ルノー メガーヌのスポーツモデル「メガーヌR.S.」がマイナーチェンジを受け、試乗することができたのでお伝えしよう。
2021年1月にR.S.のトロフィを含むマイナーチェンジが発表されたが、ようやく試乗することができた。しかしR.S.トロフィーは導入できておらず、標準のR.S.のみの試乗になった。
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ルノースポールがアルピーヌに
R.S.はご存知のように「ルノースポール」の略だが、じつはこの名称が使われる最後のモデルになるかもしれない。2021年1月にルノー新CEOルカ・デメオから中期経営計画が発表され、その中でスポーツモデルは「アルピーヌ」に統一することが盛り込まれている。すでにフランス本社内ではルノースポールは存在しておらずアルピーヌになっているというのだ。
ルノースポールはもともとF1を頂点とするルノースポール・レーシングと、それらのモータースポーツ活動から得られた知見を活かした生産車、スポーツモデルを開発するルノースポール・カーズに分かれており、メガーヌR.S.はカーズが開発したモデルだ。
一方、アルピーヌはビジネスユニットとしてケータハムと合弁でスタートし、ケータハムが抜けたあとは100%ルノーの子会社として存在したが、すでにルノー本体に吸収されている。もともとアルピーヌには開発部門はなく、ルノースポールが開発を担っていたわけで、シンプルにスポーツブランド名としても「アルピーヌ」に統一するというわけだ。ただ、具体的なモデル名として、どういったネーミングになるかというところまでは伝わってきていない。
さらに、次期モデルに関しアルピーヌは電動化することが表明されており、それがICEを搭載しているのかは見えてこないし、電動化のコンセプトモデル「サンク」はBEVだった。そのためメガーヌR.S.の後継モデルは間違いなく電動化されたモデルであり、それがメガーヌとして継続するのかはいまのところ情報がない。
標準のR.S.も300馬力に
さて、メガーヌR.S.のマイナーチェンジモデルは、トロフィーが今夏に国内導入され、先行して標準のR.S.を試乗というわけだ。今回のマイナーチェンジではこの標準R.S.のエンジンが以前の280psから300psへと変更され、トロフィーと同じ出力になっている。それにともない、細部の最適化が行なわれている。
特徴的なリヤ操舵「4コントロール」やダンパーinダンパーの「ハイドロリックコンプレッションコントロール」などに大きな変化はないが、細部にわたり変更があった。
まずその300psのエンジンは420Nmを1.8L直列4気筒ターボで発揮し、セラミックボールベアリングを採用したツインスクロールターボでターボラグのない加速を実現する。安全装備ではアクティブエマージェンシーブレーキを搭載し、EDCのみACCでのストップ&ゴーが可能になった。6MTではACCのみ。
外装では2つのLEDランプが追加されルーテシア、キャプチャーに合わせたデザイン変更があった。またエンブレムのR.S.にひし形のマークも追加されている。リヤはシーケンシャルタイプのウインカーになり、LEDランプが2つ付いている。
インテリアでは、センターにあるイージーリンクのインターフェイスが変更され、走行中にタッチパネルでは操作のしにくかった温度調整などは、物理スイッチが復活している。またシフトレバーではマイナー前のモデルでDモード走行からマニュアルドライブへの切り替えはパドルシフトだけだったが、今回、シフトレバーを左側へ倒すとマニュアルモードになるように変更されている。
さて、試乗ではこうした細部の変更にとどまるマイナーチェンジであるため、走行フィールは従来と大きな変更はなく300psをR.S.で楽しむことができる。
乗り心地がいいスポーツカー
しかし試乗してみると改めてR.S.の気持ちよさを感じることができた。ドライブモードでSAVE(ノーマル)モードで走行中は60km/hを境に同位相と逆位相が切り替わり、「Sport」と「Race」モードでは100km/hで切り替わる。低速域では回頭性が上がり、高速域では安定性が高く、信じられないほどどっしりとしたコーナリングが味わえるのだ。
またスポーツモード、レースモードではエンジン音の演出もあり、ダウンシフトに合わせてバックファイヤ−がパパパン パンっと鳴り響き気分は上がる。
そしてハイドリックコンプレッションコントロール・ダンパーが素晴らしい。いつもの箱根でいつもの下りコーナー、アンジュレーションがあるコーナーでは、これまで多くのモデルで走行してきたが、ここを路面のねじれを感じさせないように走行するR.S.には驚かされる。どこかへ飛ばされる不安どころか通常のコーナーのように普通に駆け抜ける。コーナー出口に向かってストロークが伸び、縮むときにボディが不安定な動きになることがまったくなく、意に介せずフツーに走ることには驚かされる。
そうした高性能なサスペンションを持つモデルでは、低速走行時にヒョコヒョコする動きが付き物だが、低速走行時でもサスペンションストロークを感じさせるところがまた凄い。実は、指定の試乗コースではない別のルートでも試乗したのだが、そのルートは道が悪すぎて評価のしづらいワインディング。さらにタイトコーナーも多く、全体的に速度域が低いルートなので、かえってR.S.の良さが際立ったのだ。
荒れた路面でも乗り心地がよく、そしてタイトコーナーでの回頭性の良さが気持ちよさを加速させる。4モーションとハイドロリックコンプレッションコントロールの凄さを増々感じるのだった。
これらのハンドリングの良さは4WSとダンパーinダンパーだけでなく、ジオメトリーも大きく影響している。サスペンションレイアウトはフロントがマクファーソン・ストラットで、リヤはトーションビームだ。そのフロントサスペンションでは、ダブルアクシスサスペンションを装備する。これは仮想キングピン軸のオフセットを小さくでき、タイヤ接地面の中心付近へ荷重をかけられるようになり、またトルクステアも最小限に抑えられる効果がある。そしてR.S.には旋回性を高めるブレーキによるコーナリングアシストも装備されている。
このように、走るための装備に贅をつくしたメガーヌR.S.は、3ドアハッチバックのスタイルで、4人であれば普通に乗れる。またリヤラゲッジもスポーツモデルにありがちな狭く使い勝手の悪いラゲッジということもなく、サーキットはもちろん、市街地や日常使いでもストレスのない走行ができるスポーツモデルであることを改めて感心したモデルだった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
価格
メガーヌR.S. 464万円
メガーヌR.S.トロフィー(MT)494万円
メガーヌR.S.トロフィー(EDC)504万円
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みんなのコメント
こんな車はもう出ないだろうと思う。