一般道を約135km、高速道路を約200km走った燃費をまず総合で見ると、トヨタ ヤリスはHV(ハイブリッド車)29.7km/L、同1.5ガソリン車19.9km/L。ホンダ フィットはHVが24.3km/L、1.3ガソリン車は19.9km/L。HV同士では5.4km/Lの差がつき、ガソリン車同士は奇しくもまったく同じだ。
※燃費計測結果は、写真でご確認ください
※計測条件:1人乗車。ドライバーは適宜乗り換えを実施。エアコン設定温度は基本25℃のオート。計測ルートは、編集部のある東京・八丁堀を出発し、川越街道を通る国道254号を埼玉・群馬方面へ北上。安中市内で一般道の計測を終了。高速道路は碓氷軽井沢ICから上信越自動車道、関越自動車道、北関東自動車道を通り、茨城町東IC出口にて計測終了
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この結果をカタログのWLTC(総合)モード燃費と比較すると、ヤリスはHVが8.9%、ガソリン車は6.1%それぞれマイナス。フィットはHVが11%下まわった一方、ガソリン車は1.5%上まわり、明暗が分かれた。それでも、HV同士はWLTCモードでも5.2km/L差、ガソリン同士ではグッと少ない1.6km/Lで、基本的にはWLTCモードの傾向が実際の計測値にも表れたと言っていい。
WLTCの傾向と異なったのは、ガソリン車だ。1.5Lのヤリスは1.3Lのフィットと同じ19.9km/Lをマークしたが、ヤリスにとってはまだ不本意なはず。WLTCではフィットの19.6km/Lに対して、ヤリスのほうが21.2km/Lと上なのだ。原因はフィットを下まわった一般道の燃費。ヤリスはアイドリングストップ非搭載のためか、ストップ&ゴーが多い都市部を抜けるまで燃費計の数値がなかなか伸びない。WLTCの市街地モードを見ても両車の差はわずか0.3km/Lで、その傾向は同じだ。
ヤリスのガソリン車が実力の一端を見せたのは、100km/h目安の高速巡行。23.4km/Lは後述のフィットHVと同等以上で、WLTCの高速道路モード(24.1km/L)に近い好数値だ。新開発1.5L直噴は「ダイナミックフォースエンジン」第3弾で、2.5L/2Lと同じく世界最高レベルの熱効率を達成。さらに、フリクションロスを大幅に低減するべく3気筒を採用する。ヤリスから採用された新開発の超低粘度オイルもトピック。車重にしても、プラットフォームを一新した効果でフィットより男性1名分も軽い。一方、フィットは先代と基本的に同じ1.3L直4だが、オイルポンプを電動化した(従来は機械式)新開発CVTによってフリクションを低減している。100km/hのエンジン回転は両車ともDレンジで2000回転に抑えられている。
HVに目を移すと、両車の結果はWLTCの傾向どおり。一般道・高速巡行ともに5.3km/Lの差をつけたヤリスの圧勝だ。1.5L直3をHV用にチューンしたエンジンと、システム全体を大幅に高効率化したTHSII(トヨタハイブリッドシステム2)の低燃費性は、まさに期待どおり。一般道は32km/Lに迫り、1.5ガソリンとはダブルスコアに近い大差だ。HV効果があまり得られないはずの高速巡行でも、28km/L台はたいしたもの。エコランを心掛ければWLTCの数値さえ現実的なのだ。
フィットHVは、コンパクトカー用に新開発されたスポーツハイブリッドi-MMD改め、e:HEV(イーエイチイーブイ)を搭載する。低中速の低負荷域や高速のアクセルオフでEV走行可能な点はヤリスと同じだが、基本的にはエンジンで発電しモーターのみで駆動するシリーズHV。ただし、低負荷の高速巡行時には前輪とエンジンをクラッチで直結し、エンジン動力のみで走るエンジンドライブモードがe:HEVのユニークな点だ。EVと同様に高速でエネルギー効率が低下するシリーズEVの弱点を補う狙い。1.5Lエンジンは、これも世界最高レベルの熱効率を誇る。
ちなみに、日産ノートeパワーは高速時もモーターのみで走行する完全なシリーズHVだ。過去のdriver誌フルテストで計測した燃費は、約200km走った一般道で28.0km/L、同じく高速で22.7km/L(ともに車載燃費計)。走行ルートや交通量などは異なるのであくまで参考比較だが、フルテストの燃費計測は撮影やドライバー交代などで停車する回数が圧倒的に少なく、条件的には今回の比較計測のほうが不利と言える。それを考慮すれば、フィットHVのエンジンドライブモードには一定の効果あり。ただ、ちょっとした再加速でもすぐモータードライブモードに切り換わるため、道路状況や走り方によってはエンジンドライブモードを維持しにくいこともある。また、同行したフィットのガソリン車がWLTCにかなり近い燃費をマークしたことも合わせると、フィットHVの計測値も基本的に実力どおりかもしれない。
世界最高レベルを謳うヤリスHVの燃費性能はホンモノ。PHVなどのモデルで、EV走行分を燃費に加味しなければ、まさに世界一の低燃費性能を達成したと言っていい。同じく1.5ガソリンは都市部でアイドリングストップが欲しいが、ガソリン車ではこれも世界最高レベルのポテンシャルを備える。新型は心地よさで一番を目指したフィットHVも、最新のコンパクトHVとして納得の燃費性能。ホンダは燃費一番もあきらめるはずはなく、e:HEVをはじめとする今後の進化にも期待したい。1.3ガソリンは派手さこそないが、ガソリン車屈指の低燃費を安定的に発揮する実力は健在なのだ。
〈文=戸田治宏〉
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みんなのコメント
巡航燃費がかなり良いのに加えて、アイスト意識しなくていいのがむしろ運転しやすさに繋がってる