1ラップのペース改善に取り組むハミルトン。自身のスタイルとグラウンドエフェクトカーの特性が合わず適応に時間を要す

　メルセデスF1のルイス・ハミルトンは、今シーズンの1ラップのペースが十分ではないことを認め、今年のマシンに適応しようとしたもののうまくいかなかったことを明かした。

　7度の世界チャンピオンであるハミルトンは、記録的な104回のポールポジションを獲得し、素晴らしい伝説を築いてきた。しかし今シーズン、予選で速さを見せたにもかかわらず、ハミルトンの努力は期待を下回ることが多く、しばしば起こる予選での苦戦がテーマとなってきた。

　メルセデスによると、ハミルトンの苦戦の根底にあるのは、彼の攻撃的なドライビングスタイルであり、それが現在のグラウンドエフェクトカーの特性や、ピーキーなピレリタイヤとうまく合致していないのだという。今年のマシンが持つ微妙な差異により、いっそう繊細な操作が求められていることから、ハミルトンの自然なドライビングスタイルではそれに適応するのが困難だった。

　しかし、彼はドライビングスタイルを適応させようとしながらも、実証してきたやり方からあまり逸脱しないように注意を払ってきた。

「僕は頑固なんだ。だから、自分がやりたいようにドライブし続けようとしている」とハミルトンは最近『Motorsport Week』に語った。

「でも、それがいつもうまくいくわけではないことに気づいているので、なんとか合わせようとしている。だが、あまりうまくいっていない」

「それでも結局のところ、ドライバーとして適応力は必要なものだ。特定のことに対する自分のアプローチが完璧ではないこともあると認め、自分をここまで優れたものにしてきた本質を保ちながら、ボールを戻す方法を考える必要があると思う」

　こうした苦闘を衰退の兆候と見る人もいるかもしれないが、ハミルトン自身はそのような考えを否定している。

「結局のところ、ドライバーとしては何もドライブできない。つまり、できないんだ。だから特定の状況では、一部のドライバーは他のドライバーよりもうまく対応する。ある人は短時間で適応できるし、ある人はより長い時間を必要とする。でも、それが酷い状況だとは思わない」

　予選でのパフォーマンスはいつもの水準に達しなかったかもしれないが、ハミルトンのレースペースは依然として素晴らしく、メルセデスの最近の進歩の勢いに乗って今シーズン2勝を獲得している。チームメイトのジョージ・ラッセルが予選で明らかに優位に立っていたにもかかわらず、ハミルトンは立ち直る力と優れたレース技術により、ドライバーズ選手権でラッセルを引き続き上回っている。

　2025年にハミルトンのボスになる予定のフェラーリのフレデリック・バスール代表は、予選での苦戦はあるものの、今シーズンのハミルトンの功績の重要性を強調した。

「最初からラッセルの方がハミルトンより速いと誰もが言っていたが、現時点ではメルセデスにより多くのポイントをもたらしているのは彼だ」

「能力の点では、彼はよいベンチマークになると思う。ルイスがフェラーリに加入することのポジティブな面はわかっている。たとえば、F1における彼の素晴らしい経験などだ」