もくじ
ー 新型カイエン MLBプラットフォームがベース
ー スポーツSVR スペックは同等
ー アナログ式回転計 スポーツカーメーカーの証し
ー リラックスできるのはカイエン 速さはSVR
ー 驚愕のエンジンサウンド 最高のオールラウンドモデル
ー 2.3tのフィエスタST 両者の違いはただひとつ
ー テスト車のスペック
ー 番外編:ユーズド・スーパーSUV 5選
新型カイエン MLBプラットフォームがベース
さまざまな要素を「融合」したクルマづくりというコンセプトを掲げる自動車メーカーがいる。この明らかなマーケティング用語が、快適さと機敏さ、速さと経済性、さっそうとしたスタイリングと実用性といった、ユーザーが思いもしないような、相反するキャラクターを詰め込んだクルマ作りを指すのであれば、これほど便利な言葉はないだろう。
だが、新型ポルシェ・カイエン・ターボと、最近フェイスリフトを受けたばかりのレンジローバー・スポーツSVRはそうしたクルマではない。「融合」という言葉もこの2台を正しく表現できていない。この2台は、大型SUVのもつファミリーカーとしての実用性を最大限に活かしつつ、能力を徹底的に磨き上げられたモデルであり、「融合」ではなく「全能」のモデルなのだ。
実用的なファミリーカーでありながら、ラグジュアリーカーであり、スポーツカーでもある。そして、想像もできないようなオフロード性能を備え、想像以上の重量を牽引することもできる。走らせれば、ほとんどのGTクーペより速く、エアポートリムジンのようには見えないにもかかわらず、見事にパッセンジャーをもてなしてみせる。
もし、四輪駆動を必要とするようなモダンライフを送っているのなら(まさに今すぐわたしに必要なものだ)、この2台以上に相応しい存在はいない。カイエンのモデルチェンジを機に、レンジローバー・スポーツSVRとの比較試乗を思い付いたが、この新型カイエンが下敷きとするフォルクスワーゲングループのスチール&アルミニウム製MLBプラットフォームはますますその汎用性を高めており、同じプラットフォームを共有するモデルには、アウディQ7、ベントレー・ベンテイガ、ランボルギーニ・ウルスとフォルクスワーゲン・トゥアレグがある。
10万ポンド(1454万円)のプライスタグを掲げるトップモデルのターボは、4.0ℓV8ツインターボエンジンをフロントに積み、8速オートマティックギアボックスを介して四輪すべてを駆動させる。前後輪へのトルク伝達はクラッチによって遮断することも可能だ。エアサスペンションが標準となり、48Vのアクティブアンチロールバーシステムがオプション設定される。このシステムにより、ボディをフラットに保つか、より多くのホイールトラベルを許容するか、ドライバーの選択に応じてアンチロールバーの接続状態を瞬時に切り替えることができる。
550psのパワーを誇るエンジンは、1960rpmという低い回転域から78.4kg-mというトルクを発揮する。こうした結果、新型カイエンの乾燥重量は2175kgにも達するが、ハードウェアに関して、このクルマ以上に充実したモデルは限られている。
スポーツSVR スペックは同等
そして、そんな1台がジャガー・ランドローバーのスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が創り出したレンジローバー・スポーツSVRとなる。2014年にこのクルマが登場したとき、スポーツSVRが積んでいたのは550psを発揮するスーパーチャージャー付5.0ℓV8エンジンだったが、どうやらこれでは十分ではなかったようだ。今回のフェイスリフトにおけるメカニカル部分の変更箇所はそれほど多くはないが、なかでも特筆すべきは575psへと引き上げられたパワーと、1.9kg-m強化され71.3kg-mに達するそのトルクだろう。しかし、スーパーチャージャーの特性上、最大トルクが発生する回転数は3500rpmからとなる。
その他のメカニカル構成はポルシェとほとんど変わらない。8速オートマティックギアボックスを介して四輪全てを駆動し、ほとんどの場面でフロントとリアへのトルク配分は50:50となるが、センターデフに組込まれたクラッチにより、前後輪のいずれかへ100%のトルクを送ることも可能だ。カイエンとは違い、リアにはロッキングディフェレンシャルが標準で装備され、エアサスペンションとアクティブアンチロールバーも標準となるが、アンチロールバーの制御は48Vシステムではなく油圧式だ。
