時点では)1代限りで終わってしまった直接の理由は「軽自動車規格の変更」です。
市販バージョンのカプチーノがデビューした1991年当時の軽自動車規格は「排気量660cc/長さ3.30m/幅1.40m」というものでした。しかし1998年10月、サイズに関する規定が「長さ3.40m/幅1.48m」へと変更されたのです。
これは「軽自動車にも普通車と同じ安全衝突基準を採用する」ということに伴う大型化でした。
車名の「カプチーノ」には、小さなカップに入った「ちょっとクセのある」お洒落な飲物と、この小さなオープンカーのイメージを重ねたという。しかしその走りは超本格派
新しい規格に準拠する「新しいカプチーノ」を作ることも、技術的には可能だったでしょう。
しかし1991年頃にバブル経済が崩壊して以降、スペシャリティカーやスポーツカーの市場は完全に低迷傾向が続いていたため、スズキにとって「ちょっと大きなカプチーノをまた新たに(予算をかけて)作る」などという選択肢は、実質的には存在していませんでした。
そのためカプチーノは軽自動車規格変更に伴う「車種整理」の対象となり、セルボモードとともにカタログから消えていったのです。
ですが今、世の中は(というかその一部は)「スズキ カプチーノが20年ぶりに復活か?」という噂でもちきりです。
バブル崩壊と軽自動車規格変更の影響で「整理」されたカプチーノですが、昨今は世の中の景気も(当時と比べれば)好転しており、スズキの経営も、ハスラーやジムニーなどのおかげで安定しています。
「であるならば、あのカプチーノを復活させる余裕もあるはず!」ということで、その登場が確実視されているのです。
とはいえまだ正式発表は何もないため、どうなるかはわかりません。ただ、超本格派だった初代カプチーノの末裔が出るとしたら、それもまた超本格派なのでしょう。とりあえずは正座しながら、正式な情報を待ちたいと思います。
■スズキ カプチーノ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1185mm
・ホイールベース:2060mm
・車重:700kg
・エンジン:直列3気筒DOHCターボ、657cc
・最高出力:64ps/6500rpm
・最大トルク:8.7kgm/4000rpm
・燃費:18.0km/L(10・15モード)
・価格:145万8000円(1991年式ベースグレード)
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