FF(前輪駆動)転換期のファミリーカーを振り返る!
今見てもイイ
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1980年代の日本車がよかったなぁ、と、思うのは、あらゆるカテゴリーにわたって、“いいね”と、感心するクルマが登場した点だ。
もう40年ぐらい前のクルマなのに、いまも路上で見かけることがあり、古びているように感じられないのは、デザインを含めてコンセプトがしっかりしているからではないだろうか? と、私は思っている。
1980年代に登場したクルマの特徴のひとつが、駆動方式の劇的な変化だ。1970年代までは後輪駆動が主流だったものの、1980年代になると左右輪に均等にトルクを配分する等速ジョイントの技術的進化もあり、いっきに前輪駆動化が進んだ。
とくにファミリーカーの分野では、車内スペースの効率化がはかれる前輪駆動化は大きなメリットだった。同時にメーカーもとりわけ“ヤル気”が感じられて、室内空間の効率化であるパッケージングのみならず、従来と一線を画したようなクリーンなエクステリアデザイン、素材にも造型にもあたらしさをかんじさせるインテリアを作りだしていた。
そのあたりが、いま見ても“力”を感じさせる理由だろう。理想主義的に作られたものの美しさがしっかりある。ちょっとまとまりすぎていて、昭和の喫茶店とかに現代との“ズレ”を見いだし、それをいいなぁ、と、思う美的感覚には合わないかもしれないけれど、
でも、1980年代初頭の前輪駆動のファミリーセダン、今見てもイイものだ。
(1) トヨタ「カローラ」(5代目)トヨタのカローラが前輪駆動化されたのは、1983年の5代目だった。1979年に登場したその前の世代はボディバリエーションの豊富さも大きな特徴だった。フィアットなどを思わせる理知的なデザインのセダン、2ドアクーペ、さらにピラーレスに見える2ドアのリフトバックまで、デザインコンセプトは魅力的だった。
5代目はエレガントで優美で、かつ機能的。あたらしい時代が来たなぁ、と、強く思わせるデザインだ。併売された2ドアクーペ「レビン」と「トレノ」のみ後輪駆動。目的に合わせて駆動方式が設定されていたのも、トヨタのクルマづくりのコンセプトが一段とグローバル化した証と思えた。
カローラセダンは1452ccエンジンがメインで、のちにパワーアップした「1600GT」が追加された。シリーズ全体としては、落ち着いた印象の走りが特徴で、とくに感心したのは、前輪駆動化による広めの室内空間をはじめ、しなやかな足まわりの設定と、それに立体的な織りのファブリックで覆われたシート。
ボディデザインも、ユニークだった。セダンをメインとしながら、5ドアハッチバック、2ドアクーペなる多品種展開だった。とくに5ドアハッチバックとよばれたボディデザインは、欧州的なファストバック。アウディがとくに好んできたようなコンセプトだ。
セダンと5ドアハッチバックを見て、前輪駆動車を得意としたルノーが作っても不思議じゃないなぁ、と、当時の私は思った。そのころのルノーは、機能主義的なパッケージをもちながら、すこしずつユニークなディテールをデザインに採り入れた「R12」「R14」「R16」「R20」それに「R30」といったモデルを手がけていて、好感の持てるプロダクトを作っていたからだ。
1987年にフルモデルチェンジを受けた6代目は、エンジニアリングはしっかり進化していて、ハンドリングや乗り心地がよくなっていたものの、デザイン的にはまことにつまらない上級車志向を感じさせ、私はがっかりした。カローラは歴史をさかのぼればのぼるほど、現代の価値観には響くデザインなのだな。
(2) 日産「サニー」(5代目)今の若いひとは知らないかもしれないけれど、1980年代までは“ファミリーカー”という一種のカテゴリーがあって、大きな市場を形成していた。そこで支配的だったのは、トヨタ・カローラと、日産のサニーである。
サニーが前輪駆動化したのは、1981年。やはりラインナップの大幅な前輪駆動化をはかっていた日産では、ファミリーカーのセグメント向けに、1978年に「パルサー」、1980年に「ラングレー」と前輪駆動車を発表。さらに、1980年には「バイオレット」の3代目を前輪駆動化したのだった。
5代目サニーは、当時のベストセラー。全長を4050mmに抑えたボディに2400mmのホイールベースをもつシャシー。小まわりのきくサイズがセリングポイントだった。いっぽう、伸張していた“若者市場”への対応は早く、最初は2ドアクーペと、ワゴンの「カリフォルニア」そして後にハッチバックを追加したのだった。
個人的には、とくにカリフォルニアがおもしろかった。ステーションワゴンボディの側面にウッドパネルのデカールを張っただけで“カリフォルニア”というネーミングも能天気。たしかにアメリカ・ロサンジェルス界隈では、ウッド合板をボディに貼った“ウッディ”なる改造があって、そのイメージだったんだろうか。
カリフォルニアはコンパクトサイズのワゴンというコンセプトは、いまから見ても秀逸だ。いまの世代に北米サブカルチャーへの憧れがあるのかわからないけれど、たしかに私が知っているこのクルマの現役時代は、サーフィンをやっている友人たちが、サニー・カリフォルニアに好んで乗っていた。ただしリヤシートの出来は最悪で、南東京から九十九里まで走っていくと腰が痛くなったものだけれど。
当初は1.3リッターと1.5リッターのエンジンラインナップ。走りはおとなしかったが、のちに1.5リッターターボが出て、キャラクターがはっきりした感がある。
日産って、しかしながら、「スカイライン」とか「フェアレディZ」をもっていたせいか、このセグメントにスポーティモデルを投入するのはあまり熱心でなかったもよう。1988年の「シルビア」のヒットでわかるように、みんなスポーツモデルが好きだったんだけど。
(3) ホンダ「シビック」(3代目)1980年代のスマッシュヒットといえば、ホンダが1983年に発売した3代目シビック。初代シビックは、北米でもそれなりに評価されたという情報もあり、知的で好ましい印象だったが、2代目はあまりにキープコンセプトでがっかり。3代目は大胆な飛躍に驚かれた。
3代目シビックは、メインモデルを2ドアハッチバックにしぼったコンセプトもおもしろかった。よくこんなおもしろいデザインを採用したものだ、と、いたく感心させられた。リヤビューもガラス面積を大きくとったハッチゲートが個性的だ。
シビックは1972年に初代がデビューしていらい、前輪駆動方式を貫いていた。ただし、3代目が出たときでも、ホンダの製造ラインはロングホイールベースに対応しておらず、斬新なボディデザインだったもののホイールベースは2380mmにとどまっていた。現在のホンダNのホイールベースは2520mmだ。
イメージモデルは2ドアハッチバックだった。これはどちらかというと若者対象。ファミリー向けとしては、ほぼ同時に発表された4ドアノッチバックセダンと、3ドアのステーションワゴン版ともいうべきユニークなデザインコンセプトの「シャトル」が用意された。
シャトルでも、しかし、ホイールベースは2450mmしかなく、後席はキツかった記憶がある。それでも、全長4.0m弱のユニークなボディデザインはいまもじゅうぶん通用しそう。コンパクトだけれど荷物をたっぷり積めるというボディのシャトルを使い倒すなんて、いまもおもしろそう。
個人的な思い出だけれど、当時のホンダはジャーナリストが乗って記事を書く参考にする、いわゆる“広報車”のほとんどにエアコンを装着していなかった。なので、夏場に借りると、もう地獄のような暑さ。
しかも等速ジョイントの問題か、パワーのあるモデルだと発進時などで強めに加速すると、ハンドルを片方向にとられた。年を追い、モデルチェンジが繰り返されていくうち、ホンダ車はどんどん洗練されていった。自分たちとともに成長するようなイメージだなぁと、私は思ったものだ。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
大衆車、ファミリーカーというカテゴリーのに中で一番、成功を収めたのはFF化したファミリアなんだけど!?
シビックは元々FF車だし、なんと言っても、ファミリアはフォルクスワーゲンゴルフを模範とし、日本車らしからぬスタイル、ハンドリング、パッケージングを実現した車だよ? 80年代初頭「赤いファミリア」にサーフボードを積んだ「陸サーファー」というブームを巻き起こしたFFファミリアがランキングに入ってないのは納得出来ない!
サニーはファミリアから遅れる事1年、カローラは昭和58年にやっとこさFF化…おっとファミリアの「コピー版」カローラⅡとコルサ、ターセルもあったな゙…辛口評価の徳大寺某氏も、絶賛したのに
トルクステアにしても、不等長ハーフシャフトやステアリングジオメトリーの問題が主でしょう。
そもそもFFの操安性に一定の目途が付いたとたんに実用車がこぞって転向したのは部品点数減少によるコストダウンの意味が大きかったわけですが、それにすら言及できないところもいかにもですね。