牽引重量はカイエンの3500kgに対して3000kgだが、スポーツSVRにはより低いレシオが与えられており、実際にテストをおこなったわけではないが、マッドな状況ではより優れた能力を見せるだろう。
10万1145ポンド(1471万円)のスタートプライスを掲げるSVRは、9万9291ポンド(1444万円)のポルシェを若干上回るが、同じようなスペックで比較した場合、その結果は逆転する。実際のところ、両者とも甲乙つけがたい。これほどのモデル同士でも価格面での争いは非常に厳しいのだ。
これでも足りなければ、見るべきはボンネットだろう。レンジローバー・スポーツは長きに渡って、(表現が難しいが)世界でも風変わりな美意識をもつ企業にとってのキャンバスであり続けており、今回はレンジローバー自身がそれをやってみることにしたのだ。オプション装着前で2310kgに達するこのクルマの軽量化に、カーボンファイバー製ボンネットが果たした役割に疑いはなく、6225ポンド(90万5000円)のオプションで無塗装のままにすることも可能だ。
自分がこのオプションを選ぶかどうか分からないが、実のところ、この2台にどれほど多くのことを望むかどうかもよく分かっていないのだ。
アナログ式回転計 スポーツカーメーカーの証し
少なくとも、早朝カイエンに乗り込み、郊外を走り回ることでこのテストを始めるまではそう思っていた。そのエクステリア同様、カイエンのインテリアは比較的控え目だと言えるが、優れたサポート性をもつシートと調整幅の大きいドライビングポジション、さらにはタッチ操作可能な多くのインストゥルメントとコントローラーがドライバーの操作を待っている。実際、お望みとあらば、このインフォテインメントシステムの比較だけで、ゆうに6ページの記事がかけるくらいだ。
ポルシェがアナログ式回転計をメーター中心に残したことには敬意を表したい。おそらく、カイエンに乗るたび、ポルシェは依然としてスポーツカーメーカーだということを思い出させてくれるだろう。その両サイドには、ラジオ局以外であれば、ドライバーの求めに応じて様々な情報を映し出すデジタルメーターが配置され、センターコンソールにはフォルクスワーゲングループでお馴染みのシステムによく似た大型タッチスクリーンが設置される。その操作性は素晴らしいが、残念ながらBMWのレベルには達していないと言わざるを得ない。
ナビゲーションシステムの操作性は驚くほど向上している。トランスミッショントンネル上には素晴らしい感触を返すボタンが並び、シフトレバーによってドライバーズシートからはすべてを見渡すことができないが、その操作は時間が経つのを忘れさせるほどだ。実際、薄曇りの夏の夜明けからの4時間をボタン操作に没頭してしまった。
全幅1983mm、全長4926mmのカイエンは大柄なモデルではあるが、見晴らしの良いシートポジションと優れた視界によって、このクルマがその大きさを感じさせることはほとんど無い。
ノーマルモードを選択している限り、市街地ではエンジンとトランスミッションに活気が足りないように感じるが、おそらくは排ガス規制を考えてのことだろう。知らず知らずのうちに、ランナバウトへと進入する際には正しいギアを選択すべく時折マニュアルでシフトダウンを行い、自動休止しているエンジンを早く再起動させるべくブレーキを早めにリリースすることで、前走車との車間を詰めたりするようになっていた。
リラックスできるのはカイエン 速さはSVR
だが、こうした設定についてポルシェを責めることはできない。減速時にエンジンを自動休止させるようになる前は、出来るだけ高いギアを維持しようとしない方が、スムースな運転がしやすかったというのはおおむね事実なのだ。
だが、カイエンはいとも簡単にこうした運転を可能にしている。キャビンに届くノイズはわずかで、その乗り心地は若干のピッチとロールを伴う抑制の効いたものだ。このクルマより簡単かつ安全に、そしてリラックスしたまま英国を横断することができるモデルなどあるだろうか? 実際、そんなモデルはそれほど多くはない。そして、その何台かはカイエンと同じプラットフォームを共有しているのだ。
