ステアリングレスポンスはクイックだが破綻しない
アルファロメオが史上初となるSUVを登場させた。厳密にいうと戦前だか戦後だかに軍用ジープを生産していたことがあるそうだが、それはSUVとは言わないし意識する必要もないことだろう。
【試乗】ジャジャ馬ぶりも味! 復活のアルファロメオ・ジュリアが魅せた操る歓び
ステルヴィオの名はイタリア北部のアルプス山中にある「ステルヴィオ峠」に由来しているという。計48カ所ものヘアピンカーブがある同峠は、イタリアのモータリストにとって聖地として知られているそうだ。
今回ステルヴィオに採用されたカーブ形状のドライビングランプはこのステルヴィオ峠のヘアピンカーブからインスパイアされたものだそうで、SUVでありながらアルファらしいスポーティなハンドリングを相当意識している。
試乗会は軽井沢の一般道で行われた。公道ゆえ高速域の善し悪しは試しようがないが、幾つかのコーナーで走りの素質を見出だすことはできる。
実車を見るのはこれが初めてだった。アルファロメオの象徴的なラジエターグリルが特徴的。昨年スポーティセダンのジュリアが国内にも登場しているが、ステルヴィオはそのジュリアから派生したモデルであり「ジョルジョウ・プロジェクト」としてジュリアと多くの技術を共有している。ラジエターグリルだけでなく外観デザイン的にはジュリアのSUVバージョンとして認知できるような伊アルファロメオ車独特のセンスに溢れていてカッコいい。空力特性Cd値=0.30とSUVとしては極めて優れた値を示す丸みを帯びた車体は一見コンパクトに見えるが、ディメンションは全長4690mm、全幅1905mm、全高1680mmあり外寸的にはボルボXC60とほぼ同じ。マツダCX-5より少し大きく、レクサスNXとも似通った寸法なのだ。
そのため室内に乗り込むと外観から受ける印象よりはスペースにゆとりが感じられる。すっきりしたインパネデザインはアルファロメオ車らしいヨーロピアンテイストに溢れている。スイッチ類を出来る限り簡素にレイアウトし、操作性も向上させていて好感が持てるのだ。
シートも作り込みがよく、固さ、サポート性も申し分ない。後席の足もとは見た目狭く感じるが、実際に乗り込んでみると競合車と遜色なく、出来のいいシートはシートバックの角度が緩くリラックスできる。ヘッドクリアランスも空力特性を向上させるためルーフエンドを伸ばした効果もあってゆとりがある。ボリューミーなリヤまわりに対して、フロントオーバーハングはクラス最小の859mmに抑えられ、運動性と取り回し性を高めている。
セダンのジュリアに比べヒップポイントは190mm高められ、グランドクリアランス200mmを確保してSUVとしての走破性も確保しながら、前後のロールセンターを結ぶ軸の角度をジュリアと同角としてハンドリング面で共通化を図っている。
ステアリングスポークに配されたスタート/ストップボタンをプッシュしてエンジンスタート。エンジンマウント容量が大きく遮音性も高いので室内は静かなまま。走りだすとステアリングがクイックに制御されていることに驚かされる。
電動パワーステアリングはドライブモードにより応答性を変化させるが、どのモードでもかなりクイックな反応を示す。ジュリアも同じように感じたが、異なるのはステアリングがクイックに反応しても後輪がしっかり路面を捉え安定性を高く維持していることだった。
そのためライントレース性が良く、狙ったラインをセンチ単位で正確にトレースできるBMWのような好特性を示しているのだ。ショートオーバーハングとも走行しアジリティは圧倒的に優れスポーツカーのよう。
エンジンフードを開けてみるとその秘密が読み取れた。直4ターボエンジンは縦置きで、フロントアクスルより後方にマウントされ、いわゆるフロントミドシップ状態にある。両サイドのストラットタワーはアルミダイキャスト成型されストラットタワー補強ブレースも配置される。フロア下にもアルミ製パーツが多用されておりドイツ車のアッパースポーツグレードのような構造が与えられているのだ。4輪駆動のパワートレインは電子制御のセンターデフが通常後輪に100%の駆動配分をカーボン製プロペラシャフトを介して行い、後輪スリップ下では最大60%の駆動力を前輪に配分できる。トランスミッションはZF社製8速フルATでマニュアル操作も可能だ。
今回のステルヴィオは「Firstエディション」として400台限定販売というアナウンスだったが、来年以降ディーゼルモデルの導入や、独・ニュルブルクリンクで7分51秒7というSUV最速ラップ(2017年9月時点)を記録した500馬力オーバーの最速仕様・クアドリフォリオも控えているという。その登場も待ち遠しい限りだ!
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