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もしブリヂストンのF1復帰が実現した場合、待ち受けるハードルは何なのか? ピレリが語る参戦初期の苦労話

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もしブリヂストンのF1復帰が実現した場合、待ち受けるハードルは何なのか? ピレリが語る参戦初期の苦労話

 2025年からの次期F1タイヤサプライヤーを巡る入札は先日締め切られたが、現行サプライヤーのピレリに加えて日本のブリヂストンも入札したと考えられており、この2社による選考が進んでいると言われている。そのためパドックでは、ブリヂストンの15年ぶりとなるF1復帰の可能性が話題となっている。

 ブリヂストンは1997年にF1に参入すると、当初はグッドイヤーとのタイヤ戦争を経験した。その後1999年から2シーズンはワンメイク供給、そして2001年からはミシュランと激しい開発競争を繰り広げ、フェラーリのミハエル・シューマッハーの黄金時代にも貢献した。

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 ミシュラン撤退後も2007年から2010年までワンメイク供給を続けたブリヂストンは、2011年からピレリにその座を譲ってからは、日本のスーパーGTなどを主戦場としてきた。そしてついに今回、世界最高峰の舞台へのカムバックに挑戦することを決断したようだ。

 前回のサプライヤー公募は2018年に行なわれ、2020年~2023年の供給が対象となっていた。ピレリはそこで韓国のハンコックを退けて2011年から続くタイヤ供給を継続。18インチタイヤの導入がコロナ禍の影響で1年遅れたこともあって、最終的に2024年までタイヤを供給した。そして2025年からの供給に向けては、ピレリとブリヂストンが争っていると見られる。

 現在は技術的な審査を経ての選考第2フェーズに入っているが、これは商業面の審査。タイヤサプライヤーはF1の公式パートナーでもある。純粋な金額の話だけでなく、どれだけ看板を掲げるか、どのレースでタイトルスポンサーとなるのか、ひいてはゲストパスの枚数まで、多岐に渡る。

 両社が“いくら出すか”の競争ももちろんあるが、それだけでは決まらない。そこにはF1チーフテクニカルオフィサーのパット・シモンズの見解も関わってくる。一方で各チームには基本的には発言権がなく、FIAやF1に対する非公式な会話の中で意見を述べるくらいしかできない。

 3月20日にスタートした現在の入札プロセスは、2025年~2027年シーズンでの供給をを対象とするもので、契約にはF2やF3での供給も含まれる。なお、2028年はオプション契約となる。

 次期サプライヤーによって供給されるタイヤについてFIAは、「作動温度領域が広く、オーバーヒートが少なく、デグラデーション(性能劣化)を抑える一方で、戦略のバリエーションを生む可能性がある」ようなタイヤでないといけないとしており、入札者はこの目標を達成することを約束せねばならない。またFIAは、F1で使用されたタイヤの環境負荷に関するデータを提供することも求めている。

 現在のF1パドックには、ブリヂストンと仕事をした経験がある者も多いが、その信頼性を疑う者はいないだろう。現在F1のCEOであり、ブリヂストンがサプライヤーだった時代にフェラーリF1の主要人物だったステファノ・ドメニカリもその例外ではない。

 ただブリヂストンが落札を勝ち取った場合、契約2年目となる2026年シーズンにテクニカルレギュレーションが大きく変わることは彼らにとって厄介だろう。なぜなら、彼らが復帰するとなれば、まずは現行車両に適合した2025年用タイヤを開発しなければならず、それとほぼ並行してまだ見ぬ2026年マシン用タイヤも開発しなければならないのだ。

テスト車両が最大の課題?

