経営破綻の新興EV、買い時?
SUV「オーシャン」を開発した米国のEVメーカー、フィスカー・グループが連邦破産法第11条の適用を申請したというニュースが伝えられた。ここ数か月、経営難に関する報道を見てきた人にとっては大きな驚きではなかっただろう。
【画像】品質は低くない。航続距離の長い野心的なEV【フィスカー・オーシャンの内外装を写真でじっくり見る】 全44枚
しかし、このチャンスを逃すまいとする大胆な人々もいる。オーシャンの新車や中古車の中に「掘り出し物」があるのではないか、と考えているのだ。
破産申請に入った新興企業のEVはお買い得なのか、あるいは損なのか。現在もオーシャンが販売されている英国からレポートをお届けする。
現在の販売状況は?
2016年に設立されたフィスカーは、2023年までに資金が枯渇し、その後ニューヨーク証券取引所から上場廃止となった。今年3月、フィスカーは事業継続のために人員を削減し、新型車の開発を一時停止したほか、オーストリアのマグナ・シュタイヤーによる委託生産を停止すると発表した。そして4月には、連邦破産法第11条の適用を申請する可能性を指摘し、6月17日に実行に移した。
フィスカー唯一の市販モデルであるオーシャンの発売当初の英国向け価格は、73kWhバッテリー、シングルモーターの「スポーツ」グレードが3万6000ポンド(約735万円)、113kWhバッテリーとツインモーターを搭載した中価格帯の「ウルトラ」が5万900ポンド(約1040万円)、最上位グレードの「エクストリーム」が5万8685ポンド(約1200万円)だった。
しかし4月、資金調達のためにエクストリームの価格を1万4000ポンド(約285万円)、ウルトラの価格を1万2000ポンド(約245万円)、スポーツの価格を6000ポンド(約120万円)引き下げ、販売促進を図った。
同時に、4月5日以降にオーシャンを購入する人には、車両保証および重大な欠陥に対するすべての請求権が永久に行使不可能であることを承知の上で購入すること、という説明がなされた。その後、英国ではオフィスが閉鎖され、すべての連絡は米国本社と直接行うことになった。
生産を委託されていたマグナ・シュタイヤーは、4月までに約1万台を生産した。今年3月までに約5000台が売れ残っている。生産に必要な予備部品やボディパネルの備蓄があると仮定すると、第三者によって市場に出回る可能性がある。
車載ソフトウェア・アップデートについては定かではない。保証については、RAC(日本のJAFに相当する組織)やWarrantywiseなどの保証会社から受けることができる。
今、いくらで買えるのか
驚くべきことに、このような状況にあっても、英国ではオーシャンの新車や中古車が売れている。オーナーズクラブの1つに、フィスカー・オーシャン・オーナーズUKがある。会員はソフトウェア・アップデートについてWebサイトに投稿しており、中には成功した人もいるようだ。
少し古い投稿では、いくつか深刻な問題についても言及されている。しかし、フィスカーの訪問サポートチームの評価は上々なようだ。
イングランド南東部の代理店EV Expertsは未だに販売促進活動を行っており、1日に最大2回の試乗会を開催したという。
EV Expertsの共同設立者であるエステル・ミラー氏は取材に対し、「当社ではデモンストレーションを行っていますが、フィスカーは、納車前点検に必要な工具が壊れている問題で新車の納車が遅れている、と言っています」と語った。
EV Expertsには2台の展示車がある。3万9120ポンド(約800万円)のオーシャン・ウルトラと4万4075ポンド(約900万円)のオーシャン・エクストリームだ。
他の地域では、独立系ディーラーがほぼ新車同然の中古車を販売している。キングズ・リンのディーラーでは2か月前に入荷した16台のうち、5台のエクストリームと1台のスポーツが残っている。走行距離は少なく、1年のRAC保証が付属する。
例えば、オーシャン・エクストリーム、ツインモーター(4WD)、113kWhバッテリーで2023年登録、走行距離1680kmの個体は2万8558ポンド(約580万円)だ。
下がり続ける中古車の価値
購入方法としては現金ではなく、PCPという残価設定ローンが安全かもしれない。PCPは頭金の支払いの必要がなく、一定期間月次で支払いを行うもので、最終回の支払い後は車両の返却、または契約時に設定した残価での買い取りが可能だ。
フィスカーの経営難が広く知られるようになると、オーシャンの中古車の「価値」は大きく落ち込んだ。英国で残価情報などを取り扱うCap HPIは、5月だけでオーシャンの残価見込みを48%も引き下げている。倒産発表後の7月には、さらに10%下げた。
Cap HPIの予測戦略責任者であるディラン・セッターフィールド氏は、「これらの下落を受けて、5月末にオーシャンの3年間予測を平均でさらに31%引き下げた。引き続き状況を注視していく」と述べた。
車両保険に関しては、上記のオーシャン・エクストリームに対してAdmiral社から797ポンド(約16万円)の見積もりが提示された。しかし、スペアパーツの入手可能性や修理期間への影響を考えると、保険会社がいつまでカバーしてくれるのかは不明瞭だ。
Admiral社の広報担当者は、「このような状況を踏まえ、フィスカー・オーシャンの新規加入を継続するかどうか検討中であり、修理ネットワークと連絡を取り合っている。既存のお客様におかれては心配が多いかと思うが、当社は引き続きサポートしていく」と述べた。
オーナーの見解
金融業のカヴ・パテルさんは、昨年11月にオーシャン・エクストリームを新車で購入した。彼の家族にとって4台目のEVであり、航続距離、価格、快適性、運転の楽しさに非常に感銘を受けている。
パテルさんの車両はソフトウェアの問題に悩まされたが、2か月前の2.0アップデートですべて解決したという。さらに最近、2.1の無線アップデートを受けた。パテルさんは今、それが最後のアップデートになるのではないかと考えている。
「技術的なバックアップは崖っぷちだ。優秀な訪問サポートチームが2つあるが、いつまで対応してくれるかはわからない」
パテルさんはPCPで契約しているため、現金で購入した人たちよりも有利だと感じているという。
「EVは信頼性が高いので大きな問題は心配していないし、フィスカーを買い取る企業も現れると思う。今、オーシャンを買うべきか? わたしならじっと我慢して様子を見るだろう」
EVとしての評価は?
AUTOCAR英国編集部はオーシャンの試乗レビューで「4つ星半」の高評価を付けている。筆者は今回の取材で初めて実車に触れた。いくつかトラブルはあるようだが、モデル自体は、少なくとも現在の大幅に値下げされた価格では納得のいくクオリティだ。
四輪駆動のSUVで最高出力550ps、航続距離は約640km。安っぽいスイッチ類やプラスチックも、許せる程度に仕上げられている。ボタンを押すとすべての窓が下がる「カリフォルニア」モード、「タコトレイ」と呼ばれる折り畳み式の運転席テーブル、ソーラールーフは好印象だ。
走らせてみると、速くて静かで快適だった。モデルとしては間違いなく、フィスカーの灰から拾い上げるにふさわしいと思う。
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