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消滅は「人類の進歩」といえるのか? ベントレー・フライングスパー・スピードでザ・マッカランへ(2)

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消滅は「人類の進歩」といえるのか? ベントレー・フライングスパー・スピードでザ・マッカランへ(2)

短時間で長距離を走破するW型12気筒

同行してきた同僚と、運転を1度交代。筆者は、他人の運転ではクルマ酔いすることが多い。ところが、ベントレー・フライングスパーでは杞憂だった。できるだけ空想したり、美しいダッシュボードの仕立てを眺めていたからかもしれないが。

【画像】ベントレー最後の「W12」 フライングスパー・スピード・エディション12 豪奢な現行モデルたち 全105枚

化粧パネルには、W型12気筒ユニットの点火順序を記した数字が刻印されている。カフェインが切れた頃、うたた寝してしまったらしい。エンジンは極めて静かに回転し、ドライブトレインは上質に路面へパワーを伝える。緊張を誘う要素は微塵もない。

しばらく立ち止まって、景色を鑑賞したいと思う場所もあった。しかし、フライングスパー・スピード・エディション12にとって最高といえる道が続いているから、そんなアイデアはすぐに忘れてしまう。

W12エンジンは、乗員にストレスを与えず、可能な限り短時間で長距離を走破することを得意としている。車重が2437kgあったとしても、フライングスパーにはオーバースペック。アクセルペダルを少し深めに踏み込んでも、ノイズは殆ど響いてこない。

スペック表には驚くような数字が並んでいるが、存在感は極めて小さい。特筆すべき強みの1つといえる。

スコットランドの田園地帯に広がる、適度な起伏とカーブが連続する区間で、フライングスパー・スピード・エディション12へ軽くムチを入れる。変速はこれ以上ないほど滑らか。5316mmある全長を感じさせないほど、操舵に対しダイナミックに反応する。

例えようがないほど、素晴らしい

燃料タンクの容量は90L。満タンで約650km走れる。A95号線を進み、アベラワー蒸留所を通過。ザ・マッカラン蒸溜所へ辿り着いた時の燃費は、平均で9.0km/Lだった。

カースティン・キャンベル氏への質問のように、運転を終えて、筆者も今回の印象を自問してみる。「素晴らしい」という、シンプルな言葉が初めに出てきた。褒め称えるような表現も頭に浮かんだが、数時間の体験を要約すると、このひとことに帰着する。

例えようがないほど、素晴らしい。ウッドとレザーがふんだんに使われたインテリアも、ベントレーらしい味わいだったと思う。セレブではないから、墓穴を掘らないよう、感想はこのくらいにしておこう。

高級ウイスキーに馴染みがない自分にとって、4万ポンド(約756万円)の「ホライズン」の価値を正しく理解することは少々難しい。それでも、物語性には共感できる。特別さにも。

初めて訪れたザ・マッカラン蒸溜所のスタッフは、ベントレーのスタッフと印象が重なった。それぞれがエキスパートで、技術や知識を追求した人ばかり。非常に仕事熱心だが、とても親しみやすく、筆者を温かくもてなしてくれた。

ホライズンは、700mLのボトルで700本しか提供されない。ザ・マッカランのクリエイティブディレクター、ジャウマ・フェラス氏の話では、その希少性は10台以下の限定生産モデルに相当するという。5000本でも、かなり希少な扱いになるそうだ。

消滅は人類にとっての進歩といえるのか

特別なボトルと、捻れたように成形されたホルダーには、ベントレーの内装と同じ素材
を使用。ウッドとレザー、ガラスを職人が加工し、丁寧に仕上げられている。それを、6本のシェリー樽で寝かされたシングルモルト・ウイスキーが満たしている。

ベントレーを運転する時は、予め特別な高級車だということを、大半の人は理解している。現実離れした価格を踏まえて、印象や評価にはバイアスが掛かる。ウイスキーでも同じといえるだろう。

ホライズンは、既にすべて先約が決まっているそうだ。蒸溜所を旅立った瞬間から、価値はさらに跳ね上がる。市場にいる人々によって、本当の価値が決められていく。

ほんの少しだが、筆者も口にすることができて光栄だった。アルコール度数は46.6%ある。しかし、もう2度と味わえないことが、深く悲しいとまでは感じなかった。

ベントレーのW型12気筒エンジンは、今後2度と作られることはないだろう。四半世紀に渡って、エネルギー効率を高め、排出ガスを削減してきた。内燃機関としての性能を追求するため、多くの時間が割かれてきた。

これほど偉大なユニットが、この世から消えてしまうという事実は、人類にとっての進歩といえるのだろうか。それでも時間が経てば、W12エンジンのベントレーは、少しお手頃な価格で市場に流通し始めるはず。

まだ味わうチャンスはある。飲むと消えてしまう、シングルモルトとは違って。

番外編:高級ウイスキーの世界

ザ・マッカランは、ウイスキー界のベントレーだと例えられる。自ら主張されることもある。今回筆者が体験した限り、その表現に偽りはないだろう。

同社は創業200周年を迎えた老舗で、広大な敷地を有し、2018年には新しい蒸留所も竣工させた。2019年には、モダンなビジターセンターもオープンしている。

工場には36基の蒸留器が並んでおり、年間1200万Lものスピリットが蒸留されている。スタッフは約270名。その中の10数名という限られた人が、ウイスキーのフレーバーに影響を与える、強度63.5%のスピリットへ携わっている。

スコッチ・ウイスキーと呼べるようになるまでに、オーク樽で3年以上寝かせる必要がある。ザ・マッカランの倉庫には、45万本を超える樽が並んでおり、中には81年物も保管されているそうだ。

希少性が故に、偽造の恐れもあるとのこと。そのため、ボトルのキャップやシールは、継続的に技術開発が進められている。ウイスキーを転売する、投資目的のバイヤーも少なくないらしい。

「お酒を飲んで楽しむ人もいれば、残して楽しむ人もいます」。フェラスが説明する。「ホライズンのような例は、投資家からの注目も高くなります。二次市場は巨大です。しかし、わたしたちは実際に飲んでもらうよう、常に務めています」

「オークションに出たような場合は、ボトルの番号を遡り、購入者へ連絡を取ります。関係性を見直したり、丁寧にお声がけすることもあるんです」

ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)のスペック

英国価格:23万1200ポンド(約4370万円)
全長:5316mm
全幅:1978mm
全高:1484mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:340g/km
車両重量:2437kg
パワートレイン:W型12気筒5950cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:635ps/6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/1500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

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みんなのコメント

3件
  • kok********
    ベントレーもマッカランも素晴らしい。
  • 308643egats
    約2.5トンもの車重、
    6リッターW12気筒エンジン、
    馬力も600馬力以上有るのにリッター約7kmも走る事に非常に驚いた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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