夢のクルマが月額数万で乗れる？ 残価設定ローンのメリット・デメリットとは

■残価設定ローンの仕組みとは

　クルマの買い方としては、ローンを組むのが一般的です。ディーラーが用意するローンだけではなく、銀行のオートローンなどさまざまな種類があります。

　最近では、月額数万円から新車に乗ることができる残価設定型のローンというものがありますが、どのような仕組みなのでしょうか。

　従来型のローンは、頭金や下取り額を引いた総支払額に対して金利を乗せ、支払い月数で割るという仕組みでした。たとえば、600万円のクルマを金利5％の5年ローンで支払うと、毎月約11万3000円の支払いです。

　一方の残価設定ローンでは、頭金や下取り額を引いた総支払額に対して金利を乗せたうえで、5年のローンなら5年後に残存する価格を総支払額から差し引いた金額について、分割して支払うことができます。

　600万円のクルマの5年後の残価設定が200万円の場合、600万円に金利を乗せたうえで残価を引いた400万円分を5年ローンで支払うことになり、金利5％の場合は毎月約8万5000円の支払いとなります。

　5年後には、「残価の200万円を一括で払って同じクルマを乗り続ける」、「200万円について新たにローンを組んで同じクルマに乗り続ける」、「クルマを返却する」という選択をします。

　以上のように、残価設定ローンは従来型の自動車ローンにくらべ、月々の支払い額を抑えられる可能性があります。また、残価設定ローンを利用することで、従来型のローンの予算のままひとつ上のグレードに乗ることができるかもしれません。

　残価設定ローンが登場した背景には、クルマの製造技術の進歩やメンテナンスサービスの発展により、クルマの数年後の残存価値を把握しやすくなったことが挙げられます。

　また、残価設定ローンで返却される質の高い中古車を仕入れることで、中古車に保証をつける認定中古車制度も適用可能となり、再販時に十分な価値を付けられるようになったことなども理由です。

　実際にBMWのローンシミュレーターを使って、支払額のイメージを紹介します。なお、掲載したシミュレーターでの試算結果は目安です。実際の支払額は、BMW正規ディーラーへ確認する必要があります。

　BMWが用意している残価設定ローンでは、返済回数を36回、48回、50回の3パターンから選択し、本体価格から返済期間満了後の残価を差し引いた金額を分割して支払います。なお、残価の設定方法は2種類あり、どちらかを選択することになります。

　オープンエンド型の「BMWバリューローン」では、残価設定を指定された範囲内でユーザーが自由に設定し、月々の支払額を調整できます。

　ローン支払い終了時にクルマを返却する場合の残価は、返却査定時の市場価格に左右されます。なお、今回使用したローンシミュレーターでは、残価は支払回数別に固定されており任意に設定できませんでした。

　もうひとつのBMWフューチャーバリューローンは、クローズドエンド型と呼ばれる方式で、残価の指定による月々の支払額の調整はできませんが、残価が保証されているため、ローン支払い後の計画が立てやすいのが特徴です。ただし、保証がある分、残価の設定は低めに設定されています。

　残価設定ローンの注意点としては、まず決して安くお得なローンではないということが挙げられます。金利手数料は残価を差し引いた額ではなく、総支払額にかかるため、5年後に残価を支払って乗り続ける場合は、従来型のローンに比べ総支払額が高くなる場合があります。

　また、残価設定ローンでは、クルマの名義は残価分を含む総支払額を完済するまで、自分の名義に変更できません。設定された残価より好条件の買い取りや下取り案件があったとしても、残債がある状態では売却できないということです。これは従来型のローンと大きく異なる点です。

　これに加え、設定された残価でクルマを返却するには、販売元が基準とする内外装の状態を保持している必要があります。目立つ傷や汚れは査定を下げることになりますし、走行距離も、事前に定めた距離を超えると査定額が減額される要因となります。

　さらに、クルマが高額になればなるほど車両保険も高くなる傾向があるので、保険を含めたクルマにかかる費用全体で見ると、月々の負担を軽減できない恐れもあります。

　このように注意点はありますが、残価設定ローンの登場により、これまでは検討すらできなかった憧れのクルマの購入も視野に入れることができるようになりました。

　とくに、車検のある3年か5年を区切りとしてクルマを乗り換えている人には、一考の価値があるローンといえます。