ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。
第十六回目となる今回は、2023年2月6日、ついに発表に至った日産とルノーのアライアンスの見直しについて。そもそも何が問題だったのか? それがどう変わるのか?? について深掘りする。
悲願? 終わりの始まり?? 日産ルノー24年ぶりのアライアンス見直しを読み解く
※本稿は2023年2月のものです
文/中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)、予想CG/ベストカー編集部、写真/日産 ほか
初出:『ベストカー』2023年3月26日号
■アライアンスのパワーバランスは瓦解寸前だった
2023年2月6日、日産とルノーが英国で提携の新たな取り組みを発表。三菱も交えて会見が行われた
2月6日、日産は仏ルノーとの24年にわたるアライアンスの見直しを発表しました。
なぜ、日産は出資関係とアライアンスの見直しを求めたのか。メディアは、「不公正条約の是正」「悲願の独立」「ルノー支配からの脱却」といった言葉を並べていますが、こういった日産からの目線だけでは、アライアンス見直しに対する狙いの本質は見えません。
ルノーからの目線も交えて、アライアンスの問題点と解決策となる進化を読み解きます。
「終わりの始まりではないのか?」
6日の記者会見で日本のメディアがルノーのジャンドミニク・スナール会長、ルカ・デメオCEO、日産の内田誠社長に投げかけました。内田社長も含めて強調したことは、不健全なガバナンスを正し、対等な出資構造でアライアンスを新しいスタートラインへ立たせるということでした。
スナール会長は「ルノーは日産への影響力をまったく行使できなかった」と不協和音を吐露し、デメオCEOは、「議決権は43%が15%になるのではなく、ゼロが15%になるのだ。それは日産も同じだ」と発言しました。
アライアンスのパワーバランス(議決権)は実体的に「ゼロとゼロ」のガバナンス(統治構造)で運営されていて、それは瓦解寸前であったと言えます。
■ゴーンが残した3つの重いレガシィ
日産を救済する形で、ルノーは1999年に巨額を出資し、36%の株式を握りました。業界は生き残りをかけた合従連衡の最中にあり、フランスの国有企業として政府に保護されてきたルノーは、グローバル化を生き残りの戦略として選択したのです。
世界戦略に日産を組み入れるために、再建請負人として送り込まれたのがカルロス・ゴーンでした。ゴーンは見事に日産の再建を果たし、このアライアンスを世界で最も成功したケースに高めました。しかし、2018年の衝撃的な逮捕で両社の経営から姿を消し、3つの重いレガシィを残したのです。
第1に、資本関係のねじれです。
2002年にルノーは日産への出資比率を36%から43%へ引き上げ、同時に、フランス法では子会社が親会社の議決権を得られないことを承知の上で、日産はルノーへ15%を出資します。
ルノーが日産を支配する立場になってもアライアンスは「対等の精神」で運用することをゴーンは狙ったのです。
第2に、ガバナンスのねじれです。
フランスは長期保有の株主へ議決権を2倍与える「フロランジュ法」を制定しました。ルノー株の15%を持つフランス国家の議決権が30%近くに跳ね上がるわけですから、国家がルノーの経営に介入し、日産の経営にも関与する懸念が生じたのです。
この解決策としてゴーンは、ルノーが日産の取締役会決議に反対しないという、ガバナンスへの不介入を含んだ「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」を締結します。
ルノーは43%もの支配証券を有しながらも、日産の経営に干渉することができなくなったのです。アライアンスは議決権が実質ゼロとゼロの「対等なガバナンス」で運営されることになります。
ゴーンは、機が熟せば自らの手で経営統合をすればいいと考えていた節があます。実際、2018年に突如、両社の経営統合を強引に進めようとします。その直後に、金融証券取引法違反容疑で逮捕され、レバノンに逃亡し、「RAMA」だけが残された格好となりました。
第3は知的財産(IP)のねじれです。
ゴーンの下では、両社のIPはほぼ共同で利用され、明確な色分けを避けてきました。ゴーンにすれば、いずれ統合するつもりの両社のIPを厳密に運用する必要など感じていなかったでしょう。
このねじれは、2019年にルノーが目論んだフィアットクライスラーとの経営統合が頓挫する原因にもなりました。ねじれを解消しなければ、新しいパートナーとの健全な関係も構築できない状態だったのです。
■「世界」から「地域」の最適へ
日産ルノーの出資関係の見直し
ルノーは欧州に経営を集中させる地域戦略に転換したことで、アライアンス戦略をグローバルで一元化することの意味が薄れました。
日産は中国、北米、日本市場をコアに置くわけで、欧州ではルノーとのアライアンスは意味が深いのですが、コア市場に向けては自らの力で競争力を切り開くことが必要となります。
2022年11月、ルノーは「事業構造改革案」を発表し、EV部門の新会社「アンペア」、内燃機関事業の「ホース」を含めた5つに事業を分割することを決めます。そして、今回の合意である日産との資本関係を見直し、15%の対等出資でアライアンスを運営することが決まりました。
今年の3月末を持ってRAMAは失効し、新しい正当なアライアンス契約が締結されます。IPのねじれは既存領域では所有権が整理され、今後の新しいIPに関しては明白なルール設置で合意しています。
資本・ガバナンス・IPのねじれ関係を一掃し、未来を見据えた新しいアライアンスを進めることがついに可能となったのです。
半導体・ソフトウェア・電池などのグローバルスケールが必要な技術においては、双方がそのスケールメリットを享受することを可能とし、個別事業は自由に展開することも可能です。
協業がうまくいけばアライアンスは一段と競争力を高めることもできます。一方、エゴが衝突すれば不協和音とともに停滞や縮小に向かうこともあるわけです。
日産は自由に自らの未来を描くことが可能となります。中国・日本・北米においては、新興企業や他メーカーなどと協業も可能となります。
詳細は、5月にも発表予定のポスト「Nissan NEXT」の中期経営計画のなかで説明があるでしょう。
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
●これまでの連載はこちらから!
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みんなのコメント
ZもRも終わったままだった
俺にはこれだけが事実で後は知らん
ルノーから日産を守った」
ルノーは自由にならんが、日産は自由に出来た」
結果…新型GTR」新型Z」エクストレイル1・2」と
実に☆趣味車が充実
史朗さんや水野さんと…まるで
豊田元社長、多田さん辺り…と似てるのでは
社員的には→悪魔?だったのかも知れないが
1ユーザーからすると…
スカイラインGTのブーストアップ版を→400R(西川日産
新型と大声上げるも→ビッグマイナーチェンジのZ(内田日産
と…大幅に進化した新型35GTR」新型33Z」を比べてしまう
ルノーに口出しされていたら→ムリ」だったんだろーなぁ…と