ライバル「ソアラ」と人気を二分した
日本がバブル景気に湧く頃、1台のスペシャリティカーが人気となっていました。その名は日産「レパード」。スタイリッシュなデザインと、人気ドラマ「あぶない刑事」の劇中車での活躍が、ヒットに貢献しました。そんなF31型レパードを振り返ります。
「スーパーカー」「ハイソカー」「デートカー」時代を彩った懐かしい自動車ブームの変遷を振り返る
各社スペシャリティカーを登場させてブームに
今や絶滅してしまったジャンルがスペシャリティカーで、デートカーとも呼ばれた。セダンやハッチバック、SUVのように明確なジャンルではなくて、世相とリンクした通称的なものではあった。強いて言うなら、2ドアクーペで、流麗なスタイリングのクルマがデートカーと呼ばれたわけだ。また当時、ある自動車評論家が「なくても困らないクルマ」と言っていたが、的を射た表現ではある。
車種としては一番の代表格がトヨタ「ソアラ」で、そのほか、S13型日産「シルビア」もスポーツカーというよりむしろスペシャリティカーとして人気だった。ソアラについては初代だけでなく、あまりの人気のために2代目もほぼ同じ内容だったほどで、当然各メーカーがライバルを投入した。ホンダ「レジェンド」や「プレリュード」、マツダでは「ルーチェ」などが出たが、結局太刀打ちできなかった。
幾多のスペシャリティカーのなかでも、ソアラに真っ向から勝負したのが日産のレパードだ。初代レパードが登場したのは1980年のことで、初代ソアラが登場したのは翌年のこと。先んじていたとも言えるが、ソアラがブームを作ったこともあって、ただのそれ以前のクルマ程度の認識に終わってしまったのは残念なところだ。
打倒ソアラを目指して2代目へ進化した
そこで満を持して、ソアラの牙城を崩すべく投入したのが2代目レパードで、型式はF31となる。登場したのは1986年で、2代目ソアラも同じ年だ。ベースになったのは型式からもわかるように「スカイライン」で、開発責任者は櫻井眞一郎氏の愛弟子、伊藤修令氏が担当した。
さすがに初代ソアラという研究対象があったことから、2ドアクーペならではの伸びやかなデザインをまとい、高級感を漂わせていた。エンジンもV6のみで、後期型にはシーマでも人気だった、日産自慢の3LのDOHCセラミックターボ「VG30DET」も搭載していた。サスペンションは路面状況に合わせて超音波で減衰力を自動調整する「スーパーソニックサスペンション」を採用していたのも、技術の日産らしい点だった。
肝心のインテリアについては、今の視点からすると当時主流だった色気のない絶壁インパネではあるが、それでもセンター部分を出っ張らせてスイッチ類を配置するなどの努力はなされていたし、ソアラを意識したデジタルメーターも採用していた。シートについてはレザーは用意されていなかったものの、肉厚でふんわりしたモケットなどバリエーションは豊富で、高級感はあった。
残念ながら販売面では苦戦してしまう
ただし、販売は芳しくなかった。今振り返ってみるといくつか理由は考えられる。まずはソアラを買わずに、レパードを買う明確な魅力やメリットがなかったことがあるだろう。当時はみんなが買うから自分も買うという形でヒット作が生まれた時代だけに、技術の日産が満を持して作り上げたといってもピンとこなかった。
カラーリングも同様で、2トーンも含めた渋めの色味も多く用意されていて大人の雰囲気を演出していたとは思うが、当時のトヨタに設定されていた「スーパーホワイト」の人気は凄まじく、切り崩すことは到底無理ではあった。ちなみにレパードにもクリスタルホワイトという白色は用意されていた。価格はレパードの最上級グレードであるアルティマが383.7万円で、ソアラの3.0GTは485.1万円と、大きな開きはあったのだが……。
* * *
芳しくないとはいえ、その後、『あぶない刑事』シリーズで柴田恭兵が演じるユージこと大下勇次の愛車として大活躍したことから、徐々に人気となり街でも見かけるようにはなっていた。それでもナンパなイメージのソアラに対して、技術の日産を標榜した骨のある感じを支持する層が購入することが多く、広く受け入れられることはなかった。現在は仕上がったもので500万円から700万円ほどもするが、日産らしさが今になって魅力となっているようだ。
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「あぶ刑事再放送」で「中古車の評価が上がった」が現役時代はヒットとはいいがたくソアラの相手にもならなかったが正解