 もちろん我々には知る由もないことだが、ブリヂストンは既にファクトリーで研究開発を進め、かなりの作業を終えている可能性もある。ただサーキットでのテスト走行が少し厄介かもしれない。

 ブリヂストンがサプライヤーに内定すれば、当然2024年のインシーズンテストプログラムはピレリから引き継がれることになる。テストは各チームが分担するというレギュレーションになっており、全チームが少なくとも1回は同年中にブリヂストンタイヤをテストできるが、とはいえテスト機会は少なく、実施されるのも来年から。本来であれば、ブリヂストンは出来るだけ早い段階からプライベートテストを実施し、より多くの実走データを得たいはずだ。

 そうなると必要になってくるのがテスト車両。そしてそれは現行チームの2022年モデルでないといけない。これが厄介なのだ。

 ピレリがテストプログラムを開始した時、2009年を最後にF1から撤退したトヨタの『TF109』を使うことができた。TF109はほぼ現役のマシンであり、なおかつトヨタはF1から撤退したため、中立の立場であった。

 ただTF109も、年々時代遅れになっていった。ダウンフォースレベルも変わっていった上、そもそも再給油が可能だった時代の燃料タンクの小さい車両であることも足枷となった。

 そのためピレリは新たな選択肢……地まり特定のチームと契約することを必要としていた。そして2012年3月、ルノーからチーム名を変更して間もないロータスから、2010年型マシン『ルノーR30』の供給を受けることで合意した。

「これは本当に複雑なことだった」

 そう振り返るのは、ピレリのF1責任者であるマリオ・イゾラだ。

「トヨタの車両はもう手に入らないし、パーツも不足していた。当然車両を探す必要があった」

「ルノーであれば入手可能であった。トップチームの車両を使って、トップチームにアドバンテージを与えないという選択をしたが、当時はそのアドバンテージについて多くの議論があった」

 イゾラが言うように、当時はテストカーの供給チームが期せずしてアドバンテージを得るのではないかという懸念があったが、ピレリはルノーのテストカーがショーカー専用のスタッフによって運用され、そのデータがメインのレースチームには渡らないと強調した書簡を各チームに送った。

 またその書簡の中には、データの大半はそもそもルノーではなく、独立した赤外線システムによってピレリ側に直接転送されることも強調されており、データの流れについて示した詳細な図まで含まれていたという。さらには各チームの代表者にテストを見学させることも約束したのだ。

 ただ、ロータスがアドバンテージを得たという声が消えることはなかった。2012年から2013年にかけて、キミ・ライコネンが表彰台の常連になり2勝を記録したこともその風潮を後押しした。あれから10年が経ち、F1の競争力も高まった今、テストカーにどのマシンが使われるかの議論は前回よりも激しくなると予想される。

 イゾラは、ブリヂストンのように新規で参戦するメーカーがこういった課題に対処するのは容易ではないだろうと考えている。

「テストさせてもらえるチームがひとつなら、そのチームのクルマに合わせた開発になってしまうものだ」

「また、特定のチームのマシンを使う場合、そのチームにとって影響力のないドライバーを起用することを納得してもらうのも難しい。普通なら、チームはレースドライバーだったりテストドライバーだったり、自分たちのドライバーを使いたがる。これは理想的な状況ではない」

 とはいえテストカーは多くの課題のひとつに過ぎない。ドライタイヤだけでなく、ウエットタイヤ、インターミディエイトタイヤ、風洞用タイヤなど、様々なタイヤを製造しなければいけないことも簡単ではないとイゾラは言う。

 V10、V8エンジン時代に成功を収めたブリヂストン。もちろん、その成功が2025年以降により良いタイヤを供給すること、より良いレースを提供することと必ずしもイコールで繋がるわけではない。2026年にマシンとパワーユニットが新時代に突入することに大きな関心が集まる中、2025年に新しいタイヤサプライヤーがやってくることでどれほど大きな変化が起こるのかは気になるところだ。

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みんなのコメント

2件
  • 中華や韓国の激安タイヤでやればいい
  • デグが少ないタイヤを約束
    Sは ウィンドウが広く 絶対的に速いが、直ぐにデグが出始め その劣化が早い
    Hは その 逆で、Mは二つの中間
    さらに テスト車両とドライバーの確保と、わずか一年で マシンのソリューションが換わる、BSには難儀で 圧倒的に、ピレリだ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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