だが、そのなかにはランドローバーやレンジローバーのモデルも含まれている。そして、レンジローバー・スポーツSVRに乗れば、おそらくカイエンよりも早く目的地に到着できるだろう。
インテリアに関してはカイエンの勝利だが、SVRではフロントシート背面がプラスチックカバーで覆われ、レザー模様がスポーツウェアブランドのマークのように見えるとはいえ、もちろん、レンジローバー・スポーツのキャビンも素晴らしい出来栄えではある。
快適で、カイエンよりもわずかに着座位置が高く、そのインフォテインメントシステムは、少し前にレンジローバー・ヴェラールでデビューしたばかりの最新式だ。ある面ではポルシェよりも優れたインテリアだとも言えるが、残念ながらそうした点はあまり多くはなく、さらに、この2台よりも素晴らしいキャビンをもつモデルは他にある。
しかし、デジタルスクリーンからその機能設定が可能な、ステアリング上に設けられた独創的なスイッチ類は非常に優れたアイデアであり、こうした素晴らしい点が他にも数多く隠されているに違いない。
驚愕のエンジンサウンド 最高のオールラウンドモデル
リラックスという点ではSVRよりもカイエンに軍配が上がる。その理由はエンジンスタートボタンを押した瞬間から明らかだろう。SVRが積む5.0ℓV8エンジンのサウンドはまさにマッスルカーのそれであり、GM製V8ですら低回転では音量を控え目にしている現代では、マッスルカー以上だとも言える。これほどのサウンドを響かせるのはAMGか、スーパーカーメーカーくらいだが、それもSVRにふたつあるタッチスクリーンの下側に配置されたエグゾーストボタンを押すまでの話だ。
SVRのダイナミック性能を象徴するのはまさにそのエンジンサウンドだ。この2台のようなシャシーのダイナミクス性能をもつ自動車メーカーをふたつ選び出すとすれば、JLRとポルシェほど信頼できるメーカーはいないだろう。
両者とも乗り心地は良好だ。その乾燥重量を考えれば、それも当然と思うかも知れないが、この2台はボディコントロールにも優れている。どちらか1台が明らかにより抑制の効いた乗り心地だと言えば嘘になるが、コーナーでは両者の違いがより明らかとなる。間違いなく、カイエンの方がこの星で最も優れたオールラウンドモデルだと言えるだろう。
驚くほどのグリップと落ち着きを伴って、荒れた路面の曲がりくねったワインディングを通過してみせるだけでなく、こうした道でもっとも速い1台でもあるだろう。
レンジローバー・スポーツに乗り換えると、カイエンと同じような走りを、さらなる活気とともに見せてくれる。だが、全長4879mmのSVRはカイエンよりもわずかに短いものの、全幅は同じであり、カイエンを上回る重量(さらに、ランドローバーは実際に計量を行うと、その結果は公称重量を上回ることがある)のせいで、レンジローバーの方が機敏さには欠けるはずだ。
2.3tのフィエスタST 両者の違いはただひとつ
しかし、実際はそうではない。ステアリングを切れば、ただちにコーナーへの情熱も露わに、フォード・フィエスタSTのようにフロントシートあたりを軸に旋回するように感じられるが、こちらのフィエスタSTは2.3tの重量と全高1803mmのボディをもち、最大渡河深度は850mmにも達している。
さらに、ボディコントロールもカイエンの上を行く。今回のテストルートには、サスペンションのストローク不足によって、カイエンではタイヤが一瞬浮き上がったように感じた見晴らしはいいものの、路面の荒れた太鼓橋があったが、同じ速度で突っ込んだSVRは、まるで滑るかのようにここを通過してみせた。
さらに、そのエンジンサウンドは魅力的で、実際、時には魅力的に過ぎると感じるほどだ。単にドライブモードで走り回っている時でさえ、カイエンでは聞くことのできない迫力あるサウンドを響かせる。そして、よりスポーティなモードを選択すれば、スロットルから右足を離すたび、まるでナポレオン戦争の大砲を再現したかのような爆音がリアからとどろくのだ。
楽しめる? もちろん。
うんざりする? もしかしたら。
しかし、最終的にこの2台を分けているのが、そのエンジンサウンドなのだ。パフォーマンスとその能力に差はない。価格、ボディサイズ、装備も同等であり、1700ℓ近い巨大なラゲッジサイズも同じようなものだ。ポルシェのほうが若干経済性に優れ、リアのレッグルームにアドバンテージがあるが、両者の違いはその程度だ。2台ともその与えられた目的を見事にこなしてみせる。
両者を分かつのは、ドライバーがその目的をどれだけ派手に達成したいと思うかだ。ポルシェを選ぶなら、洗練され、容易にその能力を引き出すことができる、磨き上げられた、恐らくは「優れた」モデルが欲しいということだろう。それでも、レンジローバー・スポーツSVRに乗ったドライバーがアクセル操作とともに、コーナーを走り抜けていくたび、それをうらやましいと思うに違いない。
テスト車のスペック
ポルシェ・カイエン・ターボ
■価格 9万9291ポンド(1444万円)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 285km/h
0-100km/h加速 4.1秒
■燃費 8.5km/ℓ(複合サイクル)
■CO2排出量 267g/km
■乾燥重量 2175kg
■パワートレイン 3996cc V8ツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 550ps/5750rpm
■最大トルク 78.4kg-m/1960rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
レンジローバー・スポーツSVR
■価格 10万1145ポンド(1471万円)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 280km/h
0-97km/h加速 4.3秒
■燃費 7.8km/ℓ(複合サイクル)
■CO2排出量 294g/km
■乾燥重量 2310kg
■パワートレイン 4999cc V8スーパーチャージャー
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 575ps/6000rpm
■最大トルク 71.3kg-m/3500rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
番外編:ユーズド・スーパーSUV 5選
ポルシェ・カイエン・ターボ 価格:1万ポンド(145万円)から
美しいとはいえない初代カイエン・ターボは史上初のハイパフォーマンスSUVだ。この初代に対する微妙な評価がお手頃価格につながっている。2003年登録の走行距離14万5000kmの車両を1万ポンド(145万円)以下で手に入れることができる。
メルセデス-AMG ML63 価格:1万5000ポンド(218万円)から
2006年、MクラスにAMGがその息吹を吹き込み誕生したのがこのモデルだ。自然吸気6.2ℓV8エンジンは510psを発揮する、カイエン・ターボ以上のマッスルカーであり、驚愕のサウンドを響かせる。2007年登録の走行距離11万3000kmの車両が1万5000ポンド(218万円)で購入可能だ。
BMW X5 M 価格:2万ポンド(291万円)から
555psを誇るX5 Mはクラスを席捲するはずだったが、そのV8ツインターボにはMモデルに期待されるスペシャルなフィールが不足しており、ハンドリングでもポルシェの後塵を拝している。そのパフォーマンスを考えれば、2009年登録のモデルが2万ポンド(291万円)で購入できるのはお買い得といえるだろう。
レンジローバー・スポーツSVR 価格6万9000ポンド(1003万円)から
スポーツSVRは3年落ちでもその価値を維持しており、走行距離2万7500kmの2015年モデルを手に入れるには6万9000ポンド(1003万円)が必要となる。SVRと同じようなモデルは依然としてほかになく、この価格もあるひとびとにとっては妥当といえるだろう。
アウディSQ7 価格6万4000ポンド(931万円)から
比較的新しいモデルであるSQ7が積むツインターボディーゼルのパワーは434psに留まるが、そのトルクは驚きの91.7kg-mに達する。さらにそのドライビングフィールとコーナリング性能も特筆に値する。6万4000ポンド(931万円)で、走行距離わずか数千kmの2年落ちモデルを手に入れることができる。
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