■トヨタ新型「アルファード/ヴェルファイア」にミニバンだから…という妥協はナシ!
2023年6月21日に正式発表されたトヨタ新型「アルファード/ヴェルファイア」。ユーザーからの期待も非常に高く、初期生産分は完売と言う声も聞こえてきます。
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開発陣は「できる限り、お客様に早く提供できるように頑張っております!!」と語っています。
アルファードにとっては4代目、ヴェルファイアにとって3代目となる新型で大きく変わった所は、各々の“個性”をより明確にした事です。
「全ての乗員を幸せする」と言う開発コンセプトは共通ですが、アルファードは「フォーマル」、ヴェルファイアは「スポーティ」と明確です。それは見た目だけでなく、走りの部分も含めてです。
とはいえ、まずは見た目の部分から見ていきましょう。エクステリアは、より塊感を強調した堂々としたスタイルになっています。
フロントの力強さは相変わらずですが、ミニバンでは平板になりがちなサイドも造形の工夫により先代と同じ全幅(1850mm)にも関わらず、抑揚のあるフォルムが実現されています。
ただ、一つ残念なのはボディカラーで、白、黒、ゴールド(アルファードのみ)と素っ気ない所です。個人的には先代に用意されていたレッド系やブルー系、更には紫なども選択肢が欲しい所です。
そんな話を開発陣に突っ込んでみると「その辺りは、重々承知しております……」との事。恐らく、今は多くの人に素早く提供する事が優先事項で、あえてバリエーションを集約しているのでしょう。
インテリアは、基本的なレイアウトは変わりませんが、フル液晶メーターに加えて、センターにレイアウトされた14インチの巨大ディスプレイの採用でデジタル化が一気に進んでいます。
先代では多用されていたメッキや木目の使用は最小限ですが、ソフトパッド/樹脂をはじめとする素材の吟味や各部の精度向上などにより、質感は大きく引き上げられています。
インテリアコーディネイトはブラックに加えて、ベージュ(アルファード専用)、タン(ヴェルファイア専用)が選択可能です。フル液晶メーターは4つのデザインが選択できますが、筆者は専用インテリアカラーとのマッチングと言う意味では、アルファードはカジュアル、ヴェルファイアはスポ―ティが最もマッチしていると感じました。
運転席に座ると、若干ステアリングを抱え込むトラック的な運転姿勢だった先代に対し、新型はステアリング/シート/ペダルの位置関係は乗用車とほぼ同じように変わったことを感じます。TNGA世代のトヨタ車は運転姿勢にこだわっていますが、それがミニバンにもシッカリとフィードバックされている証拠です。
また、細かい話になりますが、視界が広くなった事も新型の特徴の一つです。Aピラーを前側に移動させた事でフロントウィンドウ面積拡大。加えて余計な突起がない水平基調のインパネデザインも相まって、特に下部の視認性が大きく向上しています。
さらに、フロントクォーターウィンドウ面積も拡大され可視範囲がアップ。ボディサイズは先代と同等ですが、取り回し性はかなり違います。
アルファード/ヴェルファイアの特等席ともいえる2列目は現時点では左右独立のキャプテンシートのみの設定。Zグレード用のエグゼクティブパワーシートでも十分です。
しかし最上級グレードのエグゼクティブラウンジ用は、飛行機のビジネスクラスに近いイメージでオットマンや回転格納サイドテーブルに加えて、スマホのような液晶パネルでエアコンやオーディオなどの操作も可能です。
■先代モデルから進化したトヨタ新型「アルファード/ヴェルファイア」の走りとは
走りの部分はどうでしょうか。今回新型アルファード/ヴェルファイア、共に様々なパワートレイン、グレード、駆動方式に乗ることができたので、もう少し突っ込んだ話をしていきたいと思います。
まずはアルファード・エグゼクティブラウンジのハイブリッドFFです。パワートレインは一新されダイナミックフォースエンジンの2.5L-NA+THSIIの組み合わせです。
先代は発進も加速も「ヨッコラショ」と1テンポ遅れるため、必要以上にアクセルを踏んでいましたが、新型は余裕すら感じるレベル。
常用域はとにかく「静か!」の一言。実はエグゼクティブラウンジのみ高遮音ガラスが採用されており、ロードノイズや風切り音はもちろん、エンジンの存在もほぼ感じないレベルになっています。
1/2列目間の会話明瞭度は非常に高く、2列目でナイショ話をしても確実にバレます。ただ、加速などでエンジンを3000rpm近く回すとダイナミックフォースエンジン特有の濁音のサウンドが耳につくのが残念な所。
ここでヴェルファイアのエグゼクティブラウンジのハイブリッドFFに乗り換えます。するとアルファードで気になっていたエンジンノイズが抑えられています。
パワートレインや遮音性能は同じなのになぜ。
そんな印象を開発陣に伝えると「確かに乗り比べると違う事は、我々も確認しています。恐らく、ヴェルファイアのみに追加されたフロントパフォーマンスブレースが振動を抑える、もしくは振動の伝達経路を変えているのではないかと予想しています」と教えてくれました。
フットワークはどうでしょうか。
新型はアルファード/ヴェルファイア独自の“乗り味”が特徴の一つです。具体的にはスプリング/ダンパー/EPSのセットアップ、タイヤの違い(アルファード:17インチ、ヴェルファイア:19インチ)に加えて、ヴェルファイアは専用のボディ補強(フロントパフォーマンスブレース)まで行なわれています。
まずはアルファード/ヴェルファイア、両方に共通した走りの印象です。一言で表すと「普通になった」です。
先代は真っすぐ走らないのに曲がりたがらないクルマで、ステアリングで強引に曲げる印象やある所から突然グラっと傾いてドキッとするような挙動などがありましたが、新型の直進時はビシーッと真っすぐ走るので修正舵は僅かだし、ステアリングを切るとノーズがスッと向きを変えフロントタイヤ依存ではなく4輪を効果的に使っての旋回は、クルマの一連の動きも自然で素直です。
この印象はカローラやクラウンのそれとほぼ同じと言っていいレベルでしょう。その結果、クルマへの信頼・安心が段違いに高い上にクルマがドライバーの操作に対して意のままに動いてくれるので、筆者は「ドライビングプレジャー」を感じたほどです。
つまり、トヨタ車共通の味「Confident(安心) & Natural(自然)」がミニバンでもシッカリと再現された走りなのです。
更にリアに独立したモーターを搭載するハイブリッドE-Four(電動AWD)にも試乗しましたが、リアの駆動をトラクションだけでなく旋回にも活用しているため、より前後バランスに優れるコーナリングとコーナー脱出時の後ろからの蹴り出しなど、より安心感が高くなっています。
ただ、FFよりも足の動きが僅かに渋い印象で、乗り心地の面では若干滑らかさが足りない感じも。と言っても、これは重箱の隅を突いた時の話で基本は同じ。そう考えると、非積雪地域でも積極的にE-Fourを選ぶ価値はあると思っています。
■例えるならアルファードはフランス車で、ヴェルファイアはドイツ車
予防安全は最新(第3世代)のトヨタセーフティセンス(TSS)が搭載されていますが、運転支援機能となるレーダークルーズコントロールやレーントレーシングアシスト(LTA)の制御は滑らか&信頼できるもので、高速道路では積極的に使ってしまいました。
この辺りはTSS自体の進化はもちろんですが、走る・曲がる・止まるの性能が大きくレベルアップした事も大きいはずです。土台が悪ければ、どんないい制御も活きませんので。
ここからはアルファード/ヴェルファイアの乗り味の違いについてです。
まずはアルファードから全て乗員の中でも“後席の人”を重要視したセットで、タイヤはエアボリュームの高い225/65R17を履きます。
フットワークは、薄皮一枚入ったかのような穏やかさ、ハンドリングはどちらかと言えばロールを活かして曲がる印象で、例えるならフランス車のようなイメージに感じました。
乗り心地は入力を乗員に伝えないソフトな感じですが、決してフワフワしたものではなく無駄な振動を抑えた上でバネ上をできるだけフラットにするボディコントロールはお見事。
路面の入力に対して時間をかけながらジワーッと収束させる吸収性は、どこか1980年代のクラウンを彷彿させるところもあります。
ただ、この印象はアルファードでは唯一となる周波数感応型ダンパー採用のエグゼクティブラウンジのみで、通常のダンパーを使っているZグレードは、エグゼクティブラウンジと乗り比べると入力に対するアタリの強さや振動収束の粗さが目立ちます。
その差は微々たるレベルではなく明確に違うので、個人的にはオプジョンでもいいので設定すべきだと思いました。
一方、ヴェルファイアは全て乗員の中でも“運転席”を重要視したセットで全車周波数感応型ダンパーを採用、タイヤは225/55R19を履きます。
ステア系は、かなりダイレクト感があり、ハンドリングはどちらかと言えばロールを抑えて曲がる印象で、例えるならドイツ車のようなイメージに感じました。
乗り心地はアルファードと比べると引き締められた印象ですが、19インチを履いているとは思えないアタリの柔らかさで、後席の快適性はフォーマルに使っても不満は出ないでしょう。
路面の入力に対してスッと短い時間で収束させる吸収性も相まって、バネ上のフラット感はアルファード以上です。目線の高いスポーティセダンと言ったら言い過ぎですが、そこに片足を踏み入れた走りを持っています。
ヴェルファイア専用となる2.4Lターボ+8速AT搭載モデルは、先代のV6-3.5L-NAに変わる高出力モデルになります。最高出力は279psとV6の301psに劣りますが、最大トルクは430NmとV6の361Nmを大きく上回ります。
1700~3600rpmで最大トルクを発揮するので、2トン越えの車両重量を感じさせない力強さに加えて、ガソリン車らしい伸びの良いフィーリングも魅力の一つでしょう。
8速ATはトルクを活かしたシフト制御で日常域はビジーシフトを抑えた制御、逆に高速への交流やワインディングなどでは小気味良いシフト制御を行なってくれます。
フットワークはハイブリッドモデルと車両重量はそれほど変わらない(Zプレミア同士だと10kg軽量)ですが、操舵初期の応答性やコーナリング時のクルマの動きは軽快で、ミニバンであることを忘れる一体感の高さを実感。これはスポーツセダンから乗り換えても納得の走りでしょう。
いつもより多めのインプレッションでしたが、総じて言うと見た目はキープコンセプトですが、走りは革新レベルの進化です。
どれくらい変わったかと言うと、先代までは「ミニバンの高級車」でしたが新型は「高級車のミニバン」と言っていいレベルで、ミニバンだから仕方ないと言った妥協はほぼ無いと言っていいと思います。
新型は海外への展開も予定していますが、個人的には欧州で勝負してほしいなと思っています。
開発陣にそんな話をすると「いくつか安全装備をプラスする必要がありますが、基本素性はそのままで大丈夫です」とのこと。チーフエンジニアの吉岡憲一氏は新型について「快適な移動をグローバルに」と語っています。
日本が作り出した「おもてなしのクルマ」、我々日本人はもっと誇りを持っていいと思っています。
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