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フォルクスワーゲンのディーゼル不正に集団訴訟 最大の争点は「補償額」 英

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フォルクスワーゲンのディーゼル不正に集団訴訟 最大の争点は「補償額」 英

もくじ

ー 求めるのは処罰ではなく補償
ー VW「米の調査結果、英の法的拘束力なし」
ー 原告側、被害や損害を主張
ー 最大の損害は、残価価値の減少
ー 損害額はどのくらいになるか?

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求めるのは処罰ではなく補償

フォルクスワーゲンが、ディーゼル排ガス不正で問題となった車両のオーナーたちに総額で数百億円にのぼる補償を支払うべきかどうかを決めるため、来年春に高等法院で裁判が始まる予定だ。

フォルクスワーゲンと弁護団によると、英国では約9万5000人のオーナーが集団訴訟を起こしているという。これは同国で起きた集団訴訟で史上最大の人数だ。4年間にわたる最後の予審が12月に行われ、2020年に行う裁判の日付と詳細について双方から同意を得ることになっている。

フォルクスワーゲンと争うのは、ロンドンの法律事務所であるフレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガーと、スレーター&ゴードンが率いる11人の弁護士団体、そしてPPGローやレイ・デイといった法律事務所の代表だ。

オーナー代表者側の人数は、しかしながら変動しており、最近の数か月で減っている。重複または無関係な要求も排除された。AUTOCARの調べによると、ジープやジャガーのオーナーがこのリストから取り除かれたという。

裁判は、刑法ではなく民法に基づいて行われる。つまり争点は、違法であることに対する処罰を求めるのではなく、オーナーに対する補償になる。その法的議論は、「スリーホールドテスト」と呼ばれる3点の中心になるだろう。

スレーター&ゴードンは、8か月から9か月にわたると予想される裁判で、3つのオーナーが求める補償の引き上げをすべて勝ち取らなければならない。双方とも主張を助けるために技術的な専門家の集団を用意すると思われる。

VW「米の調査結果、英の法的拘束力なし」

1つめの法的視点は、フォルクスワーゲンが「注意義務」に違反したかどうかを決定することになる。それは同社が1.2ℓ、1.6ℓ、2.0ℓのEA189ディーゼル・エンジンを搭載するクルマに「無効化装置」を取り付けたかどうかによる。

「依然としてフォルクスワーゲンが訴えているのは、影響を受けた車両には禁止されている無効化装置は含まれていなかったということです。この点における外国の当局によるいかなる調査結果も、英国の法廷では法的拘束力がないと主張しています」と、フォルクスワーゲンはAUTOCARに声明で述べている。

「われわれの一貫している立場は、ロンドンの高等法院における法的手続きの教唆は無根であるということです」

これに対する抗弁は、スレーター&ゴードンが論じる。フォルクスワーゲンは、クルマがローリングテスト中であると検出するとエンジンの燃焼を一時的に改変し、NOx排出量を減らす無効化装置を装着していたことを米国で認めたが、この自認は英国ではなんの法的効力ももたらさない。

「VWは、この装置が2つのモード(テストと路上)で車両を制御することを既に認めています。しかし、なぜこの装置を取り付けたのかを説明することはできずにいます。いま、裁判官はかれらに説明を命じています」とスレーター&ゴードンはAUTOCARに声明で述べた。

原告側、被害や損害を主張

12月の予審でスレーター&ゴードンは、英国高等法院はフォルクスワーゲンのソフトウェアに無効化装置が含まれていたというKBA(ドイツの型式認証機関)の調査結果に拘束されると主張する。フォルクスワーゲンは、テストと路上でモードを「切り替える機能」が、「英国や欧州で使用する」ことは合法であると信じていると反論するつもりだ。

もし、スレーター&ゴードンがこの点を主張することに成功すれば、次はその「因果関係」を立証し、無効化装置とそれを搭載するクルマが受けた損害や被害の関連を証明しなければならない。

フォルクスワーゲンは断固として「NOxの問題によって、われわれの英国のお客様はいかなる被害や損害も受けていません。当該車両は安全で道路の使用に適しており、宣伝されている性能に偽りはありません」と主張している。

スレーター&ゴードンでは、これらのクルマが「不正に」売られたものであり、合法的に売ることはできなかったと主張。ディーゼル不正問題が明らかになったことで、フォルクスワーゲンはこれらのクルマをリコールして技術的な改修を施したが、オーナーは燃費やCO2排出量、ドライバビリティに関して損害を被ったとしている。

最大の損害は、残価価値の減少

大々的に報じられるような最終点は、数百億円にのぼる補償の額だろう。これはオーナーが受けた被害から算出される。スレーター&ゴードンは、オーナーがクルマの残存価値と、改修による損害を受けたことを証明しようとしている。

「われわれの依頼人は、改修によってクルマの燃費が悪化し、性能にも影響があったと言っています。例えば、クルマが危険な状況でテストモードに切り替わる恐れもあったのです」とスレーター&ゴードンは述べている。

最終的には、これらの「代表的な被害」を主張し、フォルクスワーゲンを詐欺で糾弾しようとしている。

フォルクスワーゲンは当然ながら、その反対となる証拠を挙げようとしている。クルマの残存価値やCO2、燃費、エンジンの性能に不利な影響はないとしている。「改修」によって顧客の「不満の大部分は満足してもらえた」ことを強調している。

もし、この被害が予想を下回り、訴訟費用を払えないと考えられれば、示談になる可能性もある。

今年後半から始まる裁判が長引けば、さらなる曲折が予想される。しかし、対象となるオーナーたちとフォルクスワーゲンは、少なくとも2020年内には決着が付くと見ている。

損害額はどのくらいになるか?

水面下でフォルクスワーゲンは、クルマの残存価値に与える影響を調査しているとみられている。原告が主張する最大の損害が、所有するクルマの残存価値の減少であることは明らかだ。

もちろん、スレーター&ゴードンには、集団訴訟に多くのオーナーたちを集めるだけの補償を引き出すことに勝算を持っている。残存価値の減少、契約違反、融資契約に関する不公正な取引規制を合わせると、損害に対する補償額は1台あたり2000ポンド(約27万円)と見積もられているのだ。もっとも、このうち少なくとも30%は訴訟費用となる。

しかし、それとは異なる試算もあるようだ。AUTOCARに伝えられた情報によると、1台あたり「数百ポンド」から、最大でも1000ポンド(約13万5000円)ほどだという。合計で9700万ポンド(約131億円)となり、スレーター&ゴードンの「数億ポンド」という試算とはかなりの開きがある。

これは重要なことだ。なぜなら、スレーター&ゴードンは訴訟ファンドのセリアム・キャピタルから資金支援を受けており、投資に見合う補償を期待しているからだ。

もし、損害が予想より小さいということになれば、オーナー側は示談に持ち込む方が得策だろう。なぜなら、9700万ポンドでは訴訟費用にしかならないからだ。

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