あのランエボが遂に、生産終了する。1992年にエボリューションIがデビューしてから23年。モデルチェンジも10代目まで育ち、今回のファイナルエディションで最終章となる。その試乗の機会が富士スピードウエイショートコースであり、試乗させてもらった。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
ファイナルエディションは2015年8月に発売される。ベースはエボXのGSR 5MTで、こちらにエクステリア、インテリア、そしてエンジンチューンを施したモデルというのがファイナルエディションだ。限定1000台ですでに完売が近いという状況だ。
詳細を見てみよう。気になるのはエンジンチューン。馬力・トルクがアップしているのだ。エボXの300ps/422Nm に対し、ファイナルエディションは313ps/6500rpm、429/3500rpmと約4%の性能向上をしている。
ポイントはナトリウム封入式排気バルブによって、燃焼によりバルブに伝わった熱をシリンダーヘッドに逃がし、温度上昇を抑え出力向上につなげている。排気バルブには耐熱許容温度があり、出力が決まっていたが、これによってさらに出力アップできたわけだ。効果は中高速域での性能アップだ。
エクステリアではオプションだがブラックルーフのツートーン、専用フロントバンパーカラー&フードエアアウトレット、専用アルミホイールカラー(BBS)、リヤバッジを装備。インテリアでは、ピラー&天井をブラック化、シート、ステアリング、シフトブーツなどにレッドステッチを採用、専用オープニング画面、シリアルナンバープレートがシフトレバーの近くに貼られている。オープニンング画面は「Final Edition」の文字がエンジン始動のたびに表示される。
価格は税別398万円で、GSR 5MTよりプラス40万円高い。内容としては、メーカーオプションとなっているハイパフォーマンスパッケージのビルシュタイン製ダンパーやアイバッハ製コイルスプリング、ブレンボ製ブレーキユニット、BBSホイール、レカロシートなどが標準装備され、さらにエンジン出力が向上されているので、随分とお得なモデルでもある。
ボディは全長4495mm×全幅1810mm×全高1480mm、ホイールベース2650mmで搭載エンジンは2.0L直列4気筒の4B11型MIVECターボ+5MTというスペックだ。ちなにみにタイヤサイズは245/40-18。
◆先端技術のパイオニア
ランエボと言えば、いまではよく耳にするトルクベクタリングの先駆車でもある。92年にラリーフィールドでの活躍を目指しデビューしたエボリューションIはエボIIIまでを第1世代としている。第2世代はエボIVからVIまでで、この世代がWRCでの大活躍などでブランドイメージを確立し、そして最初のトルクベクタリング技術であるAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を搭載した。
エボIVに搭載されたAYCはリヤの左右へのトルクをコントロールすることで、ヨーをコントロールし旋回性を高めるという、いまでは手法は異なるが、輸入車のプレミアムモデルをはじめ一般的になりつつある技術だ。これを19年前の1996年に市販車投入しているのだ。
そして第3世代となるエボVIIからIXでは、ドライバーとクルマの一体感、走りの質感をレベルアップし、海外でも展開をはじめワールドワイドのブランドへと成長した世代だ。そして前後のトルク配分をコントロールするACD(アクティブセンターデファレンシャル)をエボVIIに搭載した。これが2001年の14年前である。
第4世代が現在のエボXで2007年に発売。駆動技術はさらに進歩したS-AWCスーパーオールホイールコントロール搭載へと進化した。AYC+ACD+ABS+ASCを統合制御し旋回性能の向上と合わせて、車両の安定性も高め誰もが気持よく安心して高い次元の走りを楽しめる、新世代ハイパフォーマンス4WDセダンへと成熟したわけだ。このときDCTも搭載している。
ファイナルエディションは、これらの技術も受け継ぎ、長く乗って、持つ喜びを感じてもらいたいということを主眼に置いて開発され、発売されることになった